ちょっと一息

「中小企業診断士」実務補習リポート

2次合格後の「実務補習」とはどのようなものか?

[2013/04/26]


診断士1 中小企業診断士の2次試験を経て診断士として登録されるためには、2次試験合格後に診断実務に従事するか、「中小企業診断士実務補習」を受ける必要があります(いずれも15日間以上)。コンサルティング会社などに勤めている人は前者のケースもありますが、そうでない多くの合格者は、後者の実務補習を受けるのが一般的です。
 ただ、実務補習の内容はあまり知られていません。
 そこで、平成24年度の2次試験に合格し、15日間の実務補習をつい先日終えたばかりの日本マンパワー・高橋哲史さんに、実務補習の様子と感想をうかがいました。高橋さんは、「得られることが非常に多い15日間で、受講前と受講後ではコンサルティングに対する思いが変わった」と言います。
 いったいどのような体験だったのか? 貴重な談話ですので、診断士やコンサルティングに少しでも関心のある方は、ぜひご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアクリエイト部 第3課
 高橋 哲史 さん


1社につき5日間の診断実習を3回

 中小企業診断士実務補習(以下、実務補習)は、中小企業診断士試験の2次試験<筆記試験および口述試験>に合格した人だけが受けられる実習で、15日間コースと5日間コースの2コースがあります。いずれも「1社につき5日間の診断実習」3社分行います。15日コースはまとめて3社分を受講し、5日コースは1社ごとに受講(3年以内に3回)することになります。私は15日コースを受講しました。1月末から3月中旬の1カ月半で3社を診断するコースです。
 過去に受講された人と今回の私の経験を考え合わせてみると、診断の内容や細かい段取りは、地区や年度、指導員の先生、診断企業の業種などによって多少異なるようです。それでも、読者のみなさんの参考になるかと思いますので、私の体験をご紹介させていただきます。


診断の流れとグループ内の作業

 実務補習では6人以内のグループが組まれ、メンバーが協力しながら実際の企業の経営診断をします。私は6人のグループでした。
 各グループには「指導員」と「副指導員」の先生が1人ずつ付いて指導してくださいます。もちろん、中小企業診断士として活躍なさっている方々です。私たちのグループでは、1社の診断ごとに先生が交代しました。3社診断しましたから、合計6人の先生に指導いただきました。
 私たちの場合、おおよそ次のような流れで各社の診断を行いました。

<初 日>企業からのヒアリング、現場診断・調査など診断士2
診断対象となる企業の業種によって内容は異なりますが、社長インタビューや現地訪問などを行いました。
<2日目>グループ内での分析・検討
初日のヒアリング等を受けて、診断の方向性についてメンバーと話し合いました。その上で、3日目までの約1週間をかけて、「診断報告書」の原稿を作成しました。診断報告書は1グループで協力して作成しますので、メンバーで執筆個所を分担して進めました。
<3日目>原稿の読み合わせ
持ち寄った原稿を全員で読み合わせて、方向性のずれや診断根拠の甘さなどを確認、修正しました。
<4日目>診断報告書の確認、印刷・製本、報告リハーサル
翌日提出する報告書を細かく最終確認し、印刷・製本をしました。それが終わったら、報告会(企業へのプレゼンテーション)のリハーサルをしました。
<5日日>報告会
診断対象企業の経営者に報告結果のプレゼンテーションをして、診断報告書を提出しました。診断報告書は中小企業診断協会と指導員の先生にも提出します。


初めて会うメンバーと4時間後に企業訪問

 こうして5日間の流れをまとめると事務的に感じられるかもしれませんが、実際には想像以上にたいへんでしたし、想像以上に感動的でした。

 たいへんだったことは大きく2つあります。まず、診断の経験がまったくないのに、初日からいきなり現場で診断をしなければならなかったこと。もうひとつは、その診断を初めて会うグループメンバーと協力しなければならないことです。
 なにしろ、メンバーと顔合わせをしたのは、受講初日、1時間のオリエンテーションが終わった後です。それまでは、メールで簡単な自己紹介をするくらいしか、コミュニケーションの機会がありませんでした。
 そして、1社目の企業ヒアリングはその約4時間後。この4時間で、班長、副班長、書記、会計などの役割分担、企業ヒアリングの内容討議、昼食、診断対象企業への移動をしなければなりませんでした。まだメンバー個々の性格もわからず、診断の経験もない状態で、です。
 しかも、実務補習で求められるのは全般的な診断です。自分の得意分野ばかりではありません。経営戦略、販売・営業、財務、人事・労務、情報、環境・国際化などのテーマについて分担し、自分の苦手な分野であっても診断に臨む必要があります。
 1社目の診断は、そんな手探りの中で行いました。でも、メンバーは全員、診断士試験に合格した人ばかり。みなさん優秀でしたし、日を重ねるごとにチームワークも良くなっていきました。また、診断の対象となる企業の方が温かく接してくれたのも救いになりました。


コンサルタントの醍醐味を実感

 2社目、3社目は、診断の段取りを把握できていたと同時に、メンバーの特性もお互いにつかめてきましたので、スムーズに進めることができました。診断報告書の内容もレベルアップしていったと思います。
 そして、何よりうれしかったのは、診断企業の社長に私たちの提案を受け入れていただいたことです。
 「ありがとう。提案してくれたことをすぐやるよ」と感謝された時は、本当にうれしかったです。「これがコンサルタントの醍醐味なんだな」と実感しました。指導員の先生からも「いい提案だったと思う」と評価され、多少の自信もつきました。

 もっとも、私たちはまだ診断士の卵。それに比べて先診断士3生の発想の柔軟性知識量の豊富さには圧倒されました。企業のピンチをチャンスだと捉えるような視点と分析力を、常に持ち合わせているようです。「自分ももっと勉強しなければ。経験を積まなければいけない」と痛感させられました。
 実務補習15日コースの受講費用は約15万円かかります。最初は、合格したのにまた痛い出費が!と思っていましたが、終わってみると素晴らしい先生2人に1日約1万円で教わることができるのですから、非常に貴重な機会だったと思います。


幸せの拡大に役立てられる“夢のある資格”

 こうして終えた15日間を振り返って、私が強く感じたこと。それは、「コンサルタントの仕事はすごく面白くて、大きなやりがいがある」ということです。診断をリアルに体験できたことで、それが心にズシンと響きました。
 企業の業績が上がれば、経営者は喜びます。同時に、社員の処遇や就労環境の改善につながりますので、社員も喜びます社員の家族も喜びます幸せの拡大に役立つことができるのです。中小企業診断士とは、そうした夢のある資格だと確信しました。

 また、中小企業診断士がすべてのビジネス活動につながることも、目の当たりにしました。たとえば、ある企業が診断士に「財務を改善したい」という要望をしたとします。しかし、財務だけを診断しても解決には至りません。販売や営業のあり方を変える必要があるかもしれませんし、人事や労務のあり方を変える必要があるかもしれません。それらを変えるためには、情報システムやホームページなどのITを導入したり、教育研修制度を改善し診断士4たりする必要が生じるかもしれません。場合によっては、経営方針を見直すべきケースもあるでしょう。
 こうしたことは、たとえコンサルタントにならなくても、日々の仕事に関係してきます。考えながら仕事をすることを目指すのであれば、診断士は非常に活用価値の高い資格だと思います。

 さらに、実務補習を経験して、日本マンパワーの中小企業診断士受験講座の方針が正しかったこともわかりました。以前から日本マンパワーでは、受験テクニックを覚えるのではなく、コンサルティングに活かせる思考プロセスを重視してきました。そうした勉強成果が、今回の実務補習でも少なからず役に立ちました。

 日本の企業のうち99%以上は中小企業。みなさんもぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。「資格だけでは食べられない資格」かもしれませんが、「あらゆるビジネスシーンで活用できる資格」であることは間違いありません。

 

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