ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 vol.75

「つながり」を意識する人が組織を変える

[2014/12/24]

ハピキャリ75-1

 「自分のスキルを高めて、自己成長していく」
 その姿勢は非常にすばらしいことだと思います。それが実現できれば、やりがいのある仕事に出合えるチャンスも増えるでしょうし、組織に対する貢献度も高まることと思われます。個人にとっても組織にとっても望ましいことだと言えるでしょう。
 でも、自分だけが成長すればいいのでしょうか? 所属する組織をサッカーチームに置きかえて考えてみてください。フォワードのAさんだけがハイパフォーマーで抜群の能力を持っているけれども、チームの他のメンバーはAさんについていけていない、むしろAさんのスタンドプレーにやる気が損なわれているとしたら、チームとしてのパフォーマンスはどうでしょうか。

 私たちは誰しも、周囲の人とのつながりの中で生きています。ですから極端に言えば、自分ががむしゃらにがんばることによって、誰かに、もしくは組織に不満足な結果をもたらすこともあるでしょう。非常に難しい問題です。
 こうしたことを、どのように考えればいいのでしょうか? 「組織変容」という視点で、日本マンパワーの水野みちさんにうかがいました。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部研究開発グループ
 専門部長
 水野 みち さん


自己中心的なハイパフォーマー、周りへの影響は?

 先ほどのサッカーチームの例を、企業内の人と人との関係に置き換えてみるとどうでしょう。たとえば、組織の中で、一部の成長意欲の高い人たちだけが知識やスキルを身につけて成長していき、その人たちにばかり仕事が集中していくという現象は起こりがちです。それは素晴らしいことですし、周囲は見習うべきかもしれません。しかし、そんなに単純ではありません。ハイパフォーマーがさまざまな挑戦の場を独占してしまうと、周りの人にはチャンスがなかなか回ってこなくなり、その差は開く一方です。チャンスが得られない社員はモチベーションを下げてしまい、時にチーム全体の指揮に影響を与えるほどの強いパワーを持つこともあります。せっかくハイパフォーマーががんばっているというのに、残念ながら「こうした職場の状態が望ましいか?」と問われれば、組織全体の視点では必ずしも望ましいとは言えない、ということになってしまいます。


ハピキャリ75-2

個人のパフォーマンスと組織としてのパフォーマンスのギャップ

 「この仕事は自分にしかできない」
 「私がいなければこの仕事は回らない」
 こうした会社に必要とされる存在、なくてはならない存在でいることは、自分の拠り所になりますし、安心感も生まれます。従業員全員がこのような気持ちでいられれば、それはすばらしいことです。

 しかし、従業員が自分のパフォーマンスばかりに意識が取られてしまっていると、先ほどのような全体への影響が見過ごされがちです。悪化すると、他の人にチャンスを譲らない、情報を共有しない、仕事を抱え込む・・・といった現象が起こります。また、景気などの影響で雇用への不安が生まれると、なおさら会社内での存在意義を高めようと、個人最適の視点に傾く可能性があります。これが組織にとって望ましい状態かというと、そうではありません。
 ハイパフォーマーがリーダー・マネジャーになった際には、特に意識の切り替えが必要です。個人としては優秀かもしれませんが、自分の影響が部下にどう及ぶのか、チームとしてのパフォーマンス、会社全体の効果性を上げるにはどうしたら良いか、という視点に切り替えることが重要になってきます。たとえば、自分の晴れ舞台や意思決定の機会を次のリーダー候補に譲り、育てるということが求められのです。
 組織はリーダーやマネジャーに対して、個人としての能力だけを期待しているわけではないのです。むしろ、チーム・部署としての成果を求めています


個人と環境

社会全体としての望ましい姿とは?

 これは、必ずしも個人の話だけではなく、企業レベル地域レベル、または国家レベルでも言えることです。たとえば、非常に高い利益を上げている企業があるとします。でも、その企業は従業員を使い捨てのように扱います。仕事に疲弊して元気のなくなった社員は解雇され、元気のある新しい社員が採用される・・・というような企業があったとしたら、どう思いますか?
 あるいは、格安店として大きな利益を上げている企業が、外注先企業に極めて安い予算を提示し、外注先企業は渋々受注するしかない状況に追い込まれ、結果従業員の労働環境は劣悪なものになる・・・という状態が続いているとしたら、どう思いますか?
 考え方にもよりますが、社会全体としてはけっして望ましい姿ではないのかもしれません。その歪みは回りまわって、社会問題環境問題、ひいては国際問題として現れる可能性があります。いわゆるブラック企業と言われる会社は、そこに就職しなければ害はないという話ではなく、同じ社会に属する以上、つながっている、関係し合っているのです。


ハピキャリ75-3

全体を眺められる高い目線を

 組織をいい方向に変容させていくためには、個人と個人とのつながり、個人と組織とのつながりを把握し、自分自身の行動のとり方を変えていけるということが大切なのだろうと思います。そういう視点を持っている人は、役職の有無を問わず、誰もが組織や社会の中でリーダーシップを発揮できるのではないかと思っています。別の表現で言えば、自己の状況だけを見る目線ではなく、会社全体や職場全体、社会全体を高い目線で見ることができる人が、組織を変えていくリーダーではないでしょうか。

 全体を眺めるという視点には、時間軸も関係してきます。現在だけでなく、過去とのつながり未来とのつながも大切になってきます。自分たちの組織にどのような歴史があり、それがどのような今につながっているのか。あるいは、自分たちは将来どこに行こうとしているのか、何をしようとしているのか。
 こうした目に見えない「つながり」を共有できる形で見える化し、よりよい相互的影響を与えられれば、個人と組織との間のギャップが解消し、共に望ましい方向に歩めるのではないかと思います。

 そして、お互いのつながりを意識する視点が社会全体にまで広がっていけば・・・。もしかすると、そんな社会が「成熟した社会」だと言えるのかもしれません。

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