ちょっと一息

CDAの資格活用vol.3

採用面接のあり方を変革して、内定辞退を防止

[2010/09/03]

CDA活用1 現在、会社の人事部門ではコスト削減が求められ、たとえば新卒採用では厳選採用が主流となっています。優れた人材を厳選して必要最小限の人数を採用する、という方針です。
 この厳選採用は、新卒学生にとって辛い状況を生むばかりでなく、企業にとっても難しい課題を生み出しています。なぜなら、“優秀”な学生に複数の内定が集中し、内定辞退につながりやすくなるからです。企業は必要最小限の人数にしか内定を出していないので、内定を辞退されると、補てん人数分の採用活動が求められます。時間もコストも余計に必要とされるわけです。
 しかし、この課題を「1人のCDA」によって打開した事例があります。その「1人のCDA」が、IT企業の人事部で働く幅口明男さんです。
 幅口さんは、CDAのスキルを活用して、独自の採用面接試験を実施。その結果、「内定辞退を30%近く減少できた」と言います。果たしてどのような面接試験なのでしょうか? 幅口さんにうかがったお話をご紹介します。

●今回お話を聞いたのは・・・
 IT企業勤務
 人事部で人事労務全般を担当
 2005年CDA資格取得
 幅口 明男 さん


 “ふるいにかける面接”の弊害

CDA活用2 おそらく一般的な会社では、「面接官が質問票に沿って質問し、それに対して学生が答える」というスタイルの面接試験が行われていることと思われます。私自身、CDAを取得する前はそうした面接試験を行っていました。質問というより詰問、いわゆる“ふるいにかける面接”でした。“ふるいにかける”ことで、優秀な人材を獲得しようとしたのです。
 しかし、そうした面接試験は内定辞退につながりやすくなります。どの会社も「優秀な人材を獲得したい」と考えていますから、似たようなタイプの学生が複数の内定を得ることになるからです。また、たとえ弊社の内定を承諾していただいても、入社後に「イメージしていた仕事と違う」などの理由で早期退職につながるケースも少なくありません。
 つまり、“ふるいにかける面接”を見直す必要があるのです。


損得勘定を抜きにした、学生へのアドバイス

 現在、私が行っている面接試験は、“ふるいにかける面接”とはまったくの別物です。面接試験のあり方を変えたのは、CDAの学習や活動を通して、そのスキルを身につけられたからです。
 具体的には、就職活動に関するアドバイスや適性検査のフィードバック、キャリアカウンセリングなどを、面接試験の場で行っています。
 キャリアデザインの考え方もよく話します。たとえば、Will−Can−Mustの関係性について。「自分のやりたいこと」「自分ができること」「やらなければいけないこと」の3つの輪(ベン図)が重なる領域で仕事や会社を選ぶと満足感を得られますよ、などという説明をしています。また、縦軸を満足度(充実度)、横軸を時間(年齢)とした“ライフラインチャート”と呼ばれる曲線グラフを描き、私の例を挙げながら、「なりたい自分への道筋」や「なりたい自分の変化」などについて説明します。
 損得勘定を抜きにして、学生の参考になるような話をしたり、学生の働くことに対する価値観(仕事観)を聴いたりしているわけです。


狙いは「納得感」「フィット感」を抱いてもらうこと

CDA活用4 こうした面接試験で何を狙っているかというと、学生本人に「納得感」「フィット感」を抱いてもらうことです。本人が「この会社ならやっていけそう」と腑に落ちれば、内定辞退が減るはずだと考えるからです。
 また、「この会社の面接を受けて良かった」と思ってもらえば、志望意志を高めることにもつながります。実際、「親身に相談に乗ってもらえてとてもうれしかった。だから、他社からも内定をもらっていたけれど、この会社に決めました」という内定者の声もありました。
 たとえ、内定を辞退して他社を選んだとしても、競合他社に弊社のファンを作ったと捉えることができます。長い目でみれば競合他社と一緒にプロジェクトを組むことがあるかもしれませんから、損得勘定を抜きにした面接試験は、けっして損にはならないと思うのです。


本音を引き出すスキルを身につける

CDA活用3 ですから、面接試験の評価も従来とは異なります。一般的に、模範的な回答を上手に説明できる人を高く評価する傾向にありましたが、私は、学生が“自分の言葉”で伝えているかどうかや自分なりの仕事観の有無が評価のポイントになっています。
 そのためにはもちろん、学生の“素の思い”を引き出す必要がありますが、それにはCDAのスキルが非常に役立っています。

 こうした変革によって、内定辞退率は30%近く下がりました。また、採用予定人数を早期に達成することができるので、結果的に会社としてもコスト削減につながっています。
 このようにCDAで習得したカウンセリング理論や傾聴技法は実務で十分に通用するものだと実感しています。

 幅口さんが日本マンパワーのCDA講座を受講したきっかけは、「実務家としてのスキルを高めるため」だとのことです。会社から資格取得を命じられたわけではなく、個人で受講料を負担して自主的に受講しました。
 資格取得後は、学生の就職活動支援などの社会貢献活動に取り組み、CDAとしてのスキルをアップ。「そのおかげで仕事にも活かすことができるようになった」とのことです。
 幅口さんの活躍は、採用面接試験だけに留まりません。ほかの業務についても興味深い活用事例があります。それらは次号以降でご紹介します。

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