ちょっと一息

資格取得を成功させる学習のコツ vol.3

論述問題対策に効く「文章の書き方」

[2007/12/20]

 論述形式の問題が出題される資格試験では、知識や理論ばかりでなく、文章力も問われます。でも、試験範囲を勉強するだけでもたいへんなのに、文章の書き方まで身につけるのは楽ではありません。というより、非常に難しい課題だと思います。そこで、いつも私の原稿に大赤字を入れてくれる上司に、「書き方のコツ」について聞いてみました。
 「文章を上手に書くにはどのようにすればいいでしょうか?」
 すると上司は、次のように言い放ちました。
 「キミ、文章力ってセンスだと勘違いしていませんか? 実用的な文章にセンスはあまり関係ありませんよ。必要なのは論理的な視点です」
 上司によると、短期間で手軽に文章力を上げるコツは、たった5点だとのことです。以下に、私が教えてもらった秘訣を、上司の言葉を借りてご紹介します。



◆ 資格試験で求められる文章力とは ◆
 「『文章力を上げる』と一口に言っても、『どのような文章を書きたいか』によって異なります。目的によって『いい文章』の基準が違うからです。小説には小説向けの『いい文章』があり、広告には広告向けの『いい文章』があるんです。質問の場合、資格試験の論述問題対策ですよね。その際の目指すべき文章は、『キーワードが盛り込まれ、論旨が正しく、理解しやすい文章』だと言えます。だったら、文章力を上げるコツは5つです。(1)メモ、(2)構成、(3)因果、(4)短文、(5)順序。この5点に気をつけるだけで、自分の文章力を改善することができると思いますよ」



◆ (1) メモなき文章に論旨はない ◆
 「では、順に説明していきましょう。まず、メモについてですが、プロのライターは、ほとんどの人が文章を書く前にメモをとっています。メモをとらずに書き始める人はごく稀です。なぜなら、メモをとることによって、文章の粗筋を論理的にできるからです。
 それに、書きたいことを忘れない。この『忘れない』というのは非常に大切で、メモをとらない人は往々にして書いているうちに論理が混乱し、最初に思い描いていた結論と違う結論を書いてしまうケースがあります。しかし、資格試験でその失敗をしてしまうと、満足な点数は得られません。ですから、必ずメモをとるようにすべきです。『メモなき文章に論旨はない』と頭に叩きこんで、気をつけてください。もちろん、出題に沿ったキーワードも忘れずにね。
 また、極論を言えば、文章というのは『メモをつなぐだけ』で書けます。上手な文章を書こうと思うから難しいのです。『メモをつなぐだけ』だと思えば、楽な気持ちで書けるでしょ。そうすれば、解答時間の短縮にもつながります」



◆ (2) 幹を残して枝葉を切る ◆

 「メモを書いたら、今度はそれをどのような構成で書くか、粗筋を練る必要があります。これは長文になると非常に難しい作業ですが、資格試験で求められる文字量程度であれば、そんなに難しくないでしょう。
 ただ、ひとつだけ注意点があります。それは、『幹を残して枝葉を切る』ことです。幹とは話の本筋のこと。つまり、余分な情報(枝葉)を省いて、本筋(幹)をわかりやすくすることが大切なのです。
 では、どのような情報が余分なのか? もちろん、話の本筋に関係の薄い情報です。2パターンの文章構成を例に説明しましょう。




 これら2パターンにおいて省くべきものは、樹形図の枝葉に近い情報です。パターン1であれば2つの「補足」、パターン2であれば「詳細」と「補足」です。その情報がどれに当たるかを把握するためにも、メモは必須作業となりますね」



◆ (3) 因果関係を明確にして並び替える ◆
 「文章構成について、もうひとつ留意点があります。それは、『因果関係を明確にして、関係の深い情報を近くに書く』ということです。たとえば、先程説明したパターン1のケースであれば、文章として書く順序は(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)順であるべきです。




 けっして、(1)(2)(3)(5)(4)(6)(7)などの順に書くべきではありません。ただ実際には、こうした間違いは少なくありません。なぜなら、(4)例示が、『(3)課題の例示でもあり、(5)解決策の例示でもある』など、複数の情報に関連するケースがあるからです。そうした場合は、より関係が深い方に近づけて書くのが原則です。ただし、(4)例示の文章が長くなってしまう場合は、次のように構成を見直す方法もあります。



 この場合の書く順序は、(1)(2)(3)(5)(6)(4)(7)となります。こうした因果関係を意識することこそ、論旨の通った文章を書くコツだと言えるんですよ」



◆ (4) 修飾語を省いて短文にしよう ◆
 「理解しやすい文章を書くためには、一文一文にも気を遣う必要があります。よく見受けられる『理解しにくい文章』の代表格は、一文が長い文章です。

<長文例>
 ダックスフンドの一種である、それよりもひと周り小型のミニチュアダックスはドイツ原産国で、非常に人になつきやすく愛嬌があることから、近年では、たくさんある犬の種類の中でも最も人気がある種類の犬のひとつだと言われている。

 例文の内容は確かに合っているかもしれません。しかし、理解しやすいとは言えません。理解しやすい文を書くためには、
  ● 無駄な修飾語を省く
  ● 文を分ける

という2つの方法によって、一文を短くすることが大切です。そうすれば、『主語と述語が対応していない』などのミスも防止できます。たとえば例文は次のように訂正することができます。


<短文例>
 ミニチュアダックスの原産国はドイツ。ダックスフンドの一種で、ひと周り小型である。人になつきやすく愛嬌があることから、最も人気の高い犬種だと言われている。


 修飾語を省くかどうかの判断は、たった1点だけ。『必要か、不要か』です。『その修飾語がなければ文の意図が伝わらない』という場合を除いて、省く方向で考えるといいですね」



◆ (5) 文節の順序も並び替える ◆

 「最後に、文節の順序について説明します。文章構成だけでなく、一文の中でも並び替えは大切なのです。試しに、次の単語を使って文章を作ってみてください。

 当社 9時 17時 勤務時間

 一般的に考えられる回答例は、次の3通りですね。
  1. 当社では、9時から17時までが勤務時間だ。
  2. 当社の勤務時間は9時から17時までである。
  3. 9時から17時までが当社の勤務時間である。

 どれも間違いではありませんが、2.が最も理解しやすいでしょう。このように、文節の順序によって『わかりやすさの度合い』が変わってきます。情報量が多くなれば、『わかりやすさ度』の差はさらに顕著になります。先程と同じように、次の単語を使って文を作ってみてください。


 当社 9時 17時 勤務時間 実働7時間 サービス残業 多い

<回答例>
  4. 当社では9時から17時までが勤務時間で、実働7時間だと決められているにもかかわらず、サービス残業は多い。
  5. 当社の勤務時間は実働7時間で、定刻は9時から17時までである。その一方で、サービス残業が多い。
  6. 9時から17時までが勤務時間の当社では、実働7時間だが、サービス残業は多い。

 情報量が多くなると、文節の順序が多様になるだけでなく、余計な文節も増えてしまいます。ですから、シンプルで無駄のない文章を書くよう、いっそう気をつける必要があります」

<シンプル文のモデル>
  7. 当社の勤務時間は9時から17時まで。実働7時間である。ただ、サービス残業は多い。————————————————————————————————————————

 以上、私が上司から指導されたポイントです。ご参考にしてください。

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