キャリアアップに欠かせない“ぐるぐる”
[2008/07/27]
自分の5年後、10年後を思い描き、目標に向かってキャリアアップを図っていく——。それは確かに理想的なのでしょうが、日々の仕事に追われている人にとっては、けっしてたやすいことではありません。日常業務とキャリアアップを両立させることって、たいへんですよね。
ところが! 日本マンパワーのハッピー・コーディネーター、大原良夫さんは、「日常業務とキャリアアップを分けて考える必要はない」と言います。むしろ大切なのは、「ぐるぐる回ること」だと・・・。
いったいどこをぐるぐる回ればいいのでしょうか? 3回回ってワン? そんなわけはありませんよね。
ぐるぐる回ってキャリアアップを図る方法、しっかりとインタビューしました。ぜひご参考にしてください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリア形成事業推進本部 キャリアドック部
部長(CDA)
大原 良夫 さん
−行動と内省をぐるぐる−
「キャリアアップを考える時というのは、どうしても極端な論理になりがちです。たとえば、『日常業務と切り離して、自分の価値観に合った目標を設定しよう』とか、『とにかく今の仕事の能力を上げよう』とか。なかには、『日々の仕事に追われていたら、キャリアは作れない』と思っている人もいるのではないでしょうか。
でも、そんなことはありません。日々の仕事がどんなに多忙でも、キャリアを築くことは可能です。実際、そうした人はたくさんいます。
キャリアを築ける人と築けない人の大きな差異は、“経験から学ぼうとする姿勢”の有無です。言い換えれば“内省”。つまり、『この経験から自分は何を学んだか?』『この経験は自分にとってどのような意味を持つか?』『この経験はどのようにキャリア作りに活かせるか?』などについて、振り返って自分に問いかけることが大切なのです。
そして、行動と内省をぐるぐると繰り返すこと。日本マンパワーではこのプロセスを“GRU2”(Growth through Reflecting on the Unknown、Reflectingは「内省」の意。発音は「ぐるぐる」)と呼び、キャリア形成において非常に重視しています。なぜなら、行動することによって経験を得ることができ、経験を内省することによってキャリア作りを意識づけられ、しかも次の行動をレベルアップさせることができるからです。まさに“GRU2”は、日々の仕事をキャリア作りに活かす秘訣だと言えます」
−“GRU2”が重要な理由−
「なぜ“GRU2”が重要なのか、ひとつわかりやすい例を挙げましょう。大学の就職担当の人から伺った話です。
最近の学生は、『あの会社は自分に合わなさそう』『この会社は好きになれない』など、自分の価値観に固執して、会社訪問をなかなか始めようとしない人が増えてきたらしいのです。どうやら、自分のやりたいことに100%フィットしないと、なかなか行動に移そうとしないようです。かと思うと一方では、『とにかく就職しなきゃ』とやたら多くの会社を受験し、内定が出てから『この会社、本当に自分に合っているのかな?』と悩む学生もいると聞きました。
どちらのパターンも極端なんですね。行動か考えのどちらかに偏ってしまっているので、行動しながら学ぶということができていません。これでは、ますます“自分らしさを発揮できる就職先”から遠ざかってしまうでしょう。
ただ、学生はともかく、社会人であれば行動と内省をぐるぐると回りたいものです。内省の時間は1日5分でも10分でも構いません。その日に行った自分の行動を振り返り、
・今日の行動はなぜ生じたのか?
・今日の行動から自分は何を学んだのか?
・今日の行動は自分にとってどのような意味を持つのか?
・今日の行動はキャリア作りにどのようにプラス作用するのか?
・今日の行動は今後どのように活かせるだろうか?
などについて考えてみてください。そして明日の行動につなげましょう。この“GRU2”をするかどうかが、キャリアを作れるかどうかの大きな分岐点となります」
−嫌な仕事、辛い仕事もキャリアに活かす−
「もちろん、日々の仕事は楽しいことばかりではありません。自分の理想と現実とのギャップに悩んだり、辛くなったりすることもあるでしょう。でも、どんな経験も考え方次第でプラスにもマイナスにも作用させることができます。
実際、『仕事ができる』と周囲から認められている人は、どんな仕事に対しても前向きに取り組み、たとえ嫌だと思った仕事の中でも何かしら自分に意味があることを見い出して次の仕事につなげようとします。無意識のうちに“GRU2”を行い、職務能力だけではなく、自らのキャリアも作り上げている人が多いように思います。
行動したら内省する、内省したら次の行動をする。当たり前のことのように感じるかもしれませんが、日々の仕事に追われていると、どうしても内省がおろそかになりがちです。せっかくの経験を無駄にしないためにも、ぜひ“GRU2”をキャリア作りに活かしてください」