ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 vol.40

仕事を通して学び、学びを仕事に活かす

[2020/07/02]

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 働き方が多様化する中、ますますその重要性が注目されるキャリアコンサルタント。キャリアコンサルタント自身の働き方も多様で、資格活用の仕方もさまざまです。
 本シリーズの前回記事では、育児休暇中に『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の「キャリアコンサルタント養成講座」の前身)の受講を決めた新保友恵さんのケースをご紹介しました。この記事はその続編となります。

 新卒で出版社に就職した新保さんは、2回の転職後に結婚退職。研修講師、イベント企画、カフェ経営などの自営業を経て、ITサービス会社の営業マネジャーとなります。そこで既卒未就職者と出会い、「彼らのような人が大学を卒業する前に、私が何かできることはないか」と就職活動支援に関心を抱きます。そして、『キャリアカウンセラー養成講座』を受講しながら、大学のキャリア支援室でキャリアカウンセラーとして働くようになりました。
 ただ、育児のことを考慮して時短勤務にしたはずが、いつしか「もっと働きたい」と思うようになりました。そして、本当に複数の大学の仕事をかけもちすることになります。
 今回はその足跡をご紹介します。こういう働き方もあるんだなと参考になるのではないでしょうか。


●今回お話を聞いたのは・・・
 名古屋産業大学 現代ビジネス学部 特任講師
 和光大学 非常勤講師
 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
 新保 友恵 さん


キャリアカウンセラーは相談者に育てられる

 S大学でのキャリアカウンセラーの仕事は、週4日、11:00〜16:30の勤務でした。育児中でもあり、当初はその時短勤務がありがたかったのですが、仕事に慣れ、娘の保育園での生活も落ち着いてくると「もっと働きたい」と思うようになりました。そして、フリーランスとして別の仕事も受託するようになりました。
 たとえば、埼玉県K市の職業支援相談員就職支援講座講師、東京都外郭団体のインターンシップのコーディネーターを務めました。また、自分のキャリアカウンセリング技術を向上させるために、自治体などのSNS相談員のお仕事もしました。相談内容は、子どもを対象とする虐待相談、学校・家族関係、自殺・生きづらさ、女性を対象とする子育て、働き方などさまざまです。みなさんからうかがうお話は、私の狭い視野を広げてくれました。CDAの面接試験対策でのロールプレイングでも同じでしたが、キャリアカウンセラーは相談者に育てられる面が大きいように思います。


遠隔地を含め、複数の大学をかけもち

 S大学で働いてから1年半後からは、別の大学でも働くようになりました。時系列で言うと、2016年からM大学の非常勤講師として「SPI対策」と「キャリア開発」を担当しました。2017年4月からは、和光大学の非常勤講師、K女子大学の非常勤講師、G女子大学のキャリアカウンセラー、長野県にある短期大学の非常勤講師としても働くことになりました。そうなるとさすがに時間のやりくりが難しくなり、派遣契約だったS大学のお仕事を終了しました。
 また、同時期から2年間、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科でも学びました。大学院に入学したきっかけは、JCDAの会合で隣に座っている人と名刺交換をしたら、その人の名刺に「立教大学大学院」と書いてあったことです。調べてみると、担当の先生も素敵で、学問内容も、社会の仕組みに対して私が持つ課題意識について研究することができそうだと、入学を決めました。社会デザイン学は「人のために何かをしたい」「社会を良くしたい」という人が集まっていて、キャリアカウンセラー養成講座の時と同じように、私にとって居心地の良い場所でした。実際、同研究科で学んでいるCDAの人も何人かいらっしゃいました。

 仕事は、その後もいろいろ考えながら変えていきました。留学生が多い専門学校の非常勤講師、高校でのキャリア支援講座の講師、T大学グループのキャリアカウンセラー、国立大のキャリア支援センターで学修プログラムの企画・運営なども務めました。
 さらに、企業からの業務受託で、新卒採用の面接官グループディスカッションのアセッサー(評価者)などの仕事もしました。企業の採用現場の経験を学生に伝えられるようにするためです。ウェブ面接がどのように行われているかを勉強するため、ウェブ面接官の業務を請け負ったこともあります。


今年4月からは名古屋へ半単身赴任

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 しかし、非常勤講師やキャリアカウンセラーの仕事は、長期にわたって学生と関係性を保つのに難しい面があります。もちろん、一期一会のような関係であっても、本人たちに新しい気づきや前向きな変化をもたらすことはできます。でも私は、ゼミなどで長く関係性を築けている先生方をうらやましく思えて、私も学生の成長の場にしっかりと立ち会えるような専任教員を志望するようになりました。
 そこで、インターネットで求人情報を探して応募し、名古屋産業大学に採用していただきました。2020年4月から現代ビジネス学部 特任講師として働いています。念願のゼミも受け持つことができました。ゼミ生は19名。専門領域は社会デザイン学です。現代社会の諸問題に関する改善策と実践案について考えることを通して、ゼミ生自身の視野を広げ、企画力や行動力の習得と同時に、職場や地域社会で多様な人々と協同するために必要なコミュニケーション力を磨くことを目指します。
 ゼミ以外では、前期は「人的資源管理」「キャリアデザイン」「ビジネスコミュニケーション」の授業を担当、後期は「キャリアコンサルティング」の授業も行います。キャンパスが愛知県にあるので、現在のところは週の半分は単身赴任の状態ですが、夫と娘が温かく見守って協力してくれているので実現できています。2人には本当に感謝しています。
 現在、大学関係のお仕事は、この名古屋産業大学と、先ほどお話しした非常勤先の和光大学の2校に絞っています。和光大学では、「自己開発論」「キャリア研究特論」「キャリア形成論」を受け持っています。両校とも素直な学生が多く、やりがいを感じています。特に、数年間、講座を継続している和光大学では、以前の受講生が社会人としてゲストスピーカー役を担ってくれて、成長した姿を見せてくれるなど、この仕事だからこその喜びを感じられます。


仕事探しはインターネットの求人情報

 こうした私の職務経歴について、CDAの仲間から「どうやって仕事を探したの?」と尋ねられることがあります。
 けっして特殊なコネクションを使っているわけではありません。基本的に、インターネットで一般公募されている求人情報に応募しています。各校ごとに決められた採用試験も受けています。その意味において、立場は就活学生と同じです。履歴書などの書類を準備し、模擬授業面接に臨んでいます。模擬授業というのは、10人ほどの先生方の前で授業をするという試験です。和光大学でも名古屋産業大学でもやりました。これは毎回すごく緊張します。でも、自分が緊張するからこそ、学生が緊張する気持ちも共感できるのです。おかげで、「私もたいへんだったよ」と、学生たちと同じ目線に立って話すことができています。
 私にとってのレアケースとしては、CDAの母体組織である日本キャリア開発協会(JCDA)から送られてきたメールの情報で応募して採用された大学が1校。ほかに、CDAの勉強会でたまたま同席した方が派遣会社を経営されていて、ご紹介いただいた大学が1校あります。こうした情報を入手できるのも、CDAのつながりによって生まれるメリットだと思います。
 また、「育児をしながらも上手に働いているなあ」と思われることもあるようです。それについて、働く女性から相談を受けたことも十数回あります。みなさん、対話をする中で何かに気づき、納得されていたようです。
 ただ、生き方や働き方は人それぞれで、ご自身の中に答えがあるのだと思います。私は仕事も勉強も好きで、それに取り組むことを家族が許してくれているからできています。今、お話をしていて、改めてそう実感しています。

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★新保さんが講師を務める大学では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大学の前期カリキュラムがすべて遠隔授業になったそうです。そうした中でどのように働き、何を考えているのでしょうか。大学生への想い、CDAへの想いなどとあわせて、次回最終話でご紹介いたします。
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