ちょっと一息

50歳代からの転機とモチベーション

不安・寂しさ・葛藤から、前向きな取り組みへ

[2013/02/28]


50代1 みなさんがお勤めになっている会社・団体に「役職定年」はありますでしょうか? 50歳代半ばに役職を定年することがルール化されている、あるいは慣習化されているケースが多いのではないかと思われます。
 想像してみてください。もし、自分が役職を外されることになったら、果たしてどういう心境になるでしょうか? その時になってみないとわからないかもしれませんね。
 そこで、実際に同じような経験をされた50歳代の方にお話をうかがいました。その人は、40代前半から管理職に就いていましたが、50代半ばで会社を出ることになりました。そのことは何年も前から覚悟していたようですが、実際にその局面に突き当たると、自分でコントロールできないような感情に悩まされたそうです。
 転職前の不安、部下がいなくなった寂しさ、新しい環境での葛藤・・・。そうした気持ちがどのように整理されていったのか? ぜひご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 人材開発本社統括部 営業コンサルティンググループ
 専門部長
 海野 寿雄 さん


退職前は新天地で頑張ろうという気持ちはあったものの、やはり不安が先行

 私が勤めていた会社では、50代半ばになると大多数の社員が出向や転籍などの形で会社を出ることになっていました。ポストが限られていますので、そうしないと次の40歳代がポストに就けず、モチベーションが下がってしまうからです。
 もっとも、サポートなく放り出されるわけではありません。関連会社に行きたいか、それ以外の会社に行きたいかの希望を聞いてくれるとともに、本人の選択に合わせたサポートをしてくれます。
 私の場合は外部の会社に行くことを選択しました。ただ、前向きに捉えようとしましたが、どうしても不安が先行していました。
 50代2「自分は何ができるのだろうか?」
 40代前半から管理職を務めていたこともあって、実務面では少なからず自信を持っていましたが、それは、自分が慣れ親しんだ環境があったからです。いざ、まったく違う業種で経験のない仕事を、何の後ろ盾もない立場で、初めて会う人たちと一緒にする、と想像すると、どうしても不安が先に立ってしまうのです。
 また、それまで私は同期社員と競争するように年収地位にこだわっていて、それが仕事へのモチベーションにもなっていました。そのモチベーションがなくなることを想像すると、やはり不安な気持ちではいられなくなるのです。
 「何か新しいモチベーションを見つけられなかったら、面白みのない惰性だけのサラリーマン生活になってしまう」とも思ったものです。


新しい環境で気持ちの整理に戸惑う

 そうした中でも、日本マンパワーが私を受け入れてくれました。当初6カ月は出向の立場で、正社員ではありません。その6カ月で「この人はウチの会社には要らない」と言われる可能性も往々にしてありますので、けっして50代3「これで安泰」と思えるような心境ではありませんでした。
 しかもそれまでの職場と違って、部下はいませんし、指示を出すこともありません。役職に就いていた人はわかると思いますが、それはとてもしいものです。自分の役割がなくなってしまったような気がします。
 また、些細でつまらないこと、たとえば自席の場所や椅子の形などがグレードダウンしたことにさえ違和感を持ち、戸惑いました。今思えば本当に些細なことなのですが、当時はそんなことも自分の気持ちの大きな部分を占め、毎日が葛藤の日々でした。


CDA学習が腹落ちして前向きな気持ちに

 こうした葛藤が消え、気持ちの整理ができるようになったのは、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格の学習をするようになってからです。日本マンパワーでは全社員がCDAを取得するよう指導されていますので、最初は強いられた形で学習をスタートしましたが、学習を進めるにしたがって自分の気持ちが解きほぐされていくようでした。
 なかでも腹落ちしたのは、ナンシー・K・シュロスバーグの転機の理論と、ジョン・D・クルンボルツのプランド・ハプンスタンス・セオリーです。
 前者は、「転機は誰にでもあり、キャリア開発は転機の連続である」という考え方で、自分自身が転機をどのように捉え、どのように対処するかによって、その後のキャリアが変わってくるというものです。私もまさに転機でしたのでハッとしました。そして、自分の状況をマイナスと捉えるのではなく、プラスに捉えられるようになりました
 また後者は、「計画された偶然理論」と和訳されるもので、50代4「偶然の出来事は人のキャリアに大きな影響を及ぼし、かつ望ましいものである」という考え方です。つまり、予期しなかった出来事をチャンスと捉えるかピンチと捉えるかによって、人生やキャリアの質が変わってくるということです。
 この2つの理論をはじめ、CDAスキルの学習は本当に役に立ち、私を助けてくれました。これによって気持ちの整理がつき、新しい環境で前向きに取り組もうと思えるようになりました。どのような環境であっても、本人が腹落ちしているかどうかで未来が変わってくるということを再認識させられました。


50歳代の転機経験を活かして

 その後私は、日本マンパワーの正社員となりました。現在は3人でコンサルティングチームを組み、法人向けの研修支援などを行っています。チームメンバーの2人は私よりもさらに年上の方で、卓越したノウハウと豊富な経験があり、非常に勉強になっています。
 また、自分自身の転機の経験は、いつしか「ほかの人にも役立ててほしい」というモチベーションに変わっていきました。お客様企業の40歳代・50歳代の方にも、多少なりともお力添えできるのではないかと思います。

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