ちょっと一息

自分らしく働く vol.1

「働く」ってなんだろう?

[2016/01/28]

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 世の中には数多くの職業があります。厚生労働省編職業分類では、1999年版細分類で2,167種類、大きく改訂された2011年度版新分類でも892種類あります。
 そうした多種の職業がある中で、私たちは求職活動をしたり、働いたりしているわけです。すべての職業を経験した人はおそらくいないでしょうから、どの職業が自分に最適かを判断することは難しいことです。
 でもその一方で、もしみなさんがこれから求職活動をするのであれば、あるいは、今働いている職場であっても、「自分らしく働きたい」と思うのではないでしょうか。働くことに対してマイナスイメージを抱いたことのある人は、なおさらその思いが強いかもしれません。

 もっとも、人は何のために働くのでしょうか? そもそも、働くとはどういうことなのでしょうか? 働くにあたって「自分らしく」を実現することは可能なのでしょうか?
 本記事では、そうしたことについて専門家にインタビューしました。お話をうかがったのは、日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座」でもインストラクターを務めている原恵子先生です。ぜひご一読ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
Career Seed代表
筑波大学人間系研究員
日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座」講師
原 恵子 さん
専門領域は、キャリア心理学。ベネッセコーポレーションとグループ内派遣会社にて、人材サービス事業や拠点マネジメントを経験し現職。現在は、「人と組織とのかかわり」や「自分らしいキャリア探索」、および「キャリア支援者の職業的発達」をテーマに、実践活動と研究を進めている。多様な対象者に対するキャリア研修や、キャリア支援者の教育や支援の実績がある。筑波大学 博士(カウンセリング科学)。

※肩書きは取材当時のものです。

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働くことで得られるものは3つ

 「働く」とは、必ずしも対価を得るための行動だけを指す言葉ではありません。広義には、家事や奉仕活動など対価を得ない行動も「働く」の範疇に入ります。ただ、ここでは社会の中で対価を得るための行動に焦点を当てさせていただきます。
 また、自分らしく働く」というテーマは非常に大きなテーマですので、「働く」という面と「自分らしく」という面の2側面から考えてみたいと思います。

 まず、「働く」ということはどういうことなのでしょうか?
 内閣府の世論調査では、「働く目的は何か」との問いに対して、お金を得るために働く」「社会の一員として、務めを果たすために働く」「自分の才能や能力を発揮するために働く」「生きがいをみつけるために働く」という4つの選択肢が用意され、それら4つのいずれかを選んだ人は95.8%(2014年6月調査)に達します。
 また、働くことで得られるものは、一般的に「経済的な側面」「社会とのつながり」「自己実現」の3つに分類されると言われています。世論調査の「お金を得るために働く」を経済的な側面」と表現し、「社会の一員として、務めを果たすために働く」を社会とのつながり」と表現、「自分の才能や能力を発揮するために働く」と「生きがいをみつけるために働く」とをまとめて自己実現」と表現すれば、この3分類は現実に即したものだと考えられるでしょう。
 つまり、社会の中で対価を得るための行動という意味での「働く」ということは、経済的な側面」「社会とのつながり」「自己実現」のいずれかまたは複数を得るための行動であると言えます。


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自分は社会とどうつながっていきたいか

 働くことで得られるもののうち何を重視するは、人によって異なります。もちろん経済的側面は、ほとんどの人に欠かせないものでしょう。
 ただ、「働くこととは何だろうか?」と考えた場合、突き詰めると自分が社会とどのようにつながっていきたいのか」あるいは自分が社会でどのように存在していきたいのか」という部分が重要だと考えられます。なぜなら、対価を得ることは社会とのかかわりによるからです。
 そのため、「自分が社会とどのようにつながっていきたいのか」「自分が社会でどのように存在していきたいのか」を探るためには、自分のこ社会のこ両方を知ろうとすることが大切だと考えられます。
 ここで「自分のこと」とは、自分が抱えている環境も含みます。自分自身の興味・関心や自分ができることだけでなく、たとえば自分が抱えている状況、自分が担っている責任、家族との関係なども「自分のこと」として捉えられます。
 一方、社会のこと」とは、自分のいる社会を指します。社会がどのような状況なのか、社会でどのような変化が起こっているか、どのような仕事働き方が求められているか、どのような人材が求められているか等々。社会とのつながりや社会での存在について何かを求めるなら、自分発信の希望や欲求だけでなく、社会についてこうしたことを知る必要があります。社会のことをないがしろにして自分のことだけを知ったり、自己実現にばかり意識が偏っていると、社会とのつながりにおいて望ましい解が得られにくいでしょう。

 また、その時点のことだけではなく、これまで・現在・今後の時間軸を持つことも大切です。
 極端な「もしも」の質問を、自分に問いかけてみるとわかりやすいかもしれません。たとえば、もしも、このまま何も変わらず(変えず)にここにいたら、5年後に自分はどうなっているだろうか? それを自分はどのように感じるだろうか?」などと、自問してみてはどうでしょう。


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自分と社会の両方を細やかに知る

 自分のことと社会のことを知ろうとする際は、大まかにではなく細やかに捉えることが大切です。「細やかに」というのは細分化して」あるいは具体的に」と言い換えることができるかもしれません。
 たとえば、自分のことを知ろうとして、「人が好きだから人材サービス業で働きたい」「本が好きだから出版社に勤めたい」というのは、大まかで短絡的だと言わざるを得ません。人や本などの対象物をもっと細かくできるはずです。また、どのようにかかわりたいか」「どのように働きたいか」というプロセスも重要です。WHAT(何を)とHOW(どのように)の両面から整理して知ろうとすることが大切です。
 もっとも、在職中の人であれば、職務や担当を自分で選べる人は少ないと思います。ある日突然、異動・配置転換を命じられることもあるでしょう。でも、たとえばどのように働きたいか」「どの部分を大切にしたいか」ということが自分で整理されていれば、納得感満足感につながっていくのではないでしょうか。
 一方、社会のことを知ろうとするなら、まずはニーズに注目するといいかもしれません。マクロ的には業界の動き会社の方針、ミクロ的には部署の動向チーム内の課題自分が求められていることなど。たとえば、上司から「売上を上げろ」と言われた場合、その言葉に含まれた意味を細分化して考えると、場合によっては「ここは苦手なので、得意な部分をかんばろう」とか「顧客対応をていねいにしよう」などの方向性が出てくるかもしれません。

 こうして細やかに考えていく過程において、社会で求められているものと自分というものがどのようにつながるか、自分なりの解が見えてくるのだろうと思います。処遇を重視する人もいれば、職場環境を重視する人もいるでしょう。仲間または立場または地位などを重視する人もいるでしょう。解は人によって異なります
 その解をさらに突き詰めていくと、自分らしく」が見えてくるのではないでしょうか。

★本記事・原恵子先生へのインタビューの続きは、来月の当コーナーでご紹介いたします。

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