ア: | ドメインは、市場、顧客機能、技術の3要素で規定できる。このうち技術とは、製品やサービスが満たすべき顧客のニーズを意味する。 |
---|---|
イ: | ドメインは、市場、顧客機能、技術の3要素で規定できる。いわゆる差別化戦略とは、この3つの要素の技術において差別化を図りながら広範囲の市場にかかわる戦略である。 |
ウ: | ドメインの規定は、自社の競争優位性の確保にかかわるものであるので、その規定領域を内部の関係者以外に知られることは避けなければならない。 |
エ: | ドメインの規定は、自社の将来の存亡にかかわるものであるので、将来的にも再設計の必要がないように規定されなければならない。 |
経営戦略のアプローチには、長期的デザインから演繹的に短期的行動を導き出す[A]分析的アプローチと、現時点での行動のなかから創発的に戦略が生まれるとする[B]プロセス的アプローチがある。また、プロセス的アプローチのなかでも、戦略を創発する能力ベースに焦点をあてた考え方を資源論的アプローチとよぶ。資源論的アプローチの代表的なものに、知識創造論がある。[C]知識創造論では、組織内での知識の創造過程を4つの段階で示している。
ア: | PPM |
---|---|
イ: | 成長ベクトル論 |
ウ: | 競争地位別戦略論 |
エ: | 情報的経営資源論 |
ア: | 戦略の策定と実行は二分されず相互依存的なプロセスであり、試行錯誤や戦略的な学習を通じて行われていくものである。 |
---|---|
イ: | 戦略の創発性を高めるためには、トップ・マネジメントの定型的業務へのかかわりを軽減する必要がある。 |
ウ: | 今日の経営環境は曖昧性に満ちているが、このアプローチにおいて、組織は自ら環境を創造していくため、その曖昧性を克服できる。 |
エ: | このアプローチは、偶発性自体を内包しているため、戦略行動の障害となる偶発性にも対処できる。 |
ア: | 共同化とは、個人の暗黙知が組織の暗黙知に変換される段階のことである。 |
---|---|
イ: | 連結化とは、組織の形式知が個人の形式知に変換される段階のことである。 |
ウ: | 組織内での知識の創造過程は、共同化→表出化→連結化→内面化の4 段階を経る。 |
エ: | 知識創造論では、組織知を形式知と暗黙知に区分し、後者の重要性を強調した。 |
経営戦略の考え方には、環境の合理的な分析が可能であるという前提に立った分析的アプローチと、その限界を克服すべく現れたプロセス的アプローチがある。前者は、環境を精緻に分析したうえで長期的デザインとしての戦略が立案され、これをもとに現場での行動プログラム(戦術計画)が策定されるとするものである。それに対して後者は、戦略は組織が環境と相互作用するプロセスのなかから創発的に生み出されるとするものである。
ミンツバーグによれば、プロセス的アプローチの概要は、次の通りである。
分析的アプローチの具体的な例としては、SWOT分析や成長ベクトル論、PPM、ビジネススクリーン、競争地位別戦略論などがあげられる。これに対して、プロセス的アプローチの具体例としては、コア・コンピタンス論、ナレッジ・マネジメント論(知識創造論)、情報的経営資源論などがあげられる。よって、ア・イ・ウは分析的アプローチであり、エはプロセス的アプローチであるから、正解はエとなる。
解説より、ア・ウ・エはすべて適切であることがわかる。イに関して、戦略の創発はトップ・マネジメントに限られた行為ではなく、むしろ現場レベルで行われることが多い。したがって、トップ・マネジメントの定型業務へのかかわりは、必ずしも戦略の創発性にかかわらず、これが不適切と判断できる。したがって、イが正解となる。
ハンガリーの科学哲学者・社会科学者であるマイケル・ポランニーは、著書『暗黙知の次元』で、「人間は自分が語ることのできる以上のことを知っている」と述べ、人間の知識の90%は暗黙知(言語化できない知識)であると論じた。これを受けて、野中郁次郎は、組織の暗黙知に着目し、ナレッジ・マネジメント論を説いた。彼は、組織内での知識の創造過程をSECIモデルと名づけ、共同化(個人の暗黙知が組織の暗黙知に変換される段階)→表出化(組織の暗黙知が組織の形式知に変換される段階)→連結化(組織の形式知が個人の形式知に変換される段階)→内面化(個人の形式知が個人の暗黙知に変換される段階)の4段階のプロセスとして説明した。
以上より、ア・イ・ウは適切と判断できる。エに関して、野中は、暗黙知の存在と重要性に着目したものの、それが形式知より重要であるとは述べていない。ナレッジ・マネジメントにおいて、両方の知識の創造こそが組織の競争優位性の確立に必要なのである。したがって、エが不適切であり、正解となる。
B酒販店は、O県P市のN街道沿いに立地する、売場面積22坪の有限会社である。創業は昭和3年で、今年に入り2代めの経営者が病気を患い、娘婿が新たに経営を任されることになった。
年間売上高は約1億円で、経営者夫婦と男性従業員1名、女性パートタイマー2名で業務を行っている。
P市のN街道沿いは江戸時代に宿場町として栄えたが、JR線のP駅が昭和30年代に開設されたあとは、市の商業の中心は駅前に移動していった。N街道沿いには当時の趣を残す建物も散在しており、周辺は十分な市場規模がある。10年前に市が中心となり街づくり協議会を発足させ、歴史民族資料館の設置なども行い、江戸時代の面影を残すような街づくりが行われた。毎年実施される宿場祭りのイベントには、周辺の市からも多くの集客がある。このような取り組みにより、現在では、N街道にも人通りが戻ってきている。
酒類小売業の業界は、昭和60年代に酒DSが急増するまでは、メーカー支配による標準価格販売により価格競争もなく、また免許制度による規制により新規参入も少なかった。しかし近年は、量販店などの参入により競争環境は激化し、また後継者難などにより酒販店の廃業も増加している。その一方で、小売店どうしで連携し海外ワインの並行輸入を行ったり、1店舗でも自ら蔵元に出向き交渉をして珍しい地酒や焼酎を取り揃えたりして、頑張っている酒販店も存在している。市場の酒類全体の販売額は減少しているが、市場にあまり出まわっていない銘柄や、希少性のある地酒や焼酎、ワインの人気は高まっている。これらの商品を求める消費者は、歴史や文化などを商品と同時に求める傾向がある。
B酒販店の近隣には長い間、現在CVSに業態転換を行っている酒販店C店が、1店舗あったのみであった。長年、競争に脅かされることもなく、B酒販店の経営は堅調に推移してきていた。
しかし、7~8年前から環境は大きく変化している。もともと卸売業であったD店が複数の小売業の免許を取得し、ビールを中心に低価格で業務向け販売を強化している。また、スーパーマーケットE店でも市場で1番の売れ筋商品であるビールや発泡酒をかなりの低価格で販売し、ワインも豊富に取り揃えている。車で15分の場所には酒DSも存在している。そして、今年9月からの規制緩和により、車で10分のホームセンターでも近々にビールや発泡酒を取り扱う予定である。
こうした環境変化にともない、B店ではここ数年、売上高、営業利益とも減少してきており、できる限り販売管理費の削減を行い今日に至っている。今期も、現在の状況では売上高は減少し、営業利益は赤字になる見込みである。B店の販売構成は、(1)店売り25%、(2)家庭への宅配27%、(3)業務向け販売32%、(4)その他16%である。近年は、取引先飲食店の廃業などの影響もあり、ビールが中心の業務向け販売の落ち込みが激しい。また、業務向け販売は価格競争が厳しく、サービスなどでムリな要請も多い分野である。顧客の世代交代などにより家庭への宅配も減少しているものの、高齢者世帯には固定客が多い。以前は、家庭への宅配は件数も相当数あったため、曜日を決めてルート配送を行っていたが、現在は、顧客の必要なときに必要な商品を連絡により配達している。このサービスは、他店では実施しておらず利便性が高いため、固定客の間で評判が良いが、依頼された商品を配達するのみで、売上増加に結びつく工夫はなされていない。
B店の商品分野別の売上割合と粗利益率は、表1のようになっている。品揃えは、どこの酒販店でも取り扱っているようなナショナル・ブランドが中心である。ビール・発泡酒は、売れ筋の銘柄はひととおり揃えているが、ウイスキーの品目が1番多く、日本酒、焼酎、ワインの品揃えは少ない。食品の売上割合が比較的高いのは、他店では取り扱っていない5種類の量り売りの味噌や醤油など、こだわりの食品の売れ行きが良いためである。しかし、B店では過去に1度だけワインの試飲会を実施したことがあるだけで、プロモーションはまったく行っていないため、これらの商品は一部の顧客のみにしか知られていない。また、店内でも情報提供は少なく、味噌は奥の冷蔵庫のなかにしまわれている。
また、B店では日本酒の包装や熨斗(のし)のサービス、好みの酒や加工食品を詰め合わせできる贈答用商品も好評であるが、これらのサービスも店内で案内はされておらず、一部の顧客以外には知られていない。
B店の店頭には、自動販売機が3台置かれガラスウインドの半分を覆っており、入口から1番めだつ壁面棚全面には、ウイスキーが多くの面積を占めて陳列されている。店内には2本の両面ゴンドラが置かれているが、背が高く、店奥までの様子がわかりにくい。日本酒は店奥に陳列されており、焼酎とワインはゴンドラに陳列されているが、入口からはどこにあるのかわからない状況である。
B店の経営者は、早急に経営を立て直さなくてならないと自覚しているが、何をどのように行えばよいか検討がつかず、中小企業診断士にアドバイスを求めた。
以上から、正解はイとなる。