ちょっと一息

あなたの「金の糸」は何ですか?

楽しみながら「自分らしさ」が見つかる人生すごろく

[2014/12/24]

 

金の糸1

就職活動に臨む大学生の第1ステップは、自己分析だと言われます。「自分は何ができるのか」「自分は何を大事にしているのか」など、自分の活かし方を探索する作業です。でも、学生たちの声を聞くと、かなり大きな関門になっているようです。
 「自己分析って何をやればいいの?」
 「自己分析するのって難しい」
 一方、自己PRにおいても、企業が公表する「求める人材像」に型どおりに合わせようとして、「偽った自分を無理にPRしてしまう」という傾向があるようです。
 そして、これらの結果として生じてしまいがちなのが、「採用試験に通らない」「入社してもすぐに辞めてしまう」「結局この先どうしていけばいいかわからない」という現実です。

 こうした実態の一助になればと生まれたのが、人生すごろく「金の糸」です。京都産業大学の学生グループが発案し、日本キャリア開発協会(JCDA)が約1年かけて練り上げた、自己探索ゲームです。
 人生すごろく「金の糸」のゴールは、本当に自分らしい「金の糸」を発見すること。それは、就職活動だけでなく、すでに活躍しているビジネスパーソンにとっても、社会人人生を充実させるために見つけておくべきことのように思われます。
 さらに、ゲームをしながら得られる不思議な感覚。忘れていた自分の原風景、自分のオリジナリティの再発見、自分への肯定感、未来へのエネルギー、参加者との親近感・・。
 その概要を、開発担当者の日本キャリア開発協会の春原洋子さんにうかがいました。新年はサイコロを振って、親しい人と楽しく語らってみてはいかがでしょうか? きっと、楽しくて何時間もやってしまいますよ!


●今回お話を聞いたのは・・・
 日本キャリア開発協会
 企画推進グループ
 サブリーダー
 春原 洋子 さん


キャリアカウンセリングを構造化したゲーム

 人生すごろく「金の糸」が誕生したきっかけは、京都産業大学の准教授で、キャリアカウンセラー(CDA)でもある松尾智晶先生からのご提案です。「社会人基礎力を養う授業のため、学生に課題を出してくれませんか?」というお話でした。これまでにも企業などから実践的な課題を提供してもらい、実際に商品・サービス化されているプロジェクトもあるそうです。
 私たちは、学生の方々にキャリアカウンセリングを知ってもらえればと考え、学生の視点でキャリアカウンセリングが体験できるプログラムをつくってください」という課題を出させていただきました。
 そうして2012年4月、大学2年生を中心とした学生チーム10人のプロジェクトが始まりました。アンケートやインタビューをしながらいろいろ考えてくれました。
 「就活で自己分析しなければいけないけれど、面倒くさい」
 「自己分析って、どうすればわからない」
 「入社しても辞めている先輩も多いみたい」

 そんな声をヒントに出てきたアイディアのひとつが、ゲーム形式で自己分析ができるすごろく」だったのです。
 私たちはそれを聞いて「いい!」と思いました。試作品を学生と一緒にやってみると、非常に面白い。学生よりも大人の方が盛り上がったほどです。
 商品化にあたっては、キャリアカウンセリングを構造化したゲームにすることをコンセプトにしました。その後約1年間かけてブラッシュアップし、人生すごろく「金の糸」が完成しました。

金の糸2


「語る」「問う」「書く」ことで自己探索

 人生すごろく「金の糸」は、3人か4人で行います。盤は大きく4つの領域<小学校、中学校、高校、大学>に分かれています。小学校入学から大学卒業まで、年代を追って過去から現在、未来へと進むようにできています。
 ゲームの進め方は、一般のすごろくと同じ要領です。ただ、コマは1つだけ。全員が共通のコマを使います。サイコロを振って、コマが止まったマスに書いてある問いに、参加者全員が順番に答えのです。
 たとえば、小学校の領域には「当時、流行っていた遊びは?」「小学校時代、楽しかったことを1つ」「好きな教科は何でしたか?」などのマスがあります。そして、「理科です」「私も理科」「ぼくは図工だな」などと答えます。
 ただ、それだけでは自己探索には至りません。「どうして?」「具体的なエピソードを教えて!」などの質問カードで、「実験するのが面白かったから」「私は、どうして雪が降るのか、どうして雷が鳴るのか調べるのが好きだった」「ぼくは絵を描くのが得意だったから」などと自分に問いかけいきます。
 また、他の参加者の話を聞くことで「あ、そういえば私もそうだった」と思い出したり、自分はどうだったかなあ?」などと自問したりもできます。自分が語ったことに対して、参加者から「へー、意外にかっこいいんだ」とか「本当はやさしいんだね」などのフィードバックもありますので、人からはそう見えるんだな」などと、今まで意識していなかった自分に気づくこともできます。
 さらに、人生すごろく「金の糸」では各学校の卒業ごとに振り返りシートに記入する時間が設けられます。つまり、語る」「問う」「書く」ことで自己を探索していく仕組です。

金の糸3_ゲーム風景


「金の糸」は誰にでもある

 人生すごろく「金の糸」のゴールは、自分の「金の糸」を見つけることです。
 「金の糸」というのは、自分の軸となる「自分らしさ」のことです。自分にとってなによりも大切で、重視している価値観や世界観。大切だからこそ、プライドにかかわる一方で、ものすごく傷つきやすいものです。
 「金の糸」は、自分自身をどう見ているか、という視点の軸であると同時に、周囲(環境・社会)をどう見ているかという視点の軸でもあります。たとえばユーモアを大切にし、自分はユーモアのある人間だと思っている人は、周りの出来事の中にもユーモアを見つけ出します。努力を大事にして、自分は努力をする人間だと思っている人は、たとえば成功した人を評価するときには、努力をしたから成功したのだと捉えるのです。つまり、自分自身を見るように周囲を見ていのです。

 この「金の糸」を意識できている人はどれくらいいるでしょうか? 「金の糸」は誰にでもあります。みなさん一人ひとりが自分特有の「金の糸」を持っています。でも、非常に見えにくいもので、1人で考えてもなかなか見えません。自分が持っているものは、自分にとっては当たり前であり、意識しにくいからです。
 ですからゲームでは、過去の出来事を通して、その時思ったことや行動したことを語ってもらうようにしています。思ったことや行動したことは、その人特有の反応だからです。その反応について、小学校時代から大学時代まで振り返ると、その人に共通したものが見えてくのです。しかもそれが、人の話を聞いたりフィードバックをもらったりすることで、自分のオリジナリティも見えてきます。これまで自分では「当たり前」だと思っていたことが、実は「自分だけ」だということもよくあります。その「自分だけ」が、「金の糸」を見つける大きなヒントになると言えるでしょう。


「金の糸」を見つけるとエネルギーが湧く

 「金の糸」を見つけることができると、ものすごくエネルギーが湧いてきます。
 たとえば・・今までの人生がつながった感覚を得られる。「これまでの生き方で良かったんだ」というような自己肯定感が高まる。これからどのような方向に進めばいいか、自然に見えてくる。自分が何者かという軸ができる。困難にぶつかった時でも自分なりの戦略を意識して立ち向かいやすくなる。もっと言えば、自分が何のために生きていて、人生で何をしようとするのか、につながっていきます。
 現代は環境変化の激しい時代ですが、「金の糸」を意識できていれば、たとえば仕事や環境が変わり、揺らいだとしても、自分の軸に立ち戻ることができ、課題を乗り越えることができると思います。

 人生すごろく「金の糸」は、2014年3月に発売しましたが、すでに大学生の就職支援や企業の内定者研修・新入社員研修などで活用されています。キャリアカウンセラー仲間が、旅行先で何時間も語らい合ったというお話も聞きました。
 先日は日本マンパワーさんのオープンキャンパスセミナーで、短時間だけ体験していただいたのですが、参加者のみなさんは初めて会う人ばかりにもかかわらず、すぐに打ち解けて楽しく語らい、自分の「金の糸」を言葉に表現しようと真剣に取り組まれていました。これも「金の糸」が持つ、不思議な効果のひとつです。

 普段、小学校の頃から自分を振り返ることはほとんどないと思います。振り返ろうと思っても、なかなかできることではありません。でもこれはゲームですので、気楽に取り組めます。人の生き様を聞いたり、自分の生き様を語ったりすることは、楽しく、「金の糸」を言葉にすると、エネルギーが湧いてきます
 大学生の就職活動だけではなく、組織での若年者層教育チームビルディングなど、さまざまな場面でご活用いただければ幸いです。

★人生すごろく「金の糸」
体験ワークショップ(PDFチラシ)はコチラ
https://www.j-cda.jp/seminar/document/sugoroku_workshop.pdf

ご購入お申し込みはコチラ
https://www.j-cda.jp/jcda_teaching_materials.html

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