ボイストレーニングで相手のハートに染みわたる声に
[2015/05/27]
「この人の声、大好き! 素敵だわぁ」
「あの人の声、なんだか苦手…暗〜い気分になる…」
このように、声に対して様々な印象を抱く時がありますね。みなさんは、誰の声が好きですか? 誰の声が苦手ですか?
同じように自分にも問いかけてみましょう。
「自分の声は人から好かれているのだろうか?」
「自分の声は周囲からどう思われているのだろう?」
こんなこと、あまり考えたことありませんよね。ほとんどの人が、自分の声に無頓着なのではないでしょうか?
しかし、声は円滑なコミュニケーションの手段として非常に重要なウェイトを占めています。声が変わることによって、相手から信頼される、営業成績が上がる、チームワークが強くなる、好感度が上がる、異性から好かれる…などといった例はたくさんあります。
そこで、望ましい声を出すコツやトレーニング方法などについて、ボイストレーナーのいのまたひろみさんにお話をおうかがいしました。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
いのまた ひろみ さん
企業、職業基金訓練校にて接客コミュニケーションのためのボイストレーニングを担当している。「声が明るくなる」「説得力が増す」「顧客の心を掴む」などの効果をもたらすトレーニング方法「もてボイス」を2014年商標登録。外資系ブランドの店長としてスタッフを育成したトレーニングスタイルは「楽しくわかりやすい」と定評がある。
音楽スタジオや専門学校ではボーカルレッスンを担当。タレントや女優、ミュージシャンのボーカルトレーニングも行っている。
声によって相手が受ける印象は違う
声が相手に与える印象は、大きく2つに分かれます。「好ましい印象」と「好ましくない印象」です。それぞれどのような声なのでしょうか?
「好ましい印象」の声は、自然にすっと入ってくる、聞き取りやすい声です。明るい声、良く通る声などいろいろありますが、伝わりやすい声は無理のない自然なフォームで発せられているのが共通点です。周波数が安定していて、規則性もあります。声を聞くと元気が出る、落ち着くといった印象を抱くのはそのためです。そして場にふさわしい声であることも、聞く相手の気持ちに配慮した好ましい印象を与える要因となります。
「好ましくない印象」の声はその反対で、聞き取りにくく、不自然な声です。不自然に出している声は、フォームが不安定ですので周波数も不安定です。例えば、暗い声、こもる声、体調が悪い時などの不明瞭な声。耳にして急かされたような気になったり、やる気がなくなったりすることもあります。場にふさわしくない声も、聞く相手の気持ちに配慮していないという好ましくない印象を与えてしまいます。
もし、第一印象で相手から「この声嫌い」と思われてしまうと、その後いくらいい話をしても、耳を傾けてもらいにくくなります。場合によっては拒絶されることもあるでしょう。
声による印象とはそのくらい重要なものなのです。職種によっては、声は職務能力の一要素として捉えられてもいいくらいだと思います。
ビジネスにおいて望ましい声とは
ビジネスにおいて望ましい声は、TPOによって異なります。
たとえば、受付時の声、営業時の声、クレーム対応時の声がすべて同じだったら、お客さまはどのように感じるでしょうか? おそらくその会社に不信感を抱くはずです。あるいは、築地市場のような卸売市場でセリをしている人の声と、百貨店で販売をしている人の声が逆転してしまったら、双方とも求められる役割を果たせないでしょう。
このように、仕事内容や役割、その場のシーンにふさわしい声を出していけるようにコントロールすることが大切なのです。
ただ、多くの人が、自分の声に対してあまり意識していません。声よりも言葉を重視しているように思われます。すでにお話ししたように、聞く人にとっては声の印象で抱く感情が変わってきます。ということは、自分の声を意識することで相手が受け取る感情をも意識できるようになり、心の距離が近づくきっかけを作ることができます。
誰かに何かを話す時は、ぜひTPOと聞く相手の気持ちも考えて使い分けたいものです。
いい声を出すためのトレーニング
では、望ましい声を使い分けられるように、私たちはどのようにすればいいのでしょうか。そのためにはまず、本来の自分らしい自然な声を出せるような姿勢を意識する必要があります。
少し専門的な話になりますが、人の声は声帯という器官から発せられる小さな音がもととなっています。声帯は喉仏の内側にあり、筋肉と粘膜で構成されています。厚さ、長さ、大きさはひとそれぞれです。肺から出る空気が声帯を通過するときに開閉することで振動音が生まれます。声帯は伸び縮みすることで厚さが変わり、音の高低を生み出します。その音はその後、口腔や鼻腔などの共鳴腔で増幅され、口の形や開き方の度合いで母音となります。唇、歯茎、舌などを使って調音することで子音になります。
その際、余計な力が入って発声に必要な筋肉が硬くなっていたり、粘膜の水分が適度でなかったり、肺からの空気が一定でなかったり、口の中が狭くなっていたりとすると、自然な声を出すことが難しくなります。
本来の自分らしい声を出すためには、これらを解消するためのトレーニングが必要とされます。具体的には、筋繊維を本来の位置にリセットするストレッチ、腹式呼吸で深い呼吸をすることによって周波数を安定させるトレーニング、口角を上げ共鳴腔を広げて響かせるトレーニングなど、さまざまなトレーニングがあります。
筋肉は記憶しますので、トレーニングすることによって、自然で聞き取りやすい声の出し方を身体に覚え込ませることが可能です。
自分でもできる簡単トレーニングとしてお薦めなのは、小さく声を出しながらあくびをすることです。口も鼻の奥も開いて、筋肉を緩めましょう。首や肩もゆっくりと大きく回して筋肉をほぐしてください。そして、ニッコリした笑顔。お子さんや恋人やペットなど、自分の愛しい存在にあいづちを打っているシーンを思い浮かべるなどして、表情筋も緩めましょう。
そうすることで、自然に響く聞き取りやすい声が出せる姿勢に近づいていきます。
声が変わるとこんなにいいことが
ここ2〜3年、声のトレーニングを社員研修として行う企業が増えてきました。私も何社かの企業で講師を務めてきました。その経験から、トレーニングによる効果事例をお知らせいたします。
最も変化が速かったのは、口をあまり開いて話す習慣がなかった若手男性で、その人は研修で口の中を広く柔らかく使うことをマスターし、即日の電話対応で「上司から声が聞き取りやすくなったと褒められた」と喜んでいました。
またある会社では、社内のチームワークが良くなったと言います。その職場には50歳代のマネジャーと20代の女性社員がいましたが、マネジャーが声の出し方を変えただけで、女性社員から「こんなに優しい方だったんですね」と部下から慕われるようになったのです。マネジャーの性格が変わったわけではありません。声による感情表現が豊かになったことで、ぶっきらぼうな印象だった声が女性社員の望んでいたあたたかい印象の声で伝えられるようになったのです。
ほかにも、「声を長時間出してもかすれないようになった」という販売担当者、「押しの一言が自信を持って言えるようになった」という営業担当者などもいます。声を意識すると聞く相手の感情にも敏感になる、声に自信がつくと表情も明るくなるという副次効果も多く見受けられます。滑舌もよくなりますし、歌も上手になります。
特に男性の場合は、「サ行が決まると爽やか、仕事ができる」「自分のことを知っている人は声に余裕があり、モテる」と言われます。仕事にも恋愛にも声は大事なポイントになるのです。
公開コースでは個人指導も
6月10日(水)に予定されている日本マンパワーの公開コース『よく響く声は、客のハートに染みわたる!ビジネス・ボイス・トレーニング』では、私が受講者一人ひとりの声をチェックして、いい点・弱い点をお伝えいたします。そして、みなさんが本来持っているいい声を出すためのトレーニングを実践するとともに、ご自身が望む方向の声を出すためのトレーニングも学びます。
公開コースの内容を忘れないように、お土産に個別カルテもお渡しするようにしています。
声は生まれつきではありません。トレーニングで変えられます。
仕事のパフォーマンスを上げるために、接客力を高めるために、お客様への説得力を培うために、信頼関係を深めるために、好感度を上げるために、部下に慕われるために、異性に好かれるために・・受講理由は人それぞれで構いません。声に興味を持った方はお気軽にご参加ください。一緒に楽しい時間を過ごしましょう。