ビジュアル面の改善を図るには
[2010/05/26]
みなさんは、お客様に提案する企画書をどのように作成していますか? 自社内で作成していますか? それとも社外に委託していますか?
企画書の内容は社外秘の場合が多いでしょうから、自社内で作成しているケースが多いかと思います。でも、営業用のパンフレットやリーフレットは社外の代理店やデザイン会社などに委託していませんか?
パンフレットやリーフレットと同様、企画書は大切な営業ツールです。むしろ、商品・サービスを成約に結び付けられるかどうかは、パンフレット類よりも企画書の方が決め手になることが多いかもしれません。ですから、たとえ自社内で作成する企画書であっても、その“見せ方”がいいに越したことはありません。
そこで、先月に引き続き、企画書作成代行の業務経験が豊富な水谷一生さんに、「企画書の改善方法」について伺いました。今回はビジュアル面に関してのお話です。ご参照ください。
●アドバイスしてくださったのは・・・
有限会社エディット
代表取締役
水谷 一生 さん
顧客に抱いてほしいイメージは?
企画書のビジュアルを改善することは、大きく分けて3つの効果があります。第1に「全体的なイメージを作ること」、第2に「わかりやすくすること」、第3に「目立たせること」です。それぞれが大切な役割を担っています。
まず、「全体イメージ」の役割は、会社のイメージを形成することです。たとえば、図1を見ると、どのような印象を受けますか?
(画像をクリックすると大きく表示します)
私なら次のような印象を受けます。
「いかにも強引に売り込もうとしている感じ。やっつけで作ったような仕上がりで、説明能力がなさそう。でも、手作りで飾り気がないので、もしかすると素朴でいい人かもしれない・・」
では、図2の印象はいかがでしょうか?
「とても優秀な会社で、用意周到なサービスな期待できそう。でも逆に、冷酷で事務的な感じがして、融通が利かなさそう。料金も高そうだし・・」
こんなところでしょうか。
もちろん、営業担当者のトークによってその後の印象は変わってきますが、たった1ページを眺めるだけで、企画書にはこれだけイメージを変える力があるのです。そして、そのイメージは会社のイメージに結びついてしまいます。図1/図2のどちらが「いい/悪い」ということではなく、顧客に抱いてほしいイメージに沿った企画書を作成することが大切なのです。
わかりやすさで訴求力を高める
第2に挙げた「わかりやすくすること」については、さらに2つの役割に分かれます。ひとつが「理解しやすくすること」、もうひとつが「論理的にすること」です。相手が理解してくれなければ、提案する商品・サービスの良さが伝わりませんし、論理的でなければ信頼を得られません。
例として、図3〜図7までを見てください。
図3は、いったいどのようなサービスなのか、さっぱりわかりませんね。それを図4のように表形式にして情報量を増やすと、顧客は非常に理解をしやすくなります。
また図5は、まったく論理的でありません。矢印を使っているというだけで、本当に売上が上がるのか説得力に欠けます。一方、図6・図7はいかがでしょうか? これは、図5の内容を2ページに分けて整理したものです。読みやすい上、なんとなく説得力があるように思いませんか。
このように、ビジュアルを工夫すれば、顧客への訴求効果も高められるのです。
第3の「目立たせること」については、それほど説明が要らないでしょう。みなさん自身、すでに気を遣って作成していることと思います。ただ、留意すべきことは、目立たせるという役割が「相手に印象づける」だけの効果ではないことです。もうひとつ、「論理展開を誘導する」という効果もあります。
図8の右の棒グラフでは、明らかに緑色Cより赤色Bの方が低い値にもかかわらず、青色Aと比較することにより、赤色Bの優位性を強調しています。口頭で補足説明する必要はありますが、色やフキダシの工夫によって論理展開を誘導することは可能なのです。
意図によってビジュアル種類を選ぶ
では、実際問題としてどのようにビジュアルを改善すればいいのでしょう? それを考えるために、ビジュアルの種類を簡単に整理しましょう。
(1)文字の変化
・変えられるもの:位置、サイズ、書体、色など
・追加できるもの:囲み、ワンポイントなど
(2)画像の挿入
・挿入できるもの:チャート、グラフ、表(マトリクス)、写真、イラスト
これらをどのように変化・挿入するかはケース・バイ・ケースとなりますが、みなさんが目指す意図によって、ビジュアルの種類を変えるべきです。それは、具体的に次のようになります。
●全体の理解・論理展開を助けるもの
表(マトリクス)、ツリー図、座標マップ、プロセス図、ピラミッド図など
●一部のインパクト・印象を強めるもの
グラフ、囲み、写真、イラストなど
図4の表や図6のプロセス図は全体の理解や論理展開を助けるものであり、目立たせるためではありません。一方、図8のグラフは、一部の特記事項についてインパクト・印象を強めるために挿入されたものです。
つまり、何でも図解すればいいというものではなく、それぞれの意図に合った使い方をすることが大切になります。
色とジャンプ率の工夫
その他の工夫としては、色とジャンプ率が重要な要素となります。
色については、補色と同系色を上手につかいましょう。補色とはいわゆる「反対の色」のことで、赤色の補色は緑色、黄色の補色は紫色など、基本原則が決まっています。「色相環」のキーワードでGoogleの画像検索をすれば、色の輪がたくさん出てきますので、上手に活用しましょう。反対側の遠くにある色が補色で、隣など近くにあるのが同系色です。
また、ジャンプ率とは「大きさの比」のことです。比(差異)が大きければ「ジャンプ率が大きい(高い)」、比(差異)が小さければ「ジャンプ率が小さい(低い)」と言います。
たとえば、1ページに見出しを2本掲載しているとすれば、その一方を極端に大きく、その一方を極端に小さくすれば、ジャンプ率は大きくなり、大きい見出しは非常に目立ちます。逆に、2本の見出しを同じような大きさにすれば、どちらもあまり目立ちません。
ただ、補色を使ったりジャンプ率を大きくすることは、少なからずマイナス面もあります。それぞれ次のような特性がありますので、自社がめざすテーストになるよう工夫してみてください。
●補色あるいはジャンプ率大のイメージ
動的、ホット、下品、情熱的、積極的、元気、インパクト
●同系色あるいはジャンプ率小のイメージ
静的、クール、上品、理性的、消極的、穏やか、アカデミック
なお、企画書を作成するソフト(アプリケーション)は慣れたものでいいかと思いますが、MicrosoftのPowerPointを使うと非常に便利で、作成時間の短縮にもつながります。ぜひ習熟しておくことをお勧めいたします。