ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 vol.60

女性の再就職で職域を拡げる、カウンセリングの新しい試み

[2013/08/29]


キャリア1再就職を望む女性の希望を聞くと、よく次のような答えが返ってきます。
 「事務職の正社員」
ただ、事務職正社員の求人倍率は低く、希望通りの再就職は非常に厳しいのが現状です。
 そこで注目されているのが福祉の仕事です。介護や保育に関わる求人数は多いですし、女性らしい細やかな気配りが求められる仕事です。
 しかし一方で、「仕事がキツそう」という偏見や「自分にできるかしら」という不安を抱く人が少なくありません。そのため埼玉県女性キャリアセンターは、キャリアカウンセリングを組み入れた【介護・保育の職場体験】をスタートしました。参加者は、「福祉の仕事に就きたい」「ここで働きたくなった」など前向きに考えるようになり、職域拡大に成功しつつあると言います。
 果たして、当センターではどのような方法で職場体験を行い、参加者はどのような感想を抱いているのでしょうか? 事業を受託している日本マンパワーの担当責任者とキャリアカウンセラーにお話をうかがいました。ご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 埼玉県女性キャリアセンター 統括責任者
(2004年CDA取得)
 牧野 朋子 さん

 株式会社日本マンパワー
 埼玉県女性キャリアセンター キャリアカウンセラー
 (2007年CDA取得)
 上地 圭衣子 さん



「事務ならできそう」の誤解イメージ

——再就職を希望される女性は、事務職の正社員を志望されるケースが多いと聞きました。キャリア2
上地 一概には言えませんが、経済的な事情がある方や正社員での就労経験がある方は、正社員志望のケースが多いですね。また、小さいお子様を持っている方は「できれば自宅からあまり遠くない職場」という要望も加わります。
牧野 動機は人それぞれですが、「事務ならできそうだから」という理由が多いですね。もっとも、事務職と言っても、その業務内容は会社によって異なりますので、ほとんどの場合、「事務ならできそう」というのはイメージでしかありません。逆に言えば、事務職以外の仕事に対して「できなさそう」というイメージを持っているようです。

——事務職正社員の求人倍率はどのくらいでしょうか?
上地 埼玉県内のハローワークですと0.2倍を切ります。非常に厳しい状況です。ですから、個々の事情をうかがった上で、「なぜ正社員、事務職なのか?」「希望条件の優先順位は?」「何のためにいつから働きたいのか?」などをよく聴き、職域や条件を広げることにより就職決定の可能性が高まるようにカウンセリングをしています。


介護・保育の職場体験で職域拡大

——職域拡大の施策にはどのようなものがありますか?
牧野 月曜日から土曜日まで毎日行っている個別の面談相談や各種セミナーのほかに、職場見学職場体験を行っています。いずれも今年度からスタートした事業ですが、職場見学は様々な業種を、職場体験は福祉の仕事を対象としています。特に、福祉の現場は人手不足が問題となっていることを踏まえ、資格の有無にかかわらず、介護や保育の仕事に関心のある方に実際の施設で業務体験をしてもらう【介護・保育の職場体験】を行っています。
 埼玉県には多くの福祉施設があり求人数も多いのですが、「仕事がキツそう」「自分には難しそう」などの理由で応募する人が少ない状況です。ただ、「キツそう」「難しそう」というのはイメージだけで、実際の現場を知っているわけではありません。ですから、1〜2日間の日程で職場を体験してもらうというわけです。
上地 福祉施設の仕事を目にする機会はなかなかありませんからね。

——職場体験はどのような流れで行われるのでしょうか?
上地 まず、キャリアカウンセリングの予約をしていただきます。カウンセリングでは「どのような施設で職場体験をしたいのか」などのご希望をうかがい、体験施設のマッチングを行います。職場体験に向けた心構えなどの事前オリエンテーションを行った上で、1〜2日間の職場体験を受けていただきます。体験終了後はアフターフォローとしてカウンセリングを受けていただき、その後の就職活動の進め方を話し合います。
牧野 1〜2日間ですので、参加者の方には気軽にご参加いただけているようです。介護施設であれば、利用者の方と食事をしたり、レクリエーションを一緒に楽しんだり。保育施設であれば、子どもたちと一緒にお散歩などもしています。また、働いているスタッフの方々とのコミュニケーションも、その後の職業選択や職場選択に非常に参考になっているようです。


「意外にできそう」「資格を取りたい」と好評

——参加された方の反応はいかがでしょうか?キャリア3
牧野 非常に好評です。「家事・育児の経験を活かせる仕事で、意外にできそう」「利用者の人に『ありがとう』と言ってもらって、泣いちゃいました」「ぜひ資格を取ろうと思います」などの感想が寄せられています。体験先に就職された方もいらっしゃいますよ。また、施設の方が参加者を気に入って、「ぜひウチに就職してほしい」とお願いされた例もあります。
上地 「百聞は一見にしかず」で、「キツそう」「難しそう」というイメージが払拭され、やりがいのある仕事だということを感じられる方が多いようです。

——ほかに福祉施設関係の取り組みはありますか?
牧野 9月18日(水)に【介護のお仕事フェアI】というイベントを行う予定です。6施設を招き、再就職を希望する女性を対象に施設説明をしていただくほか、施設担当者と自由にお話しいただける交流タイムや職場体験マッチングも行います。定員が40名に限られていますので、埼玉県在住で福祉のお仕事に少しでもご関心のある方は、ぜひご参加ください。


職場体験参加者の感想

【介護施設で体験された方】
●今回の職場体験で、自分がやりたい仕事は訪問介護だと確信しました。自分だけだと、あせったり、迷ったりしてしまったと思うのですが、カウンセラーの方と話をすることで、少し先のことも考えながら、自分の進む方向を決めることができました。(30歳代)
●利用者さんとの触れ合いと、スタッフさんからのいろいろな情報を聞いて、とても参考になりました。(40歳代)
●介護の仕事は、子供の成長に合わせて働く時間も増やしていけるし、勉強を続けることでキャリアアップも図れる仕事なので、頑張ろうと思っています。(40歳代)
●事務の仕事では正社員になることが難しかったので、これからは頑張ってステップアップできる仕事をと思い、福祉業界を目指すことにしました。(30歳代)
●しばらく子育てに専念していたので、仕事に対してブランクがあることを不安に思いましたが、この体験で職場という空間に触れて、新たに働きたいという意欲がわいてきました。(40歳代)

【保育施設で体験された方】キャリア4
●他の仕事をあまり経験したことがなかったので、今回の保育体験により、これからの仕事を考えていく上で職業選択の幅が広がりました。(40歳代)
●2つの施設を体験して、自分が保育士として働くことがイメージできました。子供が小さいので働く条件は限られてきますが、体験先で保育士として働いていたママのように、がんばって保育士の仕事がしたいと思いました。(30歳代)

埼玉県女性キャリアセンター
http://womancareer-saitama.jp/

 

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