ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 vol.32

人に関心の薄かった私が、ここまで変われた

[2018/10/31]

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 子どもの頃からモノづくりが大好きで、大学では石油・石炭・鉱石などの調査や開発、精製を学ぶ資源工学科、社会に出てからはガラスや建築材料の原料となる資源の調査・開発・製造・販売を行う会社で技術畑一筋。
 そんな八木則彦さんは、「人とかかわることに関心がなかった」と言います。それどころか、定年退職時期の迫った60歳直前まで、「自分のことすら考える機会がなく、自分のことをよく知らなかった」ようです。
 それに気づいたきっかけは、日本マンパワーの「キャリアカウンセラー養成講座無料説明会」。「もっと自分のことを知りたい」と養成講座に申し込みましたが・・。

 本記事は、八木さんのキャリアストーリー第2弾です。人は、何歳になっても成長できます。それを八木さんが、自らの体験で教えてくれました。ぜひご一読ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 東海工業株式会社(AGC(旭硝子)グループ)
 技師長
 キャリアコンサルタント
 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
 八木 則彦 さん


実技試験に3回不合格も

 『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)のスクーリングが始まったのは、2015年1月。60歳になる直前でした。
 「60歳を過ぎたらどうしよう」
 「会社に残れなかったらどうしよう」

 そんな不安に包まれながら、何かのきっかけをつかみたい一心で学習を始めました。とにかく、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)を取得するまではがんばろうという意気込みでした。
 ところが、筆記の1次試験はストレートで合格したものの、実技の2次試験は私にとって難関でした。1回目不合格、2回目不合格、3回目も不合格。その間、自主勉強に参加するなどして自分なりに努力したつもりですが、合格の糸口がつかめません。幸い、会社に残れることになったため、資格を取る必要性は小さくなりました。そのためモチベーションも下がり、「私には向いていないのかな」と半分諦めていました。

 そんな時、以前に何回か自主勉強会で一緒に勉強していた人からメールが入ったのです。
 「八木さん、第1回国家資格キャリアコンサルタント試験に向けて勉強会を開催しますので、もしよろしければ一緒に勉強しませんか?」
 たった1通のメールです。でも、メールの文面を読めば読むほど、「もう一度チャレンジしてみたい」との思いが込み上げてきました。このメールがなければ、きっと私は資格取得を諦めていたことでしょう。
 「これが最後のチャレンジ」だと心に秘め、自主勉強会に参加。資格ホルダーの方などいろいろな人にお世話になって、ようやく合格することができました。自主勉強会の幹事のみなさん、自主勉強会でご一緒させてもらったみなさんや、養成講座のクラスメートのみなさんには、苦しい時期を支えていただきました。みなさんあっての合格です。みなさんには心から感謝しています。


その人に興味がないと人の話は聴けない

 今振り返ると、私が2次試験で何度も落ちたことには納得ができます。ロールプレイングの練習をしている時から、「耳に入っているけれど聴けていない」状態だったからです。クライエント(相談者)役が話す声は聞こえています。でも、その人が話した内容を、私が勝手に間違った解釈をしてしまいがちだったのです。
 たとえば、クライエント役の人が「今の仕事をどうしようかと思っているんです」と言ったとします。それに対して、キャリアカウンセラー役の私は、「ああ、○○さんは不安に思っているんですね」とか「迷っているんですね」などと言ってしまうのです。それまで、クライエント役は「不安」とか「迷っている」と一言も発していないのに、私がその人のストーリーや気持ちを一方的に思い込んでしまう。もしかすると、普段の仕事や日常生活でもそうだったのかもしれません。
 また、「人」よりも「事」興味がわきがちでした。たとえば、クライエント役が仕事のことを話し始めると、その人の感情や考えよりも、仕事の内容の方が気になってしまう。クライエント役の人から「仕事の内容を深く突っ込むよりも、私の気持ちを聴いてください」とフィードバックを受けたこともあります。
 そうしたフィードバックを繰り返してもらい、自分に向き合って考えた末に、ようやく実感することができました。「その人自身に興味がないと、人の話は聴けない。人に対して好意的な関心を持つことが大切なんだ」と。「人を支援する前に、自分のことを見つめることが大切なんだ」と。


自分が変われたことがうれしい

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 キャリアコンサルタント、CDAの資格を得た後、私がどのように変わったのか。うまく表現することはできませんが、少しずつ変わってきているように感じています。
 たとえば、ある部下からこんなことを言われました。
 「ぼくは以前の八木さんの方が好きでした。以前の八木さんは、自分の意見を主張して魅力的でした。それなのに、最近の八木さんは何ですか。話はよく聴いてくれるけれど、自分の意見はあまり言わないし、明確に指示してくれないじゃないですか」
 その部下には申し訳ありませんが、私にとってはうれしい言葉でした。「ああ、自分は人の話を聴けるようになったんだ。変わることができたんだな」と確かめることができたからです。
 上司からは別のことで評されました。
「君と話していると、いろんなところに話が及んでしまって、話が終わらないよ」
この言葉にも、「相手が話したいことを話してもらえるようになったんだなあ」と、非常にうれしく感じました。
 お客様への対応も変わりました。以前は、企画書や想定問答の準備をした上で、こちらから積極的かつ一方的に提案していましたが、今は、まずお客様の要望をうかがうようになりました。企画書や想定問答の準備もせず、白紙のストーリーの状態でお客様が求めていることを聴き、それに沿って提案するようにしています。
 また、「仕事を終えたらどうしよう」という将来への不安についても、今は不思議とあまり意識をしません。「その時に自分ができることをすればいい」と自然体で思えるようになりました。

 キャリアコンサルタントとして、自分がどの程度まで成長できているのかはわかりません。客観的にみれば、小さい一歩かもしれません。でも、以前の私は自信過剰で、人に関心の薄い人間でした。そんな私が、人に興味を持ち、ここまで変われたのです。この変化は、私にとって大きな一歩、上出来だと思っています。

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★部下や上司の言葉に、自分が変わることができたことを確認し、喜びを見い出す八木則彦さん。でも実は、八木さんの資格活用はこれだけに留まりません。社内でも社外でも、驚くような取り組みをしているのです。ある意味で、ひとつの素晴らしいロールモデルだと言えます。その内容は来月の同コーナーでご紹介いたします。ぜひご期待ください。
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