ちょっと一息

今につながる「私の転機」 vol.11

営業として活躍しながらも、CAの夢を捨てきれず・・

[2018/09/27]

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 小さい子を持つお母さんが子連れで安心して過ごせる店がない。
 屋外の遊び場はあるけれど、小さい子は心配で遊ばせておけない。
 お母さんたちだって、たまにはお店でくつろいでもいいはず。
 もっと子育てのしやすい温かい環境があればいいのに。

 乳幼児を育てる何人ものお母さんたちから、心の内を直接聞いた永井由美さん。ご自身も3人のお子さんを育てる中で、そうした思いが膨らんできました。でも、子連れで気軽に過ごせる場所は、地域になかなか現れてくれません。
 そこで永井さんは、なんと自ら会社を設立。乳幼児を室内で安全に遊ばせておけるスペースと遊具を備えた「カフェのような親子サロン」を作り始めたのです。親子サロンには地元の保育士さんも常駐するので、お母さんたちは安心してお茶を飲んだり、おしゃべりしたり、仕事をしたり・・思い思いの時間を過ごせるようになると言います。

 永井さんがどのような経緯でこうした活動をするに至ったのか。これまでどのようなキャリアを歩んできたのか。永井さんのキャリアストーリーをおうかがいしましたので、ぜひご覧ください。そこには、お母さんたちのリアルな思いが反映されています。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社LINK 代表取締役
 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
 永井 由美 さん


キャビンアテンダントになりたい

 「キャビンアテンダント(CA)になって、私にしかできないサービスをお客様に提供したい」
 それが私の夢でした。ですから、新卒での就職活動ではCAに絞っていました。ところが、十数年前の当時はCAの採用自体が少なく、2社くらいしか応募のチャンスがありません。「さすがに2社では心もとない」と思い、接客業にも応募しました。なぜ接客業かと言うと、大学時代に焼肉屋さんでアルバイトをしていた時、お客様と会話をするのがとても楽しかったからです。自分で言うのもなんですが、お客様からすごく人気があり、「卒業後ウチの会社に来てくれないか」と言われたこともあります。
 そんな就職活動で最初に役員面接まで進んだのは、最大手のハンバーガーチェーンです。その年、同社は就職人気ランキングで第3位。卓越した経営手腕で有名な社長に心酔して志望する学生もたくさんいました。でも、私の志望動機は「接客がしたい」というだけ。しかも、面接では「第一志望は航空会社です」と言っていました。
 今思えば失礼な話ですが、そんな私に対して採用担当の方は非常に親切に接してくれ、CA受験が終わるまで最終面接を待っていてくれました。「納得できるまでCA受験に挑戦してください。ただ、話し方が子どもっぽいので、直した方がいいですよ」とアドバイスまでしてくれました。CA受験が終わるまで最終面接を待っていてくれました。
 結局、CAの願いは叶わず、ハンバーガーチェーン会社に就職しました。入社後の仕事は、東京の商業施設などに新規オープンする店舗での営業です。ただ、デフレの影響でハンバーガーの価格破壊が激化していた時期です。勤務体系が厳しくなり、始発で出社して終電で帰るような日々が多くなってきました。「このまま続けていくのは辛いなあ」という気持ちと、「やっぱりCAの仕事がしたい」という捨てきれない気持ちが相まって、入社1年にも満たずに退職することにしました。


英語を活かせる接客業へ

 ハンバーガーチェーンで働きながらもずっと「本当はCAになりたい」と思っていました。そのため実は、CAへの応募を続けていました。ただ、仕事が忙しくて面接にも行けない状態でしたから、きちんと退職してCA受験を優先させようと思ったのです。
 だからといって、秋田から出てきて一人暮らしをしていましたので、CAに合格するまで無職というわけにもいきません。
 そこで転職先として考えたのが、英語を活かせる接客業です。幸い、英会話教室を展開するA社に就職することができました。
 A社で最初に任されたのは、受付兼個人向け営業です。窓口にいらっしゃったお客様に授業のコース内容を説明し、ご契約してもらう仕事です。でも、営業職は大学の時に「一番やりたくない」と思っていた職種で、案の定、当初はほとんど契約を取れません。上司に何度も叱られ、社会人になって初めてライフラインチャート(※)が落ち込みました。
(注釈)
※縦軸に満足度・充実度、横軸に過去の年齢(時間軸)をとって、自己の内面を探求する曲線のこと。


「トークの達人」として社内表彰

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 ただ、A社の人材教育は手厚いもので私にとってはどれも非常に興味深く、勉強になりました。たとえば、異業種の営業部門で成功している方の講話。会社にいながら、ほかの業界のことを知ることができました。また、社長が指定する課題図書を読んでの感想文提出。自分ではけっして選ばない内容の本ばかりでしたが、幾度となく目から鱗が落ちました。「給料をもらえる上に教育まで受けられるなんて最高!」と喜んで勉強するようになりました。
 そうすると、営業成績も次第に上がっていって、「やりたくない」と思っていた営業の面白さもわかってきました。営業スタイルも私なりに工夫しました。「もし私が客の立場だったら・・・」を常に考えて実践していったところ、それが結果的に成績アップに結びつき、入社1年後には「トークの達人」として社内表彰されるに至りました。


最後のCA受験不合格からの転機

 そうして2年ほど経ったある日、ある航空会社からCAの最終面接に来るよう連絡が入りました。CAへの未練を捨てきれず、秘かに中途採用に応募していたのです。英会話スクールにはそうしたスタッフが少なくありませんでした。
 ただ、最後のチャンスだと思っていました。その時私は25歳で、当時は応募資格に年齢制限があったからです。
 「たとえ受からなかったとしても、CA受験はこれで最後にしよう」
 そう決意して、会社に辞表を提出しました。「受かったら退職して、落ちたら会社に残る」というのは、自分勝手なようで気が引けたからです。
 そうしたら、合格発表の当日朝一番に本社へ出社するよう上司から連絡がありました。
 私はてっきり叱られると思い、恐る恐る出社しました。そうすると、社長、副社長、エリアマネジャーというお偉方が揃っていて、次のように言われました。
 「結果はどうあれ、私たちの結論は『辞めるな』だ。今まで目指していた気持ちはわかるけれど、A社でクリエイティブな仕事をしてきた君の経験知は、学生の時とは違うはずだ。それを全部捨てて、働いたことのない子たちと同じ位置からスタートするのはもったいない」
 そして、合格が発表されました。私の最後のCA受験の結果は不合格でした。そうしたら上司から、「新しいステージを用意するからもう一度、心機一転頑張ってみなさい。来月から転勤」と言い渡されました。


大規模スクールのマネジャー

 辞表まで出して別の会社に応募したのですから、降格どころか退職に至るのが普通です。ところが、言い渡されたのは・・
 「この機会に気持ちを新たにして、B校のマネジャーにトライしてみなさい」
 「えーっ、マネジャー?!」
 Bは600人もの生徒を擁する規模の大きいスクールです。営業エリア内に大手企業が多い地域で、法人営業の核にもなっていました。そこのトップに、わずか入社2年で、辞表を提出した私がなるなんて・・。無理だと思いました。が、断れる雰囲気ではありません。何をすればいいのかもわからないまま、上司の言葉に従いました。
 初めてのマネジャー職は、荷が重い仕事ばかり。ノルマは大きく、部下はほぼ年上。ストレスがたまる仕事でした。でも当時の年齢からは考えられないほど多くのことを任せていただけたので、楽しく、やりがいもありました。中でも大きな転機につながったのが、契約更新の営業です。


契約更新でお客様の悩み相談

 英会話スクールは、新規契約よりも契約更新の方が難しいと言われています。新規の場合は「英語を勉強したい」というお客様の意欲が高いため契約に至りやすいのですが、更新の場合は「TOEICのスコアが伸びた」「スラスラと話せるようになった」など目に見える成長や上達を実感してもらえないと契約に至りにくいからです。
 ただ不思議なことに、契約更新に向けてお客様に営業をしていると、次第に「何のために英語を学ぶのか」「英語を学んでどうなりたいか」という話になってきます。いわば、「英語の先にある、なりたい自分」の話です。さらに話が進むと、キャリアや人生についての悩み相談のようになることもしばしばでした。
 もちろん、業務的には契約書にサインしてもらうだけでいいのです。それでお客様の英語力が伸びればWin−Winです。でも、お客様の悩みを途中まで聞いてしまったのに、それを放置するというのは、なんだか無責任のような気がしてきました。「私は果たしてそれでいいのか?」「何か足りないような気がする」などと、すごく悩みました。悩みに悩んで、ライフラインチャートも大きく落ち込みました。
 そこで、大学時代からお世話になっている先生に相談しました。英語の先生なのですが、在学時にも何度か相談に乗っていただいた、私の尊敬する先生です。そうしたら先生がきっぱりとアドバイスしてくださったのです。
 「あなた、もっと勉強しなきゃだめよ。キャリアカウンセリングという分野があるから、それを勉強してみたら」
 キャリアカウンセラーという存在について初めて知りました。

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永井由美さんのライフラインチャート(22〜26歳)

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★キャリアカウンセリングを知った永井由美さんは、その後どのような道を歩むのでしょうか? 「カフェのような親子サロン」のオープンに向けての道のりは? 本記事の続きは来月の当コーナーでご紹介いたします。
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