時短と進捗管理を助けるメール活用法とは
[2015/06/30]
「業務の効率化」
この課題は、ビジネスパーソン個人にとっても組織にとっても、非常に重要かつ難しい問題です。個人の場合は、タイムマネジメントと併せて、職務内容や個性、チーム特性にフィットした方法を探して工夫することが大切なように思われます。
日本マンパワーには、業務の効率化につながる通信講座が複数ありますが、そのひとつに「仕事で成果を出してプライベートも充実! ワーク・ライフ・バランス実践術」があります。そこでは、業務効率化の有用ツールとして「朝メール・夜メール」が推奨されています。
「朝メール・夜メール」とはどのようなものか。実際に、約2年間実践した上司と部下、お二人の体験談をおうかがいました。当初は「面倒くさそう」と感じたようですが、続けるうちにさまざまな利点を体感できたようです。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアクリエイト部 第2課
課長
相川 千尋 さん
株式会社日本マンパワー
キャリアクリエイト部 第2課
田中 恵子 さん
業務計画・業務結果をチームで共有
——朝メール・夜メールを始められたきっかけはなんでしょうか?
相川 ちょうど通信講座「仕事で成果を出してプライベートも充実! ワーク・ライフ・バランス実践術」を開発していた時、チームメンバーの1人が「いろいろメリットが大きそうなので、私たちのチームでもやってみませんか?」と提案したのがきっかけです。2012年のことです。当初は3人で始めました。
田中 私は約2年前にこの課に異動してきましたので、それ以来ということになります。メンバー全員に送るようにとの課長からの声がけで始めました。
——そもそも、朝メール・夜メールとはどのようなものなのでしょうか?
相川 個人の1日の業務内容について、朝の出勤時と夜の退勤時にメンバー全員にメールで送って、情報共有を図るものです。朝メールには、その日の自分の業務計画を記載します。夜メールには、朝立てた計画がどの程度実行できたか、結果を記載します。「ワーク・ライフ・バランス実践術」のテキストにはそのサンプルが掲載されていますが、私たちはとくに書式にはこだわっていません。個々人が使いやすいフォームで自由に作成しています。
田中 実際、相川さんはWordの表組に入力していますが、私はExcelに入力しています。
—— 一見すると、この程度の予定を朝と夜にメールしても、それほどのメリットはなさそうに思えますが、実際にやってみていかがでしょうか?
相川 私はマネジメントをする立場ですが、自分の実務も抱えていますので、メンバー個々の業務の中身までは詳しくわかりません。でも、朝メール・夜メールを始めてからは、メンバーがどのような仕事にどのくらいの時間をかけているか、業務の中身がよく把握できるようになりました。メンバーの仕事の見える化ができたことは大きなメリットです。
——メンバー個々の進捗管理がわかりやすくなったということでしょうか?
相川 そうですね。特に、部下の残業が多かったり、仕上がりが遅かったりすると、上司はイライラするものです。でも、朝メール・夜メールのおかげで、部下の仕事が遅い理由が手に取るようにわかるのです。むしろ、「こんなにたくさんの仕事をしてくれたんだね」と、ねぎらってあげたくなります。
また、チームには育児時短で働いていたメンバーがいたのですが、そのメンバーの不在時でも、業務内容が共有化されていますので、別のメンバーが対応しやすくなりました。メンバー間で相互サポートをする際も、簡単なミーティングだけで調整できるようになりました。
業務工程を細分化して段取りを考える
——部下の立場からするといかがでしょうか?
田中 私は当初、「面倒くさそう」「計画を立てるよりも先にやっちゃった方が速いんじゃないかなぁ」と思っていました(笑)。強制されたわけではありませんので、やらなくても良かったのですが・・。でも、なるべく早く帰れるようにするために試しに参加してみたのです。ところが、異動したばかりで、業務の内容もわからなければ、それにかかる時間も予想できない。ですから最初は、朝メールの計画を立てることができませんでした。
相川 確かに最初は少し辛いかもしれませんね。
田中 でも、5ヵ月ぐらい経つと習慣化されてきました。そうすると、少しずつ業務改善に向けて工夫できることがわかってきました。
——どのような業務改善でしょうか?
田中 自分自身の業務のプロセス管理です。たとえば、企画書を作成するという仕事があるとします。それを「企画書作成3時間」と朝メールで計画すると、予想以上に時間を要したりして、計画通りに仕事が終わりません。そもそも、計画の段階で所要時間を把握できていなかったり、段取りに無駄があったりするからです。
そこで、業務の工程を最小単位まで細分化することにしました。そうして続けていたら、自分が何にどれくらいの時間をかけているのか、どのような段取りで進めるのが効率的なのかがわかってきたのです。工程を見える化することによって、仕事の全体像を整理して把握できるようにもなりました。
また、たとえばほかのメンバーの仕事を手伝う時には、自分のどの業務を後回しにすればいいかなど時間配分も非常に楽になりました。予定外の突発的な業務が入った場合でも、調整しやすくなりましたね。
相川 そのように仕事を細分化するため、15分単位で入力できるようにしています。
——朝と夜にメールを送るだけなのに、そこまで改善できるものなんですね。
田中 仕事の段取りを自分で考えて工夫するようになったことが、大きな要因だと思います。仕事の全体像を捉えながら、「工程をどのような順序で組み立てるか」「ほかの人にどの工程をお願いするか」「予定が狂った場合にどのように組み替えるか」など、本当に考えるようになりました。
相川 田中さんは、朝メール・夜メールのフォーマット自体もすごく工夫してブラッシュアップしています。
田中 いくつかの仕事を同時並行で進めていますので、抜けや洩れがないように備忘録欄を作ったり、翌日以降に残っているタスクを一覧化して見られるようにしたり、Excelのシートを活用して、自分の業務を一元管理できるようにしました。
【Excel版の朝メール・夜メール】
コミュニケーションを深めるツールとしても
——でも、仕事って予定通りに進まないことが多いですよね。
相川 本当にそうです。急な会議が入ったり、なんだかあたふたして終わったり。でも、「いったい私は今日1日何をしていたんだろう?」と振り返ることが大事なんだと思います。私はそれを振り返って改善のきっかけにしたいとの思いもあり、データに残る朝メール・夜メールを活用しています。
——ほかに、何かメリットはありますか?
相川 この人は何時まで忙しいけれど、何時ごろから比較的余裕がありそうだから、話しかけられるかな、とメンバーへの配慮ができますね。
田中 そこまで見てくださっていたんですか? こんな感じで、上司が自分のメールを読んでくれているというだけでうれしいですね。以前も、私の残業が長かった時、「こんなに多くの仕事を頼まれていたんだね。たいへんだったね」と、相川さんが声を掛けてくださったことがあります。うれしかったです。
相川 朝メール・夜メールはメールで送りますけれど、フィードバックは直接話します。「これどういう仕事?」とか「調整しなくて大丈夫?」とか。その際も、メールである程度まで情報共有されていますので、より深いコミュニケーションができていると思います。
——会社全員でやるといいかもしれませんね。
相川 いえ、強制して嫌々やると逆効果になるかもしれません。朝メール・夜メールは業務報告としての位置付けではなく、自主的な情報共有だと捉える方が、うまく機能するように思います。上司のためにやっているのではなく、自分のためにやっているのですから。
田中 でも、本当に効果があると思いますよ。ただ、やり続けてみないとその良さは実感できないかもしれません。習慣になると楽しいですよ。計画通りに仕事が終わると快感です。
相川 1日5分間もかかりませんし、会社によっては日報や月報の元データにもなると思います。タイムマネジメントやチームマネジメントの一環として、試してみるのもいいかもしれません。