ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 vol.86

セカンドライフに向けて「自分のキャリア」を考える

[2015/11/27]

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 就労環境が大きく変わってきた今、40代半ば以上の中高年層は厳しい状況に置かれていると言われます。
 変化に適応することを求められる反面、そうした教育を受けてこなかったため、スムーズに適応しにくいからです。しかも、年功序列・終身雇用が崩れ、安定した待遇は保障されなくなりました。組織のフラット化などが影響し、役職に就けない、あるいは役職を降ろされる人も少なくありません。
 他方、すでに定年退職してセカンドライフを迎えた人たちはどうでしょうか? 日本マンパワーの「キャリアカウンセラー養成講座」でインストラクターを務める上篤先生は、「やることがなくて悩んでいる人がたくさんいる」と言います。
 こうした状況を鑑みて、上先生が働く中高年層の人に向けて、ある提案をお話ししてくれました。テーマは「自分のキャリアをどう考えればいいか?」。非常に現実的で参考になるお話かと思います。ぜひご参照ください。

●今回お話を聞いたのは・・・
 上級産業カウンセラー
 キャリアカウンセラー(CDA)
 株式会社ウエ・コンサルタンツ 代表取締役
 日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座」講師
 上 篤(うえ・あつし) さん

慶應義塾大学法学部卒、筑波大学院修士課程カウンセリング専攻修了。セイコーインスツル人事部長、SII教育センター社長、大手前大学キャリアデザイン学科教授を経て現職。「カウンセリングによる個人の自立と組織の共生」を目指し、キャリア開発・キャリア教育・メンタルヘルスケア・キャリアカウンセリング・心理カウンセリングを実践している。現在、キャリアカウンセラー養成講座講師や大手企業相談室のスーパーバイザーとして活躍中。


仕事を離れて「やることがない」

 仕事や職場をめぐって、を抱いている勤め人は非常にたくさんいます。それには、近年の劇的な就労環境の変化が大きく影響しています。詳しくは前々回の本コーナーでお話しさせていただきました。
 しかし、悩んでいるのは、必ずしも働いている人ばかりではありません。組織での勤務を離れてセカンドライフを迎えている人たちの中にも、悩んでいる人はたくさんいるのです。その典型的な例が、60代後半のいわゆる団塊の世代の人たちです。
 団塊の世代の人たちの多くは、現役時代、猛烈に働いてきました。あたかも、仕事が趣味であるかのように働き、残業もいとわず、休日出勤することも少なくありませんでした。
 ところが、定年退職などによって仕事から離れると、やることを見い出せない人が多く現れました。セカンドライフを迎えた60代後半の最も多い悩みの理由は、やることがない」ということなのです。
 よくある例では、やることがないため、朝起きて新聞をくまなく読みます。でも、ゆっくり読んでも午前中には読み終わってしまいます。特に出かける予定もないので、近所の喫茶店に行ったり、昼間からお酒を飲んだり。人によってはアルコール依存症になる人もいるようです。
 こうした人たちはほとんどが男性です。女性の場合は、夫が現役時代に家庭にいることが少なかったため、すでに趣味でつながっている友人たちがいます。ですから、夫が急に「旅行でも行こう」と言っても、妻は夫と行きたくない。女性同士の友人たちと行く方が楽しめるからです。そうしてますます、男性たちはやることが見つけられなくなります。


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仕事以外の役割を自覚して行動する

 やることがないと悩むセカンドライフではなく、充実したセカンドライフを送るためには、退職前から仕事以外のことを考えておくことが大切です。40代・50代の人たちは、まさに今から考えておくことが望まれます。
 考えておくべきことは「自分のキャリア」についてです。キャリアといっても、仕事のキャリア、いわゆるワークキャリアだけではありません。組織の中で仕事をしているとどうしても、自分のキャリアをワークキャリア中心に考えてしまいがちです。しかし、私たち人間にとって、仕事はひとつの役割でしかありません
 かつて、ドナルド・E・スーパーというキャリア研究者は、人生における代表的な役割には「息子・娘」「学生」「余暇を楽しむ人」「市民」「職業人」「配偶者」「ホームメーカー」「親」の8つ(注)があるという説を唱えました。そして、キャリアとは、年齢や場面によるさまざま役割の組み合わであると定義しました。
 みなさんが自分のキャリアを考える時には、ぜひこのことを意識してください。すべての役割を果たすべきだという意味ではありません。「仕事だけやればいい」ということではなく、仕事以外の役割もある」ということを自覚して行動することが大切だと思うのです。
 そうでないと、何らかの理由で仕事をしなくなった際、自分自身に辛い状況がやって来る可能性があります。
(注)時代による家族形態の変化等に伴い、近年は「配偶者」「親」が除かれ、「6つとその他さまざまな役割」と解説されるのが一般的です。


外的キャリアと内的キャリア

 キャリアを考える時、もうひとつ意識してほしいことがあります。それは、外的キャリア内的キャリアについてです。エドガー・H・シャインという心理学者が唱えた概念です。
 外的キャリアとは、キャリアの客観的側面を表した言葉で、職位給料職歴など他者からも見えるものです。たとえば「会社の中で偉くなりたい」「社会で認められたい」などの思いは、外的キャリアの発達を求めていると言えます。自分のキャリアを考える際、一般的にこの外的キャリアを中心に発想することが多くなります。
 もちろん、外的キャリアを意識して発想することは、モチベーションを高めるなどの効果をもたらし、大切なことです。ただ、外的キャリアは、組織や仕事を離れることによって中断や消失してしまうことがあります。
 一方の内的キャリアとは、キャリアの主観的側面を表した言葉で、外的キャリアの内側にあるものです。仕事に対する動機や意味づけ、価値観、やりがいなど心理的な状態を指します。他者からは見えず、自分にしかわかりません。別の表現をすれば、自分が大切にしていること」「自分が価値を置いていること」です。もちろん、内的キャリアは人によって異なり、本当の意味での「自分らしさ」だと言えるでしょう。
 内的キャリアは、組織や仕事を離れても中断も消失もしません。仕事だけではなく、プライベートを通じて発達させることも可能です。


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自分の内的キャリアって何だろう?

 たとえば『釣りバカ日誌』の主人公・ハマちゃんは、釣りと家族が大好きです。「昇進すると残業が増えて帰宅時間が遅くなる。土日も接待ゴルフなどに時間を取られて釣りができなくなる。だから、昇進したくないだろう」と思われるような人です。外的キャリアと内的キャリアとを意識することで、ハマちゃんの「大切にしていること」「価値を置いていること」がわかります。

 みなさんも、ぜひ、内的キャリアにも注目してみてください。
 「自分は何を大切にしているのだろうか?」「自分は何に価値を置いているのだろうか?」「本当の意味での自分らしさって何だろうか?」「どういう自分である時に自分は一番楽だろうか?」などと、考えてみてください。
 繰り返しになりますが、組織や仕事を離れても、内的キャリアが変わることはありません。自分にとっての内的キャリアに気がつき、それを意識して生きていれば、セカンドライフでも充実感を得られるはずです。
 組織で働いていると、「あの人がこう言うから」「こうあるべきだから」など、無意識に非合理的なことに縛られることが少なくありません。そういう非合理的なことをそぎ落として、自分の内的キャリアってなんだろうか?」と考えてみることをお勧めいたします。今は環境変化が急激で難しい時代だからこそ、環境では変わらない自分を考える時期だと思います。

>>上篤先生の前回の記事はコチラ
https://biz.nipponmanpower.co.jp/ps/choose/column/details.php?col_id=85L8Q56J

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