キャリアカウンセリングは人と会社をどう変える?
[2012/01/27]
キャリアカウンセリングは、一種の出会いのようなものかもしれません。一度も出会わなくても困ることはありませんが、すばらしい出会いとなったならば、人生が変わることもあります。
それほど大げさな出会いにならなかったとしても、ビジネスパーソンや会社にとって、現状をより良く変化させることができれば、それに越したことはありません。
今注目されているキャリアカウンセリングは、私たちにどのような変化をもたらすのでしょうか?
その効果をご確認いただくため、実際に社内キャリアカウンセラーを置いている会社の事例をいくつかご紹介いたします。なかには、「チーム全体の成果を上げた」という例や「研修とセットにすることでモチベーションアップに役立った」という例もあります。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアドック部 CDA企画課
専門課長
坂室 繁 さん
キャリアカウンセリングの効果
キャリアカウンセリングとは、個人にとって望ましい職業選択やキャリア開発を支援するプロセスのことを指します。ただ必ずしも、職業とのマッチングを行うだけではありません。社内にキャリアカウンセリング機能を持つ会社では、社員個々の悩み・不安を解消するきっかけづくりのほか、職務に対するモチベーションの向上、将来に向けてのキャリア開発のサポート、目標管理など人事評価システムとの連動などに活用されています。
こうした取り組みによって、結果的に「離職防止につながった」「成果向上につながった」「業務上のミスが少なくなった」「残業時間が減った」「職場の雰囲気がよくなった」などの効果を生み出しているケースも少なくありません。
社内でカウンセリングを受けた社員からは、たとえば次のような声があがっています。
●「自分の強みと弱みに気づき、今までもやもやとしていたものを、切り分けて考えられるようになりました」
●「いろいろな人の考え方、仕事の進め方、周りとの関わり方などを知ることができて、大きなヒントになりました」
●「自分の課題が整理されたので、やるべき第一歩も見つけやすくなりました」
働き方で悩んでいた女性の事例
さらに具体的な事例をご紹介しましょう。たとえばA社では、次のような例がありました。
ひとりの女性社員が、家族との時間や収入の面で悩み、「どのように働けばよいか」をカウンセラーに相談しました。「家族との時間をもっと長くしたいのだけれども、今の立場を変えると収入面で不安がある」という内容です。 この相談を受けて、カウンセラーは「一緒に課題を洗い出す」ことを提案しました。女性社員とカウンセラーは話をしながら、思いつくままカード1枚につきひとつの課題を書き出していきました。そうしてカードの内容をグルーピングしてみたら、大きく数種類に分けることができました。それを、今の状況と照らしながら優先順位をつけていったところ、「どのような働き方を選択すればいいか」について、本人の見通しが立ったそうです。
このように2人で話をすることによって、本人が自ら考え、自ら気づくことができるのは、キャリアカウンセリングの特徴だと言えます。カウンセラーが答えを出してしまったら、おそらく女性社員は同じ悩みを抱えたままになるでしょう。カウンセラーがサポート役に徹して、本人が納得できる答えを引き出そうとしたからこそ、女性社員は前向きに行動することが可能になったのだと思います。
キャリア開発研修とセットにした事例
また、集合研修の一環としてキャリアカウセリングを活用した事例もあります。
B社では、社員のキャリア開発を支援するための研修を行いました。自分の将来のキャリア開発に向けて目標や課題を明らかにした上で、行動を促進するような内容の研修です。
しかし、集合研修で高められたモチベーションというものは、何日か経つと目の前の業務に忙殺され、行動に至る前に低下してしまいがちです。そこでこの会社では、研修を受けた社員全員に対して、フォローアップのためのキャリアカウンセリングを義務づけました。研修後、キャリアカウンセラーとの個別面談を実施したのです。
それが非常に効果的で、研修で設定した自己目標に向けての取り組み度合いが高まりました。なかには、「やらなきゃいけないと10年以上思っていたことが、今回の研修・カウンセリングを経てようやく実現できました。ありがとうございました」と、カウンセラーの方に感謝の言葉を述べられた中堅社員の方もいたようです。その中堅社員は上司からの評価も上がり、重要な仕事を任されるようになりました。会社としても業務改善につながったと言います。
チーム全体の業務改善を実現した事例
社員個人だけでなく、「チーム全体の職場づくりに役立った」という事例もあります。
C社には、将来を期待されるマネジャー候補者を対象とした希望者向けの研修が用意されています。それに対してあるマネジャーが、「一緒にチーム改善に取り組んでいきたい」との思いから、自分の部下を参加させました。その時のチームの状況は、残業時間が長く、メンバーが疲弊していて、業務上のミスが目立っていたと言います。
研修の内容は、B社と同様にキャリア開発に関するテーマで、フォローアップのキャリアカウンセリングも実施しています。B社のケースと異なるのは、上司であるマネジャーが深く関わったことです。 マネジャーは、本人のキャリア開発やチームの状態について、研修を受けた部下と何度も話し合いの場を設けました。毎日のミーティングなどでは、他のメンバーも巻き込んでチーム改善を試みました。
その結果、メンバー間のコミュニケーションが格段によくなり、ミスが少なくなりました。成果物の品質も高まり、残業時間が減ったことによってコストダウンにもつながったと言います。
こうした変化は必ずしもキャリアカウンセリングのみによる効果ではありませんが、上司とカウンセラーが連携しているという点で注目されます。上司がキャリアカウンセリングを理解することで、「メンバーの個性を踏まえた仕事の振り方を意識するようになった」という方もいらっしゃいます。それによって、成果につながりやすいという好循環を生むこともあります。
ご参考にしていただければ幸いです。