キャリアへの固執がマイナスになることも
[2012/04/27]
「自分らしく働きたい」
「自分の目標を叶えたい」
こうした前向きな思いは、自己のキャリア開発に欠かせない原動力となります。ただ、その思いが行き過ぎてしまうと、むしろ自分をマイナス成長に導いてしまうこともあるようです。
たとえば、あなたと同じチームに次のような人がいたらどうでしょうか?
「自分のキャリア形成に関係のない仕事はやりたくない」
「ほかの人の仕事は、私のキャリアと無関係なので興味がない」
嫌ですよね。一緒に仕事をするのが苦痛になってしまうかもしれません。もちろん、これは極端な例ですが、近い状況が生まれている職場もあると聞きます。
こうした状況は「キャリア開発に対する誤解」に原因があるようです。その点について、キャリア開発支援に詳しい日本マンパワー・和泉浩宣さんにうかがいました。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアドック部 CDA企画課
プロデューサー
和泉 浩宣 さん
コミュニケーション不足・タコ壺化の原因
「メンバー同士のコミュニケーションが不足していて、仕事に支障をきたすことがある」
「仕事がタコ壺化していて、部門をまたいでの調整がどうもうまくいかない」
このような嘆きを企業の人事担当者からうかがうことがあります。その原因には、コミュニケーション・ツールをはじめとする社会的背景の変化が挙げられますが、同時に、個人のキャリア開発に対する誤解に起因する面も大きいようです。そうした状況は、おそらく次のような意識から生まれているのでしょう。
「関心のある仕事や自分にメリットをもたらす仕事には一生懸命取り組むけれども、関心のない仕事やメリットのない仕事はあまりやりたくない」
このような考え方は、キャリア開発の考え方に合うものではありません。非常に誤解した解釈で、個人主義と言わざるを得ません。
成果を上げながらキャリアを考える
キャリア開発には「Will−Can−Must」という概念があります。Willはやりたいこと、Canはできること、Mustはやるべきことを意味し、各領域の交わる部分を大きくしていくことが、自律的なキャリア開発につながると言われています。
その点で、先に挙げた例を考えるとどうでしょうか? Willばかりが優先されていて、Mustがないがしろにされています。 組織に属して働く場合、「与えられた環境の中で成果を出す」ことが求められます。その現実から目を逸らすことはできません。逸らしてしまえば、「自分の損得しか考えない個人主義」と捉えられても仕方がないでしょう。
「個人のキャリア開発」と「組織の成果」。
両者は矛盾するようではありますが、組織の成果を上げながら自己のキャリアを考えてコントロールできる人や工夫できる人こそ、自律した人材として評価されるのだと思います。転職の場合であれば、自分のキャリアばかりを優先して組織に貢献してこなかった人は、高い評価を得られにくいはずです。
個人のキャリア開発と組織の成果のコントロールについて腑に落ちない方は、キャリアカウンセラーと話をする機会を設けてはいかがでしょうか。何らかのヒントを得られるでしょう。
視野を広げて自分の底上げを
また、以前に思い描いた自分のキャリアにこだわって、将来の自分の可能性を狭めてしまうことも、非常にもったいないことだと思います。自分の可能性を広げるためには、視野を広げる努力を継続的に行っていくことが大切です。視野が狭いと、ある組織内では通用したとしても、社会的に通用しにくいからです。
「できれば視野を広げていきたい」という人は、学習会やワークショップに参加してみてはいかがでしょうか?
私は仕事柄、自分のアンテナ(興味・関心)に引っかかるキーワードで開催されているセミナーに、積極的に参加するよう心掛けています。そうすると、そこで出会った方との会話で発見することがあったり、新しい興味が湧いてきたり、刺激になったりすることがたくさんあります。それをきっかけにさらに勉強することが、自分のキャリア開発につながっていくと考えています。
みなさんもぜひ、自分のアンテナに引っかかるものを探してみてください。勇気を出して参加してみると、思いがけず何かを得られるかもしれません。そうした社外のネットワークが、将来の自分を助けるきっかけにつながると思います。