ちょっと一息

中小企業の支援を実践的に学ぶ「登録養成課程」

働きながら1年間で修了できるカリキュラムに惹かれた

[2016/10/26]

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「何のために中小企業診断士を取るか」は人によって異なります。
 経営コンサルタントとして独立開業するか、行政機関やコンサルティング会社で中小企業支援に携わるか、企業内で実務に活かすか・・。いずれにせよ、ビジネスに直結する高度な専門性を要する国家資格ですから、取得すれば心強い武器として活用することが可能です。
 他方、「どのように中小企業診断士を取るか」は、目的によって検討すべきかもしれません。「どのように」というのは、1次試験合格後に2つの選択肢があるからです。ひとつは、2次試験に挑戦し、合格した上で実務補習を受ける道。もうひとつは、2次試験と実務補習が免除される「登録養成課程」を受講する道です。

 「中小企業診断士の資格を取得すること自体が目的であれば、2次試験に挑戦するのがいいと思いますが、経営コンサルタントとして中小企業の支援をしたいのであれば、登録養成課程をお勧めします」
 そう語るのは、登録養成課程を経て中小企業診断士となった小櫃(おびつ)義徳さん。小櫃さんは今、埼玉県産業振興公社で中小企業の支援に携わっています。
 登録養成課程とはどのようなものか? 登録養成課程のメリット・デメリットは何か? どの登録養成機関を選ぶのが自分に合うか? 中小企業診断士取得にあたって小櫃さんが考えてきたこと、体験してきたことについてお話をおうかがいしました。ぜひご参考にしてください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 中小企業診断士(第8期登録養成課程修了)
 小櫃 義徳(おびつ よりのり)さん

大学卒業後、大手製薬会社の営業、全国紙を発行する新聞社の販売部門、包装資材会社の営業を経て、現在、埼玉県産業振興公社で中小企業の支援に携わる。近い将来、中小企業診断士の資格を活かして独立開業する予定。


中小企業の経営者ともっと深い仕事がしたい

 中小企業診断士(以下「診断士」)という資格の存在は大学生の頃から知っていました。就職活動を控えて「何か資格を持っているといい」と言われ、調べたことがあるからです。ただ、大学時代は遊んでしまい、試験勉強をすることもないまま卒業し、製薬会社に就職しました。
 「診断士を取得しよう」と本気で考えたのは、全国紙を発行する新聞社に転職してからです。私は、販売局に配属され、新聞販売店をとりまとめる担当に就きました。新聞販売店とは、地域の世帯に新聞を配達する拠点で、ほとんどが中小企業(注:小規模企業・個人事業主を含む、以下同)です。
2011年当時、私は茨城県を担当しており、鹿嶋市で東日本大震災に遭遇しました。ご存知のとおり、茨城県も被害が大きく、地盤の液状化現象や火事などが発生しました。電気・水道・ガスなどのインフラは機能せず、パニック状態でした。
 東京にある新聞社との連絡を取るのも困難な中、新聞発行が決定し、可能な限りの配達要請が出ました。翌3月12日の朝刊が現地に届いたのは、確か同日の夕方近くでした。私は立場上、心苦しい思いをしながらも、新聞販売店の方々に可能な限りの配達をお願いしました。
 余震が続いているさなかです。新聞販売店の方々の中には被災して自宅に住めなくなった人もいました。各々が苦しく厳しい状況を抱えている中で、「新聞を配達する」という使命感を抱き、身体を張って配達をしてくれる姿に「自分は、この人たちが支えてくれているからこそ存在できているんだ」と目頭が熱くなりました。
 同時に、「中小企業の経営者は覚悟を持って重みのあるものを背負っている」「自分は会社という看板に頼らず、覚悟を持って仕事に取り組めているのだろうか「中小企業の経営者の方々ともっと深い仕事をしたい」と強く思いました。
 診断士を目指した理由はいくつかありますが、この時の出来事が最も印象に残っています。


2次試験に費やす1年間がもったいない画像エラー

 その後しばらくして診断士の学習を始め、なんとか1次試験は一発で合格することができました。でも、2次試験の勉強を始めたのは1次試験が終わってから。勉強不足は否めません。そこで、すぐに登録養成課程を受講することを決めました。
 登録養成課程の道を選んだ理由は、2次試験の勉強に費やす1年間の時間が非常にもったいないと思ったからです。2次試験は実務事例を基にしたコンサルティング・スキルが問われるものの、あくまでもペーパーのテストです。2次試験の勉強をするということは、紙の上で表現することを学ぶわけです。
 しかし、実際のコンサルティングでは人と人とのコミュニケーションが求められます。私が目指していたのは、本気になって中小企業の経営者の方々と深くお付き合いすることでしたので、人と人との機微まで学べる登録養成課程に魅力を感じました。同じ志を持った受講生が集まるので、それによる学びがあることも見込めました。
 もちろん、少なくない学費が必要とされますが、診断士になってから回収できるはずです。「2次試験に合格しただけでは1円にもならない。実際に診断士として活動することで初めて対価が得られる。そうであれば、実践ですぐに使えるノウハウを学べる登録養成課程の方が望ましい」と考えたのです。


日本マンパワーが最もバランスが良かった

 登録養成機関選びにあたっては、自分の状況に合うことを一番に考えました。日本マンパワーを選んだ最大の理由は、「働きながら通える」ことと、「1年間のカリキュラムである」ということです。日本マンパワーでは、平日2回の夜間土曜の昼間に通えば1年間で修了できるのです。
 ほかの養成機関の説明会にも行きましたが、自分には合いませんでした。たとえば、半年の間、平日の昼間に通わなければいけない養成機関は、会社を退職しなければ通えません。そんな経済的余裕は私にはありませんでした。あるいは、修了まで2年間を要する養成機関は、スパンが長すぎて間延びする懸念がありました。大学の養成機関ではMBAも取れるというメリットがありますが、独立を目指す私にとってMBAは不要と考えました。
 それらを考え合わせると、働きながら1年間で修了できる日本マンパワーが最もバランスが良かったのです。


考え方の順序や構造化の仕方画像エラーが身についた

 日本マンパワーでの学びは、想像以上に自分を育ててくれました。
 何よりも良かったと思うのは、経営コンサルタントしての考え方を構造化できるようになったことです。私の場合、詰め込むような学習では、定着した使える知識となりません。しかし、1年間にわたって座学と実習を繰り返すカリキュラムによって、物事の考え方の順序や構造化の仕方がしっかりと身についたと思います。
 大企業の場合、経営理念や経営戦略、ビジョンが明確に打ち出されていますが、中小企業の場合はなかなかそこまで確立されていません。ですから、経営の基本的な骨組みを再構築するために、考え方の順序や構造化が必要となるのです。
 また、5回の診断実習では「伝え方」が大切であることも学びました。コンサルティング先の経営者にはさまざまな方がいらっしゃいます。要望も異なれば、考え方も異なる、世代も人柄も異なります。そうした経営者の個性を見極め、その方に合った話し方・見せ方をしなければ、意図していることを伝えられず、結果として経営改善につながりません。そうした伝え方に対する意識と能力は、診断実習と教室でのワークによって高まったように思います。
 さらに、クラスメイトからも多くのことを学びました。自分を含めて24人のクラスメイトは、年代も業種も職種も得意分野も違います。そうしたクラスメイトとグループを組んで勉強したことで、一人ひとりの診断の着眼点アプローチの仕方などが非常に参考になりました。これも、2次試験の勉強では絶対に得られないひとつです。


中小企業の支援をしたいのなら登録養成課程画像エラー

 私は今、公益財団法人埼玉県産業振興公社で中小企業からの相談を受け、支援策の紹介、活用や専門家による支援のサポートを担当しています。将来の独立に向け、日々の経験が糧になっていると実感しています。まだ十分な準備はできてはいませんが、中小企業の支援を自身の天職としていきたいと思います。セミナーの講師や、中小企業と一緒に新しいビジネスモデルを作るような仕事もできればと考えています。
 ちなみに、所属している診断士協会でほかの診断士の方々に出会うと、登録養成課程出身の人の方が独立開業している方が多いように思います。もしかすると、覚悟を持って登録養成課程の道を進んだからかもしれません。
 これは私の勝手な考えではありますが、中小企業診断士の資格を取得すること自体が目的であれば、2次試験に挑戦するのがいいと思います。でも、経営コンサルタントとして中小企業の支援をしたいのであれば、絶対に登録養成課程の方が役に立つと思います。特に資格を得て独立開業しようとする人にとっては、診断士になることはゴールではなくスタートではないでしょうか。ぜひ、自分に合った選択をしてください。

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