ちょっと一息

新入社員フォローアップ

メンタルヘルス不調や早期離職を防ぐために(1)

[2010/05/26]

 新卒学生が働き始めて約2カ月。いわゆる「五月病」が心配な時期です。みなさんの会社の新入社員はどのような様子でしょうか?
 大型連休の後は、新入社員に限らず誰でも、仕事をするのが億劫になりがちですよね。それに加えて新入社員は、新しい環境で新しい人間関係を築き、覚えるべきことは山ほどあり、わからないながらも仕事を進める必要があるのですから、環境に適応できず、「億劫どころか嫌になる」可能性は大いにあります。
 ただ、「新環境に適応できない」「嫌になる」が早期離職につながってしまうと会社の損失になりますし、もし、メンタルヘルス不調になってしまうと本人にも周囲にも大きなダメージとなります。
 そこで、入社間もない新入社員をサポートする方法を、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種取得の小出真由美さんに伺いました。第1回目の今回は、「五月病」の引き金になるストレス原因についてご紹介いたします。管理監督者やチームリーダーの方は必見の内容です。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアクリエイト事業部
 (メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種取得)
 小出 真由美 さん


メンタル不調に陥りやすい、新入社員の事情

新入社員フォローアップ_1 心の不調、いわゆるメンタルヘルス不調にはさまざまな原因がありますが、直接的なものとしては、「職場におけるストレス過多」が最たる原因となります。ですから、管理監督者やチームリーダーの方は、職場のストレス対策を進める必要があります。
 特に、新卒で入社して間もない新入社員は、ストレスを感じやすい状況にあります。そのストレスは「自分に対する不安」「環境に対する不安」「仕事や環境に対する不満」「体の不調」に分類でき、それらを生じさせる諸問題が絡み合って、メンタルヘルス不調を生んでいると言えます。
 ストレス要因の背景となる問題は、新入社員側にも会社側にもあります。

 まず、新入社員側の問題としては、「若者の気質」「入社前と入社後のギャップ」「仕事に対するプレッシャー」「コミュニケーション能力不足」などが挙げられます。
 「若者の気質」については、“打たれ弱くなった”ことが一番の問題です。“打たれ弱くなった”のは、叱られる経験が少なくなった環境に起因するでしょう。一世代前の人たちは、例えばちょっと悪さをしたら、「校庭十周!」の罰を受けるなど、理不尽な目に遭うこともあったのではないでしょうか。しかし今の若者は、悪いことをしたら謝るという指導を受けても、それ以上に理不尽に怒られたことがあまりありません。ところが一方で、仕事には理不尽が付きもの。そうしたズレが、ストレス要因のひとつとなっているのです。
 次の「入社前と入社後のギャップ」とは、「入社前に抱いていた仕事への期待イメージ」と「入社後に直面する仕事内容の現実」との間のギャップのことを指します。新入社員ですから、入社後すぐに“やりがいの感じられる高度な仕事”を与えられることはありません。社会人マナーなどに関する研修を受けたり、コピー取りなど上司・先輩のアシスタント的業務を行うのが普通です。しかし当の新入社員は、「自分はこんな雑用をするために入社したんじゃない!」などと考えがちです。上司などに怒られると、「おれの良さを生かせない上司が悪い」「私はきちんと言われたことをやっているのに、誰も助けてくれない」など、周囲のせいにする人もいます。
新入社員フォローアップ_2 その一方で、仕事内容や仕事量に対するプレッシャー感じています。先ほどの話と矛盾するようですが、仕事に対して漠然と「自分にできるだろうか?」という不安と、求められるレベルに対して十分に応えることができないことに苦痛に感じてしまうのです。
 また、最後の「コミュニケーション能力不足」についてはよく言われるように、ゲームやインターネット、メールなどの文化的背景が影響しているようです。これらはいずれも相手の表情やしぐさを見られないコミュニケーション形態。ですから、対面してコミュニケーションをとるのが苦手なのです。相手の表情やしぐさを見ながら言葉を選ぶという術を身につけていませんから、結果、社内の人間関係にストレスを感じてしまうことになります。


教育が行き届かない、会社の事情

 他方、会社側に問題があることもあります。それには、職場環境の問題と管理監督者の問題があります。
 職場環境の問題としては、教育研修体制が挙げられます。集団研修を数週間行い、その後OJTを半年から1年ほどかけてしっかりと行えれば理想的ですが、今の時代、なかなか難しい状況です。3日程度の研修の後すぐに配属して、「後は現場で教えるように」というパターンが現実のようです。しかし残念ながら、そのような体制では新入社員のストレス要因を払拭するのは難しいと言わざるを得ません。
新入社員フォローアップ_3 しかも、教育を任された現場の管理監督者にはプレーイングマネジャーが多く、極めて多忙です。そのため、十分な教育が行き届かないケースが少なくありません。それどころか、コミュニケーションの時間を取ることすら難しい職場もあります。
 2カ月前まで学生だった新入社員がこうした職場環境に放り込まれると、どうしていいかわからず臆病になりがちです。毎日長時間働くことにも慣れていないので、精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまいます。

 「五月病」は、これらのストレス要因が複数相まって適応障害やうつ病という形で生まれます。「五月病」にならなかったとしても、この時期に新入社員のモチベーションが低下しやすいことは間違いありません。
 モチベーションの低下がそのままメンタルヘルス不調につながるわけではありませんが、ストレス対策を行わずに放置しておくと、何らかの形で悪影響を及ぼしていきます。それは、「1年で15%、3年で30%」と言われる早期離職にもつながっていくのです。
 会社組織の将来のためにも、新入社員本人のためにも、恒常的なストレス対策の見直し・改善が望まれるのではないでしょうか。

※ストレス対策の方法は次回の記事でご紹介する予定です。

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