独立経営コンサルタントの“ある1週間の仕事”
[2012/09/26]
「経営コンサルタントって一体どんな仕事をするのだろう?」
「企業から依頼を受けて、経営に関する問題解決のための助言をする」ということはわかるのですが、具体的な仕事の実態はなかなか想像できません。なぜなら、経営コンサルタントの仕事を間近に見られる人は限られていて、しかも経営コンサルタントによってビジネススタイルや得意分野が異なり、具体的なコンサルティング内容は守秘されるからです。
そんなベールに包まれたような経営コンサルタントの仕事、知りたいと思いませんか? 少なくとも、中小企業診断士に関心のある人は知りたいですよね。
そこで、現役の独立コンサルタントであり日本マンパワーの講師でもある橋本健志さんに、「ある1週間の仕事」を教えていただきました。「えーっ、そんなことまでするんですか?」と思わず言いたくなるような幅の広さ、というか奥行きの深い仕事です。ぜひご参照ください。
●お話をうかがったのは・・・
株式会社ヒューマンビジネス・コンサルティング
代表取締役 橋本 健志 さん
(中小企業診断士)
(プロフィール)
大手人材ビジネス会社で約10年間勤務した後、人材ビジネス業界の発展を使命に株式会社ヒューマンビジネス・コンサルティングを設立。各種メディアに派遣関連問題の取材で出演するなど、人材ビジネスの専門家としての地位を確立した。現在は、同業界のコンサルティングのほか、商店街を中心とした街づくり支援、フランチャイズ拡大のためのコンサルティング、日本マンパワー「中小企業診断士講座」の講師など、活動の範囲が広がっている。
著書に『続々80分間の真実』(共著/日本マンパワー出版)、『一問一答 合格のエッセンシャルズ』(共著/同友館)などがある。
経験を積むことで活動の範囲は広がる
私は元々、人材ビジネス会社で約10年間働いていました。ですから、経営コンサルタントして独立開業する際は、その得意分野を活かして「人材ビジネス会社を発展させることで人の成長につながるコンサルティング会社」を目指しました。今でもその基本姿勢は変わっていませんが、コンサルティングの経験を積むことによって活動の範囲が広がってきました。現在の事業の柱は次のようになっています。
(1)人材ビジネス業界を対象とするコンサルティング
(2)商店街を中心とした街づくりや地域活性化の支援
(3)フランチャイズ拡大のためのコンサルティング
(4)中小企業診断士の受験指導
ただ、これだけでは仕事内容がわかりにくいと思いますので、ある1週間の動きをご紹介いたします。
営業サポート、人事制度改革、イベント企画、人材育成支援も
【月曜日】--———————————————————————————————
午前 自社(東京都)へ出勤、コンサルティング資料やコンテンツの作成など
午後 栃木県の人材派遣会社A社へ移動
17:00 A社にて労働者派遣法改正に関する社内セミナーの打ち合わせ
夜 A社にて(A社の顧客との)新規契約に関する会議
27:00 ホテル着
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私の場合、お客様の元で仕事をすることが多いので、自社に出勤するのは週の半分以下になります。この日も午後から栃木県のクライアント企業A社へ出向きました。夜の会議は深夜まで及び、A社社員とともに、新規契約に沿った業務をどのように立ちあげるかについて綿密に計画を練りました。
【火曜日】--———————————————————————————————
10:00 A社へ出社、午後の業務の準備など
13:00 A社の顧客企業(派遣先)を訪問して打ち合わせ
A社へ戻って各種内勤
20:00 A社若手社員のモチベーションアップのために懇親会
ホテル宿泊
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A社における私の仕事は、外部スタッフとして経営コンサルティングを行うと同時に、A社の社員と同様の仕事も行っています。13時の訪問先へはA社の名刺を持って営業活動をしました。こうしたスタイルは経営コンサルタントとして珍しいのですが、「お客様の利益に貢献したい」との思いから取り組んでいます。
また、20時からは若手社員5人と私の6人で懇親会を行いました。顧客企業の社員の成長を促すことも、経営コンサルタントの大切な仕事だと考えています。
【水曜日】—--——————————————————————————————
朝 茨城県に移動
11:00 人材派遣会社B社の派遣先企業を訪問してクレーム対応
14:00 人材派遣会社C社の派遣先企業を訪問して営業サポート
15:00 人材派遣会社C社の見積書作成サポート
17:00 東京都へ移動
18:30 商店街の若手リーダー塾のグループワークコーディネート
21:30 帰路
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11時からのクレーム対応については、B社の考え方と派遣先企業の考え方にギャップがありましたが、派遣先企業のメリットと関連法令をきちんと説明したことで理解を得られ、B社の受注拡大につなげることができました。
14時からはC社の派遣先企業の現場を見学。ストップウォッチを片手に工程ごとの作業効率を測定し、その結果を踏まえてC社の見積書作成をお手伝いしました。
その後東京へ移動し、都の外郭団体が主催する「商店街リーダー塾」に参加。専門家スタッフとして、グループワークの進行をコーディネートしました。
【木曜日】———--————————————————————————————
10:00 メーカーD社の人事制度改革プロジェクト会議に出席
17:00 上記会議終了
17:30 自社で内勤
20:00 東京都のE商店街に新規イベントのアドバイス
23:00 帰宅
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約半年前から、毎週木曜日はD社で人事制度改革プロジェクト会議に出席しています。これは、給与体系、評価基準、職階制度などを含め、人事制度を全社的に見直す長期プロジェクトです。D社幹部の方、社会保険労務士の方とともに、ベストな体系・スムーズな移行に向けて調査・検討・立案を重ねています。
20時からは都内某市のE商店街へ初訪問。「イベントがマンネリ化してきたので、新規事業に関するアドバイスが欲しい」という要望にお応えするものです。この日は顔合わせ程度でしたが、私はこれまでさまざまな商店街イベントの成功例・失敗例を見てきましたので、実例を踏まえたご提案をするつもりです。
【金曜日】—--——————————————————————————————
9:30 メディアからの取材対応
11:00 人材派遣会社F社からの売り込み対応
14:00 人材派遣会社G社の社内研修に関する打ち合わせ
16:00 従業員・税理士等とフランチャイズ拡大案件等の打ち合わせ
夜 栃木県へ移動
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朝は某メディアからの取材に対応。その後、F社、G社と打ち合わせをしました。16時からは弊社所属の経営コンサルタントらと打ち合わせ。フランチャイズを拡大するためのコンサルティング、弊社主催の無料セミナーの2案件について、今後の対応策を話し合いました。
【土・日曜日】--——-———————————————————————————
土曜日 終日 人材派遣会社A社の社員旅行に同行
日曜日 人材派遣会社A社の社員旅行に同行
夜 東京の自宅へ帰宅
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栃木県のA社の社員旅行に同行し、経営者らと公私さまざまなお話をしました。今週は休日のない忙しい週でしたが、休みがとれる場合はだいたいサッカーで汗を流しています。
ちなみに、夜寝る前にブログを書くのも日課になっています。
http://www.hb-consulting.jp/blog/2012/09/
診断士資格で信頼を得た上で、自分の強みをお客様貢献に
こうして私の仕事を追うと、「コンサルタントの仕事に中小企業診断士資格は必要ないのでは?」と思われる方がいるかもしれません。でもそれは大きな勘違いです。確かに、コンサルティング現場で「○○○○の理論を教えてください」など、テキストの内容そのものを問われることはほとんどありませんが、診断士取得のために学習した内容は私の考え方の基礎となっています。基礎があるからこそ、それを応用してさまざまなご要望に応えられるのだと思います。すべての業務に好影響を与えているという意味から、この資格の有意性を強く実感しています。
また、お客様から見れば、「橋本は診断士の資格を持っているので、きちんとした理論を知っている」という安心感・信頼感につながっているようです。おそらく、診断士資格のない状態で私が独立開業していたとしたら、今ほどの仕事は獲得できなかっただろうと思います。
診断士の資格は、コンサルティングの質を裏付ける心強い証となります。私はこの証をお客様からの信頼獲得に活用しながら、自分の強みによってお客様に貢献できるコンサルティングのあり方を作り上げていければと考えています。