ちょっと一息

自分らしく働く vol.2

「自分らしく」を知るヒント

[2016/02/26]

自分らしく働く2-1

 私たちは、何かを得るために働いています。
 人は果たして何を得たいのか? 一般的には、「経済的な側面」「社会とのつながり」「自己実現」の3つに分類されています。もっと突き詰めて言えば、「社会とどのようにつながっていきたいのか」あるいは「社会でどのように存在していきたいのか」が重要な視点だと考えられます。
 でも、働く目的は人によって異なります。興味・関心が違えば、能力も違う、抱えている状況も違えば、周囲からの責任や家族との関係も違うからです。
 ところが私たちには、何となく職業を選び、何となく仕事を続け、惰性的に働いたり不平不満を言ったりする状況に陥りがちの一面もあります。

 「そもそも働くこととはどういうことなのだろうか?」
 「自分らしく働くことは可能なのだろうか?」
 そんな疑問にお答えいただいた本シリーズ。前回に引き続き、日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座」でインストラクターを務める原恵子先生にうかがいました。今回のテーマは「自分らしく」です。ぜひご一読ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
Career Seed代表
筑波大学人間系研究員
日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座」講師
原 恵子 さん
専門領域は、キャリア心理学。ベネッセコーポレーションとグループ内派遣会社にて、人材サービス事業や拠点マネジメントを経験し現職。現在は、「人と組織とのかかわり」や「自分らしいキャリア探索」、および「キャリア支援者の職業的発達」をテーマに、実践活動と研究を進めている。多様な対象者に対するキャリア研修や、キャリア支援者の教育や支援の実績がある。筑波大学 博士(カウンセリング科学)。


自分なりのこだわり

 自分にとって、働くこととは何だろうか? 何を得るために働くのだろうか?
 このをさらに突き詰めて、自分のものとして納得感を深めようとする時、自分らしく」というキーワードが出てくるのかもしれません。「自分らしく」とは、絶対的な解ではなく、個別性があるという特徴があります。ですから、どの部分に自分なりのこだわりがあるかを見ていくことが重要になります。
 自分なりのこだわりは、何を重視するかというみづと、その幅・範囲はどこまでかを考えるとわかりやすいでしょう。たとえば、処遇、職場環境、仲間、立場、地位を例に挙げるなら、これらをどのような順序で重視するか考えてみます。そして、その幅・範囲まで整理してみます。
 もし、処遇を最も重視するとするならば、給与の幅・範囲は、たとえば「20万円以上」なのか、あるいは「15万円」でも我慢できるのか。そうしたことを整理していくことが大切です。


自分らしく働く2-2

なぜ自分は○○なのだろう?

 私の場合は、13年前に会社を退職して独立しました。前職は人材派遣会社、現在はキャリア支援に関する実践と研究ですから、退職前も退職後も教育に関わる領域に携わっています。その点ではともに自分にフィットしています。
 しかし、前職で転勤を経験し、地方都市の拠点責任を負うマネジメントをしていた際、虚し味気なも感じたのです。マネジメントですから、管理的な業務もしなければなりません。人的な仕事に加え、総務や経理など幅広い実務の勉強も欠かせませんでした。学ぶというプロセスだったのですが、幅広いとは広く浅くとも言え、このような学びはつまらないむなしいと感じました。
 そうした時、会社からCDA(キャリアカウンセラー)の資格を取るよう指示されました。その学習過程には自分を棚卸しする内容もあり、なぜ自分は今の仕事でつまらなさを感じるのだろうか」とか前の自分の方が活き活きとしていたのはなぜだろうか」とかなぜ拠点責任者前の仕事や仲間に惹かれてしまうのだろうか」などと考えました。
 そうすることで、派遣スタッフの方々と深く関わるコーディネーターの仕事は楽しかった、夜遅くまで共に働いた仲間との関係やその後の飲み会は楽しかった、売上拡大や営業といった業務には興味が持てない、何か専門領域を持ちたい、人に深くかかわりたい、自由さを感じていたい、学校の雰囲気が好きで学ぶことがエネルギー源など、自分のこだわりがわかってきたのです。それらがわかった時はすっきりしました。
 そうして独立し、自分なりに専門性を深めるためにさまざまな資格を取りました。独立の1年後からは「キャリアカウンセラー養成講座」のインストラクターも担当させていただいていますが、その後もさらに専門性を高めようと社会人大学院に進み、博士課程でも学び、現在の働き方につながっています。


自分らしく働く2-3

語ればこだわりが見えてくる

 では、みなさんにとって自分なりのこだわりはどこにあるのでしょうか? あるいは、どんなことを重視しているのでしょうか?
 自分のこだわりは日常であまり意識しませんので、こうした質問にすぐ答えられる人は少ないと思います。そこで参考になるのが「ナラティブ」という考え方です。自分のこだわりどころを見極めるためのヒントとして活用できます。
 ナラティブとは1980年代後半頃からさまざまな分野で注目されてきた考え方で、語り」あるいは物語」を意味します。語ること、語られた内容、語られた物語を総じてナラティブと言います。

 まず、自分がこれまでに心を動かされた出来事について、ふりかえり、自分の言葉で語ってみる。そして、その出来事の中どのように心が動いていったのを思い出してみる。たとえば、営業の仕事は全般的に好きじゃなかったけれど、この企画だけは好きだったとか、あの人と組んでいる時は楽しかったとか。気持ちが高まったり、夢中になったり、逆に嫌だったり、辛かったりしたことを語ってみる。
 あるいは、自分が好きなテレビ番組、雑誌、主人公などの対象物でも構いません。自分は制約がない時にどのように時間を使っているか、ついしてしまうことは何か、何が好きで何が嫌いか、どんな内容が好きか、どんな人に感情移入するか、それはなぜなどを考えてみる。
 そうしてていねいに自分の語りをふりかえると、自分のこだわが見えやすくなります。それが現実の日常生活と結びつけば、働くことで自分が得たいものの整理がつくように思います。そうすれば、自分の選択や結果に対する納得感や満足感が高まっていくのではないでしょうか。

 「自分らしく働く」の自分なりのは、こうした一連の思考の過程に見つけられるように思います。

>>原恵子先生の前回の記事はコチラ
https://biz.nipponmanpower.co.jp/ps/choose/column/details.php?col_id=2UH4V7SH

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