誰にも共通したイメージを与えられる「理論的な見せ方」
[2014/05/29]
みなさんは「自分に似合う色」を知っていますか? いわゆるパーソナルカラーと呼ばれるものです。最近ではパーソナルカラーを診断してくれるサービスもありますので、ご存じの人もいることでしょう。
それでは、「自分を演出する色」についてはいかがでしょうか? 「ソフトな感じに見せたい」「凛々しく見せたい」「健康的に見せたい」「色白に見せたい」など、演出の目的は人それぞれ。TPOによっても異なるかと思います。
色は、人の心理や感情に影響を与える力を持っていますが、それを使いこなすのは難しいことです。それはファッションやメイクなど人の外見だけに限りません。商品や環境、情報媒体などのモノについても同じことが言えます。
ただ、色による影響力が大きい反面、色の活用に対する誤解も多いようです。実はパーソナルカラーについても、色彩効果の一部にだけスポットが当たりがちです。その結果、「見る人によって評価が違う」「根拠があいまいで信頼性に欠ける」「ビジネスには使いにくい」などの低評価につながることもあるようです。
そうした傾向に対して、理論的なパーソナルカラーを提唱するトミヤママチコさんは、「色の感情効果が誤解されているケースが多い」と警鐘を鳴らします。そして、「色彩効果の正しい理論を学べば、誰にも共通した感情効果を促すことができるようになる」と言います。色の有効活用法を知ることは、ビジネスにおいてもプライベートにおいても損はありません。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
トミヤマ マチコ さん
NPO日本パーソナルカラー協会 理事長
㈱パーソナルカラー研究所スタジオHOW 代表取締役
パーソナルカラリストの草分け的存在で、理論的なパーソナルカラーを提唱するカラーのスペシャリスト。企業研修、講演、商品企画、コンサルティング、出版、パーソナルカラー教材開発など、多方面で活躍中。2013年、自身の提唱する「属性によるパーソナルカラー診断法」は特許を取得。フォーシーズン分類をはじめとしたすべてのパーソナルカラー分析の基礎として、法則的な色の属性に対応させた分析法を提唱している。
<主なテレビ出演>
NHK総合テレビ「生活ほっとモーニング」、NHK教育テレビ「男と女の生活学」、「おしゃれ工房」、フジテレビ「めざましテレビ」ほか多数
<主な著書>
改訂新版『はじめてのパーソナルカラー』、改訂新版『役に立つパーソナルカラー』(ともに学研パブリッシング)ほか
パーソナルカラーへの誤解
1980年代、アメリカからパーソナルカラーという考え方が伝わり、女性を中心に高い関心を惹きました。パーソナルカラーとは、一般的に「その人に似合う色」として知られています。詳しい方はフォー・シーズン・カラーという言葉もご存じでしょう。色の調子に季節の名前をつけて、分類したものです。たとえば、「あなたの肌と髪の色なら、スプリングタイプが似合いますね」という風に使われています。
ただ、似合うと感じるか似合わないと感じるかは、評価する人によって異なります。どんなに優れたカラリストであっても、誰が見ても絶対に似合うと思う色を提案することはできません。そこにパーソナルカラーの留意点があります。
その結果、「パーソナルカラーは信頼性に欠ける」と疑問視されることもあります。特にビジネス界においては、「パーソナルカラーはあいまいで活用できない」と、色彩効果活用に二の足を踏むケースが見られます。
しかし、そうした状況を生んだ原因は、色彩が持っている感情効果を整理できていないからだと言えます。
感情効果には2種類ある
色の持つ感情効果には、2つの種類があります。ひとつは【表現感情】、もうひとつは【固有感情】です。この2つを混同しているケースが多いため、「パーソナルカラーは信頼性に欠ける」「パーソナルカラーはあいまいで活用できない」などの誤解が生じてしまうのです。
表現感情とは、見る人によって評価が異なる感情効果を指します。似合う/似合わない、好き/嫌い、素敵/素敵じゃない、などの表現で判断されるものです。表現感情には個人差や地域差などがあるため、すべての人に同じ感情を与えることは不可能に近いと言えるでしょう。
一方の固有感情とは、ほぼすべての人が同じように感じる感情効果を指します。たとえば、「赤色は温かいと感じる」「青色は冷たいと感じる」「明るい色は軽く感じる」「暗い色は重く感じる」などに代表される効果です。表現感情とは異なり、理論を学べば誰でも活用することができるようになります。
パーソナルカラーについて言えば、「あなたにはこの色が似合う」という判断には、この2つの感情効果が隠れています。ですから、ほぼすべての人に共通した効果の得やすい固有感情を熟知・活用したうえで、表現感情を考えるべきです。でも実際には、固有感情と表現感情を区別せず混同しているケースが多いため、さまざまな誤解を招いているのです。
ケネディ大統領は固有感情を活用した
有名なエピソードに、1960年アメリカ大統領選のテレビ討論において、「ケネディ候補はニクソン候補よりも好印象を持たれる色の演出をしたから成功した」という話があります。
当時、テレビはモノクロでしたから、視聴者には色がわかりません。その条件下で、ケネディ陣営は、濃い色のスーツに真っ白なワイシャツを採用しました。明度(明るさ/暗さ)のコントラストの強い組み合わせにしました。この組み合わせは、輪郭をクリアにし、凛々しく見せる効果があります。さらに、顔に光沢感のあるメイクをすることで、つややかで健康的なイメージを演出しました。
一方のニクソン陣営は、コントラストの弱い組み合わせでした。明度の差異が小さいと、ソフトに見える反面、インパクトが弱く、何となく弱く老けたイメージに映ってしまいます。
このエピソードは、似合う/似合わないという表現感情の問題ではありません。明らかに固有感情を活用した事例です。白・黒・グレーによる明度の違いだけでも、固有感情にはこうした演出力があるのです。
目的に合わせて見せ方を変える
固有感情を踏まえれば、さらに多様な演出が可能です。
たとえば緑の洋服を着た場合、黄みがかった緑(写真左)だと顔色が血色よく見え、健康的なイメージになります。一方、青みがかった緑(写真右)だと、色白に見える反面、不健康に映ることもあります。
似合う/似合わないという基準だけではなく、「どう見せたいか」という目的に沿って色を活用することも大切なことではないでしょうか。そのためには、固有感情を理解した色彩効果活用が非常に有効です。ただ、従来の理論では表現感情と混同されていますので、整理された理論を学ぶことをお勧めいたします。
また、学校などで色を学ぶ際、一般的に色相・明度・彩度(色の三属性)が基礎知識だと言われています。しかし、私たち日本パーソナルカラー協会では、それに加えて清濁の変化にも注目しています。清濁とは、透明感/濁り感、シャープ感/ソフト感などに影響を与える観点で、素材の質感を演出することにもつながります。
さらに、配色の理論を学べば、複数の色を使っての演出や見せ方も身につけることが可能です。
もっとも、お忙しいビジネスパーソンの方々が色を学ぶ機会はあまりないかと存じます。7月2日(水)には日本マンパワーの公開コース「色がビジネスを変える!新しいパーソナルカラー理論活用セミナー」で講師役を務めさせていただきますので、関心のある方はぜひご参加ください。「ビジネスでは使いにくい」ということはけっしてありません。ご参加いただいた方の目的に対応できるよう、ビジネスで役立つ理論・ノウハウをお伝えできればと考えています。