ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用

40歳代のモチベーションをメンテナンスするために

[2015/03/30]

 「やりがいを持って働けている」30.0%
 「最近、あきらめ感を感じることが多い」48.5%
 これは、企業で働く40歳代の一般社員のアンケート調査結果です。みなさんの周囲、またはみなさんご自身はいかがでしょうか?

 高年齢者雇用安定法の改正・施行に伴い、企業に雇用される人は希望すれば65歳まで働くことが可能になりました。しかし一方で、40歳代で「やりがいを持てない」「あきらめ感を感じる」などの人が多いという調査結果が出ているのです。私たちはこの状況をどのように捉えればいいのでしょうか。
 そこで、キャリアカウンセラー(CDA)として広くご活躍され、多くの人事担当者と交流のある幅口明男さんに、40歳代一般社員のモチベーションの現状と課題についておうかがいしました。幅口さんによると、ここ1〜2年で強く感じられることがあるとのことです。ぜひご参照ください。

【注釈】
※「ミドル世代社員に関する調査」2013年、日本マンパワー


●今回お話を聞いたのは・・・
 幅口 明男 さん
 キャリアカウンセラー(CDA)

IT企業に勤務、特定社労士。2005年よりCDAの仲間と学生の就活支援のボランティアを継続。「仕事が楽しいと人生も楽しい」と語り続ける。
近年は中高年のモチベーションのメンテナンスがメインテーマ。


資格活用1

40歳代が抱いている迷い・悩み

 現在40歳代の方は、ちょうどバブル経済の頃に新卒で入社された方々が多いと思います。総務省統計局の「平成24年就業構造基本調査」によると、全年齢の有業者総数に占める割合は、40〜44歳が12.6%、45〜49歳が11.1%です。両方を合わせると23.7%に上ります。日本の就業人口の中で多くの割合を占めるボリュームゾーンとなっています。いわば、産業や企業を支える中心的存在と言えるかもしれません。
 しかし、交流のある何人かの人事ご担当者のお話をうかがったり、CDAとして転職フェアなどでキャリアカウンセリングを行ったりしていると、40歳代の方々が必ずしも活き活きと働いているとは限らないという状況が見えるのです。
 スイスの心理学者・精神科医として著名なユングは、中年期を「人生の正午」と呼びました。私自身もそうですが、まさに人生の折り返し地点であり、転換期であるとも言えます。この時期に、さまざまな迷いや悩みを抱えている方が少なくないのです。

 迷いや悩みの内容は人によってさまざまです。10人いれば10通りの迷いや悩みがあることでしょう。ただ、他社の事例や各種キャリアカウンセリングでの傾向を私なりに分析すると、40歳代の方の迷い・悩みは3つに分類することができるように思います。
 「働く意欲がわかない」「仕事に意義を見い出せない」「今の仕事とは関係のない仕事に転職したい」というものです。
 個々の思いを生んだ背景はさまざまですし、その良し悪しを私が判断できることではありませんが、このように仕事へのモチベーションが低下している現状は非常に気になることであり、改善の方向に向かえればと思います。


資格活用

モチベーション低下の背景にあるもの


 企業で働く40歳代一般社員が仕事へのモチベーションを低下させるに至った背景には、いくつかの仮説が考えられます。
 まず、昇進機会の減少です。人数に対して管理職ポストが少ないため、昇進できる可能性を見い出せず、モチベーションが下がってしまうという構造です。
 次に、評価に対する不満が挙げられます。ビジネスパーソンはさまざまな場面で評価され、それが給与などの待遇などに反映されます。その外的評価が自己評価よりも低い場合、不満が募り、モチベーションを下げてしまうというケースです。
 もうひとつは最近非常に聞かれることですが、燃え尽き症候群のようなケースです。実績があり評価が高いにもかかわらず「もうやる気が出ない」などと元気をなくしてしまう方が増えているようです。

 さらに、孤立感を抱く場合もあるようです。典型的な例として、3つのケースをご紹介いたします。
 ひとつは、仕事の進め方などで自分のやり方にこだわりすぎるケースです。自分のやり方にこだわりを出し過ぎてしまうと、どうしても周囲との衝突や軋轢を生じやすくなります。仕事に自信を持っている方ほど、こうした状況を生じやすくさせてしまいます。
 次に、リーダーシップを発揮できないケースです。組織や周囲からはベテランということで期待されるのですが、過去に部下のマネジメント経験が少ない方にとっては、うまくリーダーシップを発揮しにくいのかもしれません。
 3つめは、相談できる人がいなというケースです。若手社員であればOJTなどで上司・先輩から注意・指導を受けつつ相談することもできますが、40歳を過ぎたベテラン社員に対して周囲は口を出しにくいものです。それが本人にとっては相談できる相手がいないという状況を生み、孤立感につながることもあるようです。


資格活用3

求められる「仕事観の再構築」

 40歳代のモチベーション低下をこのままにしておくと、組織には年々不活性状態が広がり、近い将来の大きな経営課題になる可能性があります。
 この現状を改善するためには、当事者である本人が、直面している現実に対して受け止め方を変える必要があるように思います。受け止め方を変えなければ、前向きに考えることが難しいからです。
 そして、仕事に対する価値観、いわゆる仕事観を再構築する必要があるのではないか、と思います。私たちはもう20歳代ではありません。以前のようなバブル経済の時代でもありません。ですから、現在の環境に合わせて仕事観も変化させていかなければいけないと思うのです。
 果たして現実はどのようになっているのか? 昇進機会が減少し、組織からの評価が低い、燃え尽き感もある。それをまず受け止めた上で、今度は将来を見据えてみる。60歳、65歳に自分は何をやりたいのかをじっくり考えてみる。それまで同じ会社で働くとするならば、どのように組織に貢献していくのかを考えてみる。そうした作業が大切なのではないでしょうか。
 別の表現で言えば、仕事観の再構築とは、個人のビジョンと組織のビジョンの整合性を図ること、折り合いをつけることだと考えます。そのためには、個人のビジョンを明らかにすることが欠かせませんし、組織のビジョンを受け止めることも必要です。


資格活用4

キャリアカウンセリングの活用

 適職を見つける時などに、Will−Can−Mustの考え方がよく出てきます。Willは「やりたいこと」、Canは「できること」、Mustは「しなくてはいけないこと」。この3つを輪にして、それらが重なる部分が大きいほど、仕事に満足感を得られると言われます。
 年を重ねてくると、これら3つの輪の大きさやバランスが変わってきます。変わってくること自体は問題ありませんが、組織が求めるMustに重なる部分が小さくなってくると、満足感が減り評価も下がることにつながりやすいということです。
 しかし、定年・定年後の将来を見据えてみると、Will−Can−Mustのバランスがよくなることもあります。そうすれば、仕事観の再構築もしやすくなるでしょう。

 また、モチベーション向上のためには、キャリアカウンセリングも非常に効果的だと思います。キャリアカウンセリングを受けると、こころの中のモヤモヤを感情と一緒に言葉にして出すことができます。モヤモヤを吐き出さなければ、人はなかなか行動に移れないものです。私がキャリアカウンセリングをする時も、最初は傾聴に徹して、ご本人の本音を出し切っていただくことを大切にしています。それは、CDAとしての10年間の経験で学びました。
 そして、こころのモヤモヤを出し切ってCDAと話していると、おそらく何らかの気づきがあるはずです。たとえば、「迷いや悩みを抱えているのは自分だけではない」と気づくかもしれません。
 みなさんそれぞれの立場で、キャリアカウンセリングを上手に活用し、「人生の正午」にモチベーションを高められることを切に願っています。

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