共通の知識・価値観、そしてそれぞれの得意分野が相乗効果を生み出す
[2020/01/30]
「キャリアコンサルタント資格は何に活かせるのだろう?」
もしかすると、そんな疑問を抱いている方がいらっしゃるかもしれませんね。すぐに思い浮かぶのは、個人を対象とした1対1の相談対応でしょうか。でも、それだけではありません。人によって活かし方はさまざまで、新しい取り組みにチャレンジしているキャリアコンサルタントもいます。
2019年11月に「キャリアコンサルタントのチーム取り組み事例」と題した記事で、中小企業の人材育成をサポートしている3人のチーム活動をご紹介しました。本記事はそのうちの一人、藤田美輪さんが中心となって取り組んでいる事例をご紹介します。こうした取り組みは、今後ますます求められていくものと思われます。
チームによる活動の様子や成功のポイントなどを、ご本人からうかがいました。ぜひご一読ください。
夫の転勤を好機にフリーランスとして独立
私がCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格を目指したのは、総合人材サービス会社の営業開発部門に所属していた時です。コンサルタントとして、スタートアップ企業支援や各種セミナーの開催、企業間ネットワークの構築、大学でのキャリア形成ゼミナール、企業とのインターンシップ企画などを行っていました。そうした中で、クライアント企業の人材育成には従業員の相談対応が欠かせないと感じ、体系的な理論を学ぶ必要があると思ったのです。
「キャリアカウンセラー養成講座」(現在の「キャリアコンサルタント養成講座」の前身)を受講したのは2013年、スクーリングは東京クラスでした。ところが、試験を迎える前に、夫の北海道転勤が決まりました。以前の私であれば単身赴任を考えたでしょうが、養成講座で「偶然の出来事は望ましいものであり、チャンスや好機に変えることができる」というハップンスタンス・ラーニング・セオリーを学んでいたため、まさにチャレンジする好機と捉えることができました。そこで思い切って退職し、フリーランスとして独立する決心をしました。
札幌でフリーランスになってからは、まず、前職のつながりから採用代行の仕事を請け負いました。また、自分でPRチラシを作って、地元の商工会議所などに「こういう仕事ができます」「企業にこれが足りないのではありませんか」などと、企業研修やキャリアコンサルティングの提案をしました。それによって、セミナー講師などの仕事が少しずつ入るようになりました。セミナーの主なテーマは、「生産性UP」「採用力UP」「リーダーシップ」「女性活躍」などです。
セミナー参加企業からの相談をきっかけに
そうしたセミナーでは、終了後に参加者と名刺交換をすることがよくあります。ある時、そのお一人から「事業は成長しているが、さまざまな取り組みが追いつかなくて悩んでいる」というご相談がありました。FRSコーポレーション株式会社という会社の取締役の方でした。同社は、自然環境調査、環境アセスメント、自然環境保全・復元などの環境ビジネスを手掛けている会社です。
後日、改めてFRSコーポレーション様を訪問してお話をうかがうと、設立10周年を迎え、事業が急激に成長して企業規模が拡大している一方で、人材育成や人事評価体制の整備が遅れるなど、成長の端境期における課題が多く見受けられました。退職希望者も出ているとのことでした。
お話を伺い、まず頭に浮かんだのが、キャリアコンサルティングの導入です。当時は、定期的なキャリアコンサルティング制度を導入・実施した中小企業に助成金が適用されていましたので、それも含めてご提案しました。ところが、FRSコーポレーション様の顧問社会保険労務士の方は助成金に詳しい方ではありませんでした。
そこで、キャリアコンサルタント/CDAの仲間にアドバイスを求めました。
3人によるチームサポートが本格始動
3人の得意分野を発揮、相乗効果を生む
3人とは、私のほかに、先ほどお話しした社労士の原田太さんと、CDA受験時代からの勉強仲間である相馬ひとみさんです。FRSコーポレーション様へのサポートの軸は、従業員全員のキャリコンサルティングと、おおよそ2日間の研修を年3回です。私はキャリアコンサルティングと研修講師を担当し、原田さんは人事評価制度の刷新と労務関連の講師、相馬さんは研修のファシリテーションを担当しています。
私1人ではなく、3人チームの体制は、さまざまな面で相乗効果を生んでいます。
まず、各々の得意分野を適所に発揮することができます。原田さんは人事・労務に非常に詳しいので、制度設計をお任せすることできます。相馬さんはファシリテーション力がすばらしく、研修では温かい雰囲気をつくり、従業員の心を開くことができます。
サポートの計画や改善においても、「こういうことを考えているのだけど」と相談すると、「じゃあ、スーパーが唱えた人生における役割の理論を取り入れたらどうだろうか」「エリスの“ねばならぬ信念”を説明したらどうだろうか」などと、即座に多くのアイデアが出され、迅速な対策を実現することができています。
チーム活動が成功しているポイント
FRSコーポレーション様からの評価も高く、私たち外部のプロフェッショナルが関わることで安心感を得られ、成長を感じられているようです。企業内でのキャリアコンサルティングはフィードバックがとても大切です。私たちの場合、フィードバックは個人情報を厳守しながら、課題や目指すべき方向性を文書化して報告していますので、効果が見えやすいのかもしれません。
実際、社員の方にはいい意味で大きな変化が見られます。コンサルティングをするたびに、その成長が手に取るようにわかるのです。特に、皆さんの視野がすごく広がりました。たとえば、従来は自分の実務だけを考えて働いていた人が、会社全体を考えるようになりました。また、営業マインドが身についたり、チームを超えての相互協力をしたりするようにもなりました。おそらく一人ひとりの意識が大きく変わったからだと思います。私たちとの信頼関係も次第に厚くなり、「次回の研修はこういうテーマでやってほしい」などと、参加者からリクエストが飛び出すほどになりました。
このようにチーム活動が成功しているポイントは、3人ともキャリアコンサルタント/CDAであるという共通した知識とスキルがあり、共通の価値観を持っているからだと思います。しかも、それぞれに行動力と突破力が備わっています。私は2019年4月に九州に転居しましたので、札幌には頻繁に行くことはできませんが、原田さんと相馬さんの行動力にはいつも助けられています。お二人とも動きが速く、一歩踏み出した提案などをしてくれています。おかげで仕事の幅も広がりつつあります。
中小企業は成長できる伸びしろが大きい
現在、FRSコーポレーション様のほかにも、それぞれのネットワークや経験を活かして、何社かのサポートをチームで行っています。いずれも中小企業です。中小企業は大企業と違い、人材育成や人事評価の体制が未整備の会社が多いのですが、その半面、非常に吸収力があり、成長できる伸びしろがたくさんあります。
そのスタートとなる施策は、やはりキャリアコンサルティングが最も有効だと思います。年に1〜2回実施するだけでも、社員の方がご自身の仕事を振り返って整理できるからです。また、誰にも「話したい」「聴いてほしい」「自分のことをわかってもらいたい」などの欲求があります。ですから、それを受け止めることで職場の雰囲気が変わり、生産性のアップにまでつながることは少なくありません。
私たちは、今後も中小企業を支援していくために、チームとして活動する法人を設立し、さらにフィールドを広げていきます。キャリアコンサルタントの活動の場はますます広がっています。もし、この記事を読んだ人の中に「活動に興味がある」「さらに詳細を聞きたい」というCDAの方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。