ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方vol.52

40歳代社員に望まれるキャリアデザインのために

[2012/12/21]


キャリア1 管理職になれず、給料も上がらない40歳代バブル期入社社員が、今後、いかにしてモチベーションを高め、いかにして能力を向上・発揮していけばいいのか? この問題は、個人にとっても組織にとっても対処の難しい問題となっています。
 40〜50歳代社員のキャリア形成に詳しい日本マンパワー・片山繫載さんによると、「専門性を究めて仕事のプロフェッショナルを目指し、そして社内で一目おかれる存在になることが、解決の糸口になる」と言います。
 ただそのためには、「仕事に対する意味の見い出し方を変える必要がある」そうです。少し専門的な言い方をすると、「上昇志向のキャリア観を転換して、新たに専門志向のキャリアデザインを考えるべき」だということです。
 果たして、40歳代社員や組織は今後どのように取り組んでいくべきなのか? 片山さんにうかがいました。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 取締役 教育研修・人材事業担当
 片山 繫載 さん


バブル期入社社員に対する組織の思い

 40歳代バブル期入社社員に対して、会社はどのような思いを抱いているのでしょうか。私が企業の人事・教育担当者の方におうかがいした限りでは、次のようなコメントに集約されるのではないかと思います。

 「40歳代はもはや育成期ではない。会社に成果をもたらす主軸となってほしい
 「会社の状況は必ずしもよくない。与えられるポストも少ないし、期待を満たすような昇給も難しい。しかし、そんな状況下でも、もちまえの専門性を発揮し、どのように会社に貢献できるか、自分で考えてほしい
 「同一年代に多数の社員がいる会社では、モチベーションが低く成果が芳しくない40歳代社員には、別の道を考えてもらわなければならないかもしれない」

 もちろん、このコメントはすべての40代社員に向けられたものではありません。あくまで一般論です。ただ、組織を取り巻く状況や意識調査などから考えると、あてはまるケースが多いことと思われます。さらに別の観点から見ると、40歳代になっても「会社に守ってもらいたい」という姿勢の社員は、会社にとって“好ましくない存在”だと言えるかもしれません。


キャリアに対する思い違い

キャリア2 それでは、40歳代社員はこれから、どのように仕事と向き合っていけばいいのでしょうか? 私は、まずキャリア観を転換すべきだと考えます。つまり、昇進・昇格・昇給をキャリア目標とするのではなく、良い仕事ができることと、そうしたプロの仕事ができることによって会社に貢献することを目標とする−このように仕事に対する意味の見い出し方を変えるのです。
 ところが、40歳代を対象とした研修を通した感覚では、半数くらいの人が「自分のキャリアのことなど考えたこともない」というのが実態のようです。「キャリア=昇進・昇格」だと思い違いをしている人も少なからずいます。こうしたキャリア観しか持っていないからこそ、「ポストが上がらないからモチベーションが下がる」という現状が生じてしまうのでしょう。
 しかし、「昇進・昇格さえすればキャリアが高まる」というような表面的な考え方では、活き活きとした仕事人生を送れません。それよりも、「自分のパーソナルな能力を高め、組織や社会に役立てることで正当な評価を受ける」という方が、働きがいがあるのではないでしょうか。
 キャリア観は人によって異なりますが、考え方を深めることによって初めて「仕事人生を自分で上手にハンドリングできる」ことにつながるのだと思うのです。
 その上で、「自分の専門能力を高める」「自律・自立のマインドを持つ」「役割を果たし、会社に貢献する」「高い目標に挑戦し、成果を出す」ことができれば、個人にとっても組織にとっても明るい将来が開けるのではないでしょうか。


40歳代社員と企業のご担当者へ向けて

キャリア3 日本マンパワーでは、40歳代社員を対象としたキャリアデザイン研修を提供しています。その内容はお客様のご要望によって異なりますが、一般的にはおおよそ次のようなプログラムとなっています。
 1 会社・職場・仕事の環境変化を認識する
 2 自己のキャリアの資産を点検する
 3 自己のモチベーションの源泉を知る
 4 自己の強みとキャリア形成の方向性を確認する
 5 数年後のキャリアビジョンを考える
 6 行動計画書を作成する

 今、40歳代の人にぜひ考えていただきたいのは、「部下がいなくても、自分1人でやれる仕事には何があるか?」ということです。会社はあくでも“場”であって、いつかそこを去る時がやってきます。けれども、その“場”を去っても自分に残るパーソナルな専門能力があれば、仕事に対する自分の考え方が変わってくるはずです。
 一度じっくりと過去の仕事経験を振り返り、自分の専門性の価値を考えてみる。そのうえで自分を成長させる専門性を確認し、高い目標に挑戦する。社会人としての基礎力を盤石にしたうえで高い専門性を磨いて、仕事のプロフェッショナルになる。そうすれば、たとえ退職時までに高いポストに就けなかったとしても、プレイヤーとして組織や社会に必要とされる人になれます。
 こうしたことをできるだけ早い時期から考え、ビジョンを作り、行動することができれば、自分の仕事人生をハッピーな方向に導くことができるはずです。

キャリア4 一方、組織の人事・教育ご担当者様には、「人は制度だけでは変わらない、人は人で変わる」ということを、ぜひ認識していただければと思います。1〜2日間程度の研修だけで社員が見違えるように変わることは、非常に難しいことです。研修はきっかけのひとつとして重要ですが、その研修の中で立てた目標に向かう日々の実践と同時に上司との対話も欠かせません。日頃からキャリアについて対話をし、どのように成長してほしいか、上司は不安や心配を取り除きながら、個人のキャリアに灯をともすことが大切です。そうすることで、個人・組織の双方がベターな関係で前向きに取り組めるのではないかと考えます。
 そのために、キャリアカウンセリングを取り入れるのも、有効な方策のひとつだと言えるでしょう。

 ポストや給料に代わる第3のモチベーションはキャリアにある——私はそう考えます。

 

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