「意味づけ」を変えるだけで好転することも
[2010/01/27]
嫌なこと、苦しいことは誰にもありますよね。自分が悪いわけでもないのに、なぜかやってくる嫌なこと、苦しいこと・・・。
たとえば、朝の通勤電車の中で、ぐいぐいと人を押しのけて座席に座ろうとする中年の人がいたとします。あなたは普通に立っていただけなのに、中年の人は「ちょっとぉ、じゃまよ! どいて!」とあなたを怒鳴りつける。こんな事態に遭遇すると、相手に腹が立つと同時に、言い返せない自分に自己嫌悪するかもしれません。あとで思い出しても気分が悪く、やるせない気持ちになることもあるでしょう。
そんな時は、「なぜ、嫌な気持ちになったのだろう?」と考えてみてはいかがでしょうか。ちょっとしたコツで、気持ちが好転するはずです。また、古くから「ものは考えよう」と言われますが、その通り、「意味づけ」を変えれば人生が好転することもあるようです。
そんな話を、日本マンパワーでキャリアカウンセリング講座の講師指導やプログラム開発を担当する水野みちさんが話してくれました。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアドック部
CDA、産業カウンセラー、J-APT MBTI認定ユーザー
水野 みち さん
「嫌な思い」には価値観が反映している
人の思いには、その人特有の価値観が反映されています。
たとえば、電車の中でぐいぐいと人を押しのけてくる中年の人に遭遇してしまったら、1日中嫌な思いに覆われてしまうかもしれません。そんな時、「なぜ、嫌な気持ちになったのだろう?」と考えてみれば、自分の価値観を探ることができます。
もしかすると、その気持ちの裏には、「譲り合いの精神を大切にしたい」という価値観が隠されているかもしれません。あるいは、「人に迷惑をかけたくない」「自分だけが得をするのではなく、人の役に立ちたい」という価値観が隠されているのかもしれません。
ほかの例も挙げましょう。
たとえば就職活動の際、面接官に「恋人はいるの?」と質問されたとします。こうした質問に、嫌な思いをする人はいませんか? その嫌な思いにはどのような価値観が隠されているでしょうか? 「なぜ、嫌な思いをするのだろう?」と考えてみてください。
もちろん、その理由は人によって異なります。ある人は「個人のプライバシーを大切にしたい」と考えているからかもしれませんし、ある人は「相手の気持ちを大切にしたい」と考えているからかもしれません。あるいは、「失礼な言動をするのは人として良くない」という正義感を持っている人もいるでしょう。
これらいずれの理由も、その人なりの価値観が反映されているものだと言えます。
嫌な思いを消して、自分を肯定するために
このように自分の価値観を探ってみると、「私って実は、自分で考えていた以上にいい人かも」などと思いませんか? きっと、その通りなんだと思います。価値観というのは、日常のふとした瞬間ににじみ出てくるものですから。
「嫌だ、嫌だ」と一方向からだけ考えていると、その嫌な思いを消し去るのに時間がかかりますが、別の角度から考えてみると、意外に簡単に消えてしまうことがあるのです。その方が楽しく毎日を過ごせるでしょう。
ですから、たとえ嫌なことがあっても「なぜ?」と考えてみてはいかがでしょうか。自分の思いの「意味」を考えてみる。そうすれば、自分をよく知り、自分を肯定することにつながるかと思います。
「意味づけ」によって環境の良し悪しが変わる また、次のような例もあります。
あるキャリアカウンセラーが、就職活動を控えた大学生と面談した時のことです。カウンセラーは大学生に、「今は求人数が少ないから、たいへんだよね」と話しかけたそうです。そうしたら学生は、
「いえ、ぼくは良かったと思っています。なぜかというと、ぼくは今まで何の苦労もせずに生きてきましたが、今ようやく苦労を経験できるのですから。この苦労が自分を成長させてくれるような気がして、むしろありがたいと思っています」
と答えたそうです。
この話を聞いて非常に驚きました。普通の学生であれば、不景気な社会環境を恨みがちです。でも彼は、就職活動が厳しいことを環境のせいにしていません。「現状が自分にとってどのような意味を持つのか」という「意味づけ」を行い、逆に感謝しています。その上で、自ら前向きに行動しようとしているのです。おそらく彼には、いい結果が待っていることでしょう。
少し考え方の角度を変えて、自分にとっての「意味」を考えることは、人生を好転させるきっかけになることがあります。たとえ、前向きな行動にまで至らなくても、自分の価値観に触れるだけでもいいと思います。「自分が大切にしたいこと」「自分が本当にやりたいこと」などを自覚することができれば、いつか自然にその方向に向かっていくのではないでしょうか。