採用担当者は「職務経歴書」の何をどう評価する?
[2009/08/28]
転職・再就職を希望する人にとって、書類選考は入社への第一関門です。応募書類の出来いかんでは、面接試験の機会さえ得られないことがあります。
なかでも「職務経歴書」は、採用担当者が重視する大切な書類。採用過程で応募者の職務能力を評価するのは、「職務経歴書」と「面接」だと言われています。
それではいったい、採用担当者は「職務経歴書」の何を見て、どのような判断基準で評価しているのでしょうか?
この疑問について、面接官として長い経験を持ち、キャリアカウンセラーでもある田中稔哉さんにおうかがいしました。田中さんによると、「評価ポイントは大きく4つある」そうです。いずれのポイントも、面接官の経験をもつ田中さんならではの視点で、面接を受ける立場の人にとっては初耳かもしれません。
転職・再就職を視野に入れている方は、ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアセンター支援推進部 企画課 次長
田中 稔哉 さん
「経験業務」を評価するポイント
採用担当者が応募者の職務経歴書を評価する際、重視するのは「経験業務」「見やすさ」「価値観・職業観」「自社との適合性」の4点です。それぞれ、どのような観点で評価しているのか、順を追ってご説明します。
まず「経験業務」についてですが、これは職務経歴書を評価する上で最も重要なポイントとなります。「経験業務」とは、これまでの仕事で「何を、どの程度、どのような手法で、どのような成果を上げたか」を示すものです。具体的には次のような項目に分けられます。
1.何を:業務内容、顧客、取扱製品・サービス
2.どの程度:難易度(規模、期間、場所、ポジション、相手方レベル)
3.どのような手法で:工夫、個性、発揮した知識・技術
4.どのような成果を:数字、状態、周囲への好影響
採用担当者はこれらについて、「自社でどのくらい再現できるのか(能力の再現性)」を推し量りながら、職務経歴書に目を通します。しかも、記載されている内容を鵜呑みにするわけではなく、「具体的な根拠があるかどうか」の裏付けもチェックしています。
ですから、職務経歴書を書く人は、根拠を示しながら具体的に解説することが求められます。
一般的な傾向として、「1.何を」については多くの人がきちんと書けていますが、それ以外の項目で情報が不足しがちです。ただ、2から4も「自社でどのくらい再現できるのか」を判断するために欠かせない情報ですから、漏らさないように注意しましょう。
たとえば、「新規顧客開拓100社達成」とひと口に言っても、全国の一般消費者にダイレクトメールを送って商品を売るのと、ある地域に限られた民間企業の社長を訪問して商品を売るのとでは、難易度も手法も大きく異なります。もしそうした具体的な情報が書かれていなければ、採用担当者は「能力の再現性」を推し量れず、結果として低い評価を下すしかないのです。
書類としての「見やすさ」も評価
次の「見やすさ」については、けっして見栄えのことではありません。構成力のわかりやすさの問題です。プレゼンテーション力とも言えるでしょう。
採用担当者は限られた時間の中で何人分もの職務経歴書を比較しながら読むわけですから、記載内容がわかりにくければ相対的評価は低くなってしまいます。
では、どのような構成が望ましいかと言うと、職務経歴書を目にした時、すぐに要点のつかみやすいものです。たとえば、「職務経歴書」のタイトル、住所・氏名のすぐ下に「略歴」が記載されているもの。200字から300字程度の短文で、「このような経験があるので、こうした業務についてはこの程度できる」ということが端的に要約されていれば、採用担当者は関心が高まり、「もっと詳しい経歴を知りたい」と読み進むものです。逆に、最後まで読まないと応募者の能力を推し量れないような書類では、途中で読むのをやめてしまうかもしれません。
略歴の有無だけでなく、見出しのつけ方、箇条書きによるまとめ方などによっても理解のしやすさは変わります。職務経歴書は「自分の能力を採用担当者に理解してもらう」ための書類ですから、最大限の注意を払って理解しやすくなるように工夫しましょう。採用担当者は、その姿勢や構成力をシビアに評価しています。
「価値観・職業観」で苦境時の対応を推測
3番目の「価値観・職業観」とは、「何のために働くか」ということを意味しています。これには内的価値と外的価値の両面があり、前者は「自分の人生において働くことの意味(価値)」、後者は「誰にどのような形で貢献したいかという思い」を指します。
採用担当者がこれらについて知りたい理由は、「自社に入社して壁にぶつかったり、苦境に立たされたりした時、どの程度までがんばれるか」を判断するためです。「価値観・職業観」は、業務遂行の意欲の基となる原動力だからです。
職務経歴書でその強さ・深さ・大きさを確認することができたら、採用担当者は安心して「この人は辛い仕事もがんばってくれるし、会社が苦しくなっても支えてくれるだろう」と評価することができます。しかしそれを確認することができなければ、「もしかすると途中で退職してしまうかも」という不安がつきまといます。
「価値観・職業観」を職務経歴書で表すことは難しいと思いますが、「この業務ではこれほど辛くたいへんだったが、これだけの労力を費やして成果を上げた」という事実を記載することができれば、採用担当者に根拠を示すことができ、大きなアピール材料となります。
自社に合うかどうか「適合性」をチェック
最後の項目「自社との適合性」とは、「その会社が求める人材像に合致しているかどうか」という意味です。具体的には、
1.企業理念、社風、ワークスタイル
2.業務内容
3.技術、知識、資格・条件(または同等の業務経験)
4.業務規模(部下人数、予算規模、利害関係者数)
5.組織親和性(協調性)、コミュニケーション力
などについて、適合性を評価します。
求める人材像は会社によって異なりますが、求人票や求人案内、会社ホームページなどから情報収集できます。何人もの応募者の中で自分が選ばれて採用してもらうためには、これらを意識・推測することを心掛けましょう。
ただ、自分を偽って「人材像にマッチするように見せかけよう」とすることは避けるべきです。職務経歴書で装っても面接試験の段階で見抜かれますし、たとえ採用に至ったとしても、入社後に困るのは自分自身だからです。
職務経歴書にはあくまで自分のありのままを書きつつ、人材像にマッチする経験をところどころで強調してアピールするのが最適です。
これら採用担当者の視点を踏まえたうえで、職務経歴書の作成に取り組んでください。