ちょっと一息

賢い情報整理のポイント Vol.2

会議や打ち合わせで上手にメモをとる方法

[2009/02/25]

 先月号の『キャリアの達人』では、"メモの紛失・見忘れで失敗しないための防止策"についてご紹介しました。今月はその第2弾、"上手にメモをとる方法"をご紹介します。この方法は、"メモのとり方が未熟なせいで失敗する"ことを解消する策でもあります。

 と言いつつ、実は私も「メモって難しいなあ」と思っている一人です。なぜって、ほかの人の話を聞いているとメモ書きがおろそかになってしまい、逆に、必死にメモをとっていると話を聞くのがおろそかになってしまうからです。これらを両立する方法ってあるのかしら?
 取材記者としても活躍する水谷一生さんによると、「必要な情報を選んで速く書けばいいだけ」だと言います。なんだか簡単なような、難しいような・・・。今回はその秘訣について伺いました。

 

●アドバイスしてくださったのは・・・
 有限会社エディット
 代表取締役
 水谷 一生 さん

 

上手にメモをとるポイントは2つ

 メモを上手にとる方法を説明する前に、大事な前提がひとつあります。それは、メモをとる目的です。言い換えれば、「メモをとった後、そのメモをどのように利用するのか?」ということです。メモを元にして議事録を書くのか、あるいは他部署のスタッフに言い伝えるのか、ホームページの原稿を書くのか、はたまた企画立案のネタとするのか? メモの目的によって書くべき内容や書き方が変わってきますので、事前にしっかりと把握しておきましょう
 さらに言えば、「その時の自分にとって、どのようなメモがベストか?」という意識も大切です。忘れないためのメモなのか、正確さを要するメモなのか、ヒントを広げるためのメモなのか、保存するためのメモなのか? 1回の会議や打ち合わせでも、これらが入り混じった形で情報が飛び交いますので注意してください。

 こうした前提を踏まえた上で一般的なメモ術を挙げるなら、大切なポイントは2つです。ます1点目が、情報の取捨と補足。2点目が、書くスピードです。この2つを高めるコツさえつかめれば、メモが苦手な人も自信がつくのではないでしょうか。

必要な情報を意味づけして書く

 人は一般的に、話すスピードよりも書くスピードの方が遅いので、たとえば会議や打ち合わせにおける発言すべてをメモすることはできません。ですから、必要な情報と必要でない情報を区別し、必要な情報だけをメモするよう心掛けることが大切になります。
 では、必要か必要でないかをどのように見極めればよいでしょうか? それは、「会議や打ち合わせの内容について予備知識を持っている」「業務の勘所を把握している」など、仕事の遂行力に付随する能力が求められます。そういった意味では、"メモ力"というよりも"仕事力"が重要になるのかもしれません。
 ただ、次のことに留意すれば、仕事力が同等でもメモ力を上げることは可能です。

●事前準備をしておく
 会議や打ち合わせが始まる前にレジュメや資料などに一通り目を通し、全体像をつかんでおきます。そうすれば、情報の要・不要の判断が容易になります。また、会議の議題や日付、出席者、場所など、基本的な記録事項は事前にメモしておきましょう。

●ひと呼吸置く
 ほかの人が話し始めたらすぐにメモをとり始める行為はお勧めできません。話をある程度聞いてポイントをつかんだ上で書き始める方が、的確な内容をメモできます。

 もっとも、会議や打ち合わせにおいては、発言内容をメモするだけでは情報不足だと言えます。その発言がどのような意味づけであるかが重要だからです。

 この場合の意味づけとは、たとえばそれが決定事項なのか未定事項なのか、重要事項なのか参考事項なのか、実行すべきなのか保留すべきなのか、などのことを指します。
 こうした意味づけは忘れたり勘違いしたりすることが多いだけに、しっかりと補足記入しておきましょう。私の場合、たとえば次のような記号・略語を使って付記しています。

●意味づけの記号・略語例

決定事項 未定事項 担当者
go 実行する ペンディング ex
必須 重要 やや重要 × 不要または不可

 また、メモ用紙のどこに何を書くかということも大切です。特に注意すべきことは、単に時系列でメモを書き連ねていくのではなく、内容ごとに書き込む位置を区別していくことです。
 たとえば、A→B→C→Dの順に発言がなされたとします。その場合、メモの上から下に向かってA→B→C→Dと書くべきではないのです。AさんとDさんの発言内容が似ていたら、メモの上から下に向かってA→D→B→Cとなるべきなのです。
 そうすると、おそらく書き終えたメモは上下左右入り乱れることになるでしょう。でも、それでいいのです。その方が、後でメモを見直した時に情報が整理されているからです。

書くスピードを速める工夫

 2点目のポイントとなる"書くスピード"とは、「ペンを動かす速度を速める」という意味ではありません。「文字量当たりの情報密度を高くする」という意味です。また、書くスピードを速める目的は、「たくさん書く」ことではなく、「短時間に書く」ことです。なぜなら、文字量当たりの情報密度を高くして記入時間を節約できれば、会議や打ち合わせの最優先事項である「聞いたり考えたりすること」に時間を割けるからです。

 たとえば、E君とFさんがそれぞれ10文字のメモをとったとします。しかし、E君の10文字には情報がたくさん盛り込まれていて、Fさんの10文字にはEさんの半分くらいの情報しか盛り込まれていません。
 この場合、FさんがE君と同程度の情報をメモするには、E君の2倍の時間を要します。そうすると当然、E君は人の話に耳を傾ける時間が多くなり、Eさんは人の話に耳を傾ける時間が少なくなるという理屈です。

●記号・略語の活用
 文字量当たりの情報密度を高めるコツは簡単です。すでに「意味づけ」の話で述べたことと同様、自分なりの記号や略語を使って文字を簡略化すればいいだけです。たとえば、次のような記号・略語を使ってはいかがでしょうか?

  だから、ゆえに   なぜなら
  さらに、また   その後、次に
  より重要、より大きい   ここで議題変更

●頻度の高い単語はルール化
 また、仕事の特性上よく会話に出てくる単語を、アルファベットやカタカナに略しておけば、大幅に書くスピードを高めることができます。特に、名詞はメモをとる頻度が高いので、自分なりのルールを決めておくといいでしょう。

販売価格 売ネ 調達価格 チネ
自動車 部品
市場 〜〜にする 〜〜化
上げる、上がる 下げる、下がる

 これらを駆使することができれば、自分だけの速記術が身につきます。たとえば次のような内容も、楽にメモがとれるのです。お試しください。

  <会議の内容>   販売価格を10%上げ、部品の調達価格を10%下げることを決定する。
   さらに、自動車市場を広げることを実行する。
  <メモへの記載>
   決 売ネ10%↑ 部チネ10%↓ +Jシ広化go

●簡略化すべきでないこと
 ただし、何から何まで簡略化してスピードアップすればいいというものではありません。正確な情報を要する場合は、時間をかけてもいいですから後で読み間違えないよう丁寧に書くことが望まれます。特に、数字や固有名詞、連絡先などには十分に留意してください。

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