ちょっと一息

メンタルヘルス不調を未然に防ぐために

知っているようで知らない「いい睡眠」のメカニズム

[2013/09/27]

 2010年の調査によると、心の健康問題を有する労働者がいる事業所は、56.7%に上ります。それに伴って、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合も、50%を超えました(ともに労働政策研究・研修機構調査)。そのため、厚生労働省では、うつ病などの精神疾患を、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病に加えて「五大疾患」とする方針を打ち出しました。
 一方で、メンタルヘルス対策に関する管理監督者の活動(ラインケア)に力を入れている企業では、労働メンタル1者の心の健康問題に抑止効果を上げているところが多いと報告されています。ただ、メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰は、依然として難しい課題となっているのが現実です。
 こうした状況において、個人にとっても組織にとっても大切なことは、ストレスを軽減してメンタルヘルス不調を未然防止することです。
 そこで本記事では、メンタルヘルス対策の講師などを務める小出真由美さんに、ストレス軽減の方法をおうかがいしました。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 研究開発グループ
 小出 真由美 さん


ストレス軽減の私生活指導を

 職場における労働者のストレス軽減には、管理監督者のラインケアが重要です。実際、管理監督者を対象としたラインケア教育・研修を行い、効果を上げている組織も多くなってきました。
 管理監督者に求められるメンタルヘルス対策としては、チームワークの改善、業務の分担、仕事の流れの調整、労働者個々への配慮などが挙げられます。ただ、ストレスの増減は職場だけでなく、労働者個人の私生活によっても影響されます。
 ストレス過多になってしまうと、たとえメンタルヘルス不調にならなかったとしても、生産性の悪化につながります。これからご説明するセルフコントロール術を、ぜひ実践指導されるといいでしょう。
 管理監督者でない人も、ご自身のストレスを上手に解消してください。


ストレス過多を予防する4つの基本
メンタル2
 ストレス過多を予防する基本は、休養、睡眠、運動、食事、リラクセーションです。
 休養とは文字通り、「休む」ことと「養う」ことを意味します。みなさん、休むことばかりに注目しがちですが、養うことも大切です。養うとは、心を豊かにする活動のことです。休日にはぜひ、自分が楽しいと思える趣味などの時間過ごして、オン・オフを上手に切り替えるようにしましょう。管理監督者は、部下がしっかりと休養できるように配慮する必要があります。
 また、睡眠、運動、食事、リラクセーションも大切なポイントになります。なかでも睡眠は、「質のいい睡眠を十分にとればメンタルヘルス不調になりにくい」と言われるほど重要です。誰でもすぐ実践できますので、その方法を簡単にご紹介します。


ストレスを軽減する「いい睡眠」のとり方

 質のいい睡眠をとるポイントは、光、体温、自律神経系、寝室環境の4つを整えることです。

【光】
 朝、光を浴びると、14〜16時間後にメラトニンが分泌されます。メラトニンとは、眠気を生じさせるホルモンです。つまり、光を浴びてから14〜16時間後に眠くなるというわけです。ですから、毎日決まった時間に起床して光を浴びれば、決まった時間に眠くなり、生活のリズムを整えることに役立ちます。

【体温】
 人は、眠りに落ちる過程で体温が約1度低下します。この体温低下が急であれば、眠気を強く感じて、深い眠りにつきやすくなります。ですから、深い眠りにスムーズにつくためには、眠りに就く前に体温を高めに保つことが効果的です。具体的には、ぬるいお風呂にゆっくりとつかったり、温かい夕飯をとったりするといいでしょう。
 ただ、お休み直前の熱いお風呂は交感神経系が刺激され、睡眠には逆効果になりますのでご注意ください。メンタル3

【自律神経系】
 人は、活動している時には交感神経系が優位になり、休息している時には副交感神経系が優位になります。交感神経系が優位だとあまり眠くならず、眠りも浅くなりがちです。ですから、交感神経系を高ぶらせるパソコンやゲームを夜遅くまでするのは控えましょう。脳をしっかりと休ませるためには、心が落ち着くような暗く静かな環境をつくって副交感神経系を優位にすることが大切です。

【寝室環境】
 自律神経系にも関連しますが、寝室の環境もポイントのひとつです。遮光カーテンを使う、間接照明などで部屋を暗めにする、アロマテラピー静かな音楽でリラックスするなど、眠りやすい環境づくりに努めましょう。


公式テキストにはセクハラ、パワハラ、メタボも

 こうした内容は厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針」に具体的に示されています。また、『メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト〔第3版〕II種ラインケアコース』にも掲載されています。

 また、テキストでは、労災認定との関係でセクハラやパワハラについて、脳・心臓疾患との関連でメタボリックシンドロームについても解説されています。
 管理監督者は、部下のストレスやメンタルヘルスに大きな影響を与えますので、組織として教育・研修の機会を設けられることをお勧めいたします。

 

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