ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 Vol.4

子どもたちの未来を開く「キャリアのモノサシづくり」

[2008/08/28]

 私のいとこに大学3年生の男の子がいます。今はちょうど就職活動のガイダンスが始まる時期。そこでこの間、「どんな職種をめざしているの?」って聞いたら、「そこそこ有名な会社で、そんなに厳しくないところ」ですって。それは職種じゃないですよねぇ。しかも、厳しくない仕事なんてほとんどないのに・・・。要するに、まだ何も考えていないって状況です。
 でも、改めて思い起こすと、私自身も職業をしっかりと見つめ始めたのは社会人になってから。高校や大学で自分のキャリアや職業について整理して考えられる機会があったらよかったのになあ、と思います。
 おばさん(いとこの母親)も嘆いていました。「自分の将来を左右するのだから、イメージだけで決めないで、もう少し真剣に考えてほしいわ」って。
 10代後半から20代前半の子どもを持つ方は、みなさん同じような心境ではないでしょうか? そこで今月は、楽しみながら職業適性などを自ら考えられるカードを、キャリアカウンセラー・植木千秋さんにご紹介いただきました。今春に発売されたばかりの『ハピキャリキット』。ご家庭や学校、職業支援施設などでお役立ていただけるはずです。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアドック部 次長
 CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
 植木 千秋 さん

 


− “一面的、表面的なイメージ”で答えを探す危うさ−
 「今の日本の学校教育では、学校にもよりますが、自分の適性や職業の特性について、体系立てて整理して考える機会があまりないようです。ところが一方で、就職・転職サイトなどには求人情報があふれています。
 こうした状況で、新卒の学生はどのように就職先を選んでいるのでしょうか?学生生活の中でも就職活動の追込みの限られた時間の中で、業界研究・企業研究はそれぞれ時間の範囲で一生懸命するけれど、Web情報をクリックしてアウトプットされた適性などの結果と、見聞きできた範囲の情報を何とか結びつけ、“一面的、表面的なイメージ”だけで選ぶことが少なくないのではないでしょうか。また、インターネットで調べさえすれば答が出るような錯覚を持つ学生も中にはいるようです。
 その結果、就職してから『私が抱いていたイメージと違う! こんなはずじゃなかった』というリアリティショックを受け、早期退職してしまう例が後を絶ちません。単にイメージが違うということだけではなく、自己分析の結果を、学校の勉強のように自分にとっての『正解』と捉えてしまって、自分の居場所の『正解』探しをしてしまう状況なのかもしれませんね。

 早期退職がよくないことだとは一概にはいえませんが、とてももったいない状況であると同時に、一見、自分で決めているようでいて、何かに答えを決めさせられているような、選択の危うさのようなものを感じます」

 

−自分と職業を照らすカード・ソート技法−
 「そこで、高校生や大学生が楽しみながら職業をじっくり考えるツールとして開発されたのが、『ハピキャリキット』です。
 『ハピキャリキット』は、60種類の職業カード(予備8枚)、14枚の分類軸カード(予備6枚)、分類シートおよび職業マップから構成されています。これは、キャリアカウンセリングなどで用いられる『カード・ソート技法』を用いたツールで、ゲーム感覚で自分の興味・関心の方向性を把握したり、広い視野で職業の特性を学習することができます。
 すでに、一部の学校や就業支援施設で利用されていますが、非常にご好評をいただいています。カード・ソートに取り組む前は『面倒くさい』『別にやりたくない』と否定的だった子どもたちも、終わってみると『面白かった』『初めて知ることが多かった』『どうしてこんなに自分のことがわかるの?』などの反応が多く見られています」

 

−『ハピキャリキット』の活用例−
 「『ハピキャリキット』の使い方はいろいろ応用することができますが、基本的な使い方をひとつご紹介しましょう。

1 まず、60種類の職業カードを取り出します。カードのオモテ面には、代表的な職業60種類のイラストが、1枚に1種類ずつ描かれています。

 

 

 

 

 

 

 

職業カード例(オモテ面)

 

2 分類シートを広げ、60種類の職業カードを“やってみたい職業”と“やってみたくない職業”のどちらかに、子ども自身の考えで振り分けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

3 “やってみたい職業”に振り分けたカードをウラ返します。そうすると、そこには【どんな仕事?】などの職業特性のほかに、【企業的】【慣習的】【現実的】【研究的】【芸術的】【社会的】という6つのタイプが記載されています。さらに、6タイプをより細分化した1〜12までの領域ナンバーも記載されています。


 

 

 

 

 

 

職業カード例(ウラ面)

 

4 分類シートを裏返して職業マップを広げます。そのマップには、上記3の6タイプ・12領域が配置されていますので、それに沿って、子どもが選んだ“やってみたい職業”のカードを並べます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上記4の作業でカードを並べると、本人の興味・関心の方向性がわかります。もちろん、カードの数が多いタイプ・領域が、興味・関心が強いと考えられます。
 人によっては、1〜3カ所にカードが集中する子もいれば、全体的にばらつく子もいますが、それ自体に“善し悪し”はありません。それよりも、『なぜ自分はこうしたタイプに興味・関心があるのか?』『興味・関心が高いタイプには、ほかにどのような職業があるのか?』などについて子どもたち自身で探ることが、自分の方向性や可能性を掘り下げることにつながります

 Webや携帯など、情報やコミュニケーションの質や速度が大きく変わってきていますが、実際にカードを眺めながら手を動かすことで、なかなか普段はできない「ちょっとじっくり考えてみよう」という機会ができるのです。
 また、この作業を大人と一緒に複数人で行えば、さらに効果的です。家族やクラスメイトと話しながら、他の人との考え方の違いや自分の捉え方の糸口をつかむことは、コミュニケーション力を高める練習にもなると思います。実際にすごく盛り上がりますよ。

 このような機会や練習を繰り返すことで、将来の自分の生き方や働き方について、1人ひとりの子供たちが心の中に自分なりのいわば『モノサシ』をつくっていき、自分のさまざまな選択についてしっかりと受け止めながら、自分なりのキャリアを歩んでいく準備につながるのではないかと思います。
 変化の激しい社会の中で、大人ですらどう自分のキャリアに向き合っていいのか悩みますよね。せめて、将来を担う子どもたちには時間をかけて、心の中にやわらかな“キャリアのモノサシ”をつくってあげられるように応援していきたいです」

−6つのホランド・タイプ−
 「なお、職業マップに記載された6タイプは、ホランドという著名な職業心理学者が開発した理論を用いています。それぞれのタイプの特徴を簡単に示すと、次のようになります。

  ●企業的:企画をしたり、チームを動かすことが好きなタイプ
  ●慣習的:決まった方法や規則にしたがって行動することが好きなタイプ
  ●現実的:機械や物を扱うことが好きなタイプ
  ●研究的:研究や調査をすることが好きなタイプ
  ●芸術的:音楽や美術、文芸などの活動が好きなタイプ
  ●社会的:人に接したり、人に尽くすことが好きなタイプ

 これら6タイプは職業マップで六角形になっていて、隣り合っているタイプは似ているタイプ、対角にあるタイプは正反対のタイプと言えます。こうしたホランド・タイプの解説、キットのその他の活用方法などは、別冊の『活用マニュアル』に記してありますので、そちらも合わせてご利用ください」

※次回は、『ハピキャリキット』のさらなる活用法についてご紹介いたします。

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●未来をひらく職業カード『ハピキャリキット』
 (実用新案登録第3140778号)
 キット本体 3,150円(税込)
●指導者用活用マニュアル
 1,000円(別売、税込)

お申込書はこちらから(PDFファイルが開きます)

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