「学習する組織」を日本企業で活かせる人材を養成
[2013/03/27]
みなさんの会社では、部門間による対立・葛藤、あるいは役職者と一般社員との対立・葛藤はありませんか? たとえば、営業部門と製造部門がお互いに文句を言っていたり、経営者やマネジャーが「会社を良くしよう」と考えて施策を打ち出しても、部下は不平・不満を言うだけで動かなかったり・・。
そうした組織の課題を解決する手法として注目されているのが、「組織開発」です。組織開発は、米国の著名な社会心理学者、クルト・レヴィン博士(1890〜1947年)が創始者だと言われ、ピーター・M・センゲのベストセラー『学習する組織』で改めて注目されました。
その『学習する組織』の内容を咀嚼解説し、さらに『U理論』や『プロセスワーク』などを学ぶことで「組織を変革できる人材」を養成する——そんな講座を、年1回・20人限定(予定)で日本マンパワーが提供しています。
「なんか難しい理論のお勉強会?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。「会社を良くしたい」「会社を良くするために自己成長したい」と考える管理職層、事業マネジャー、人事担当者の方にぜひお勧めしたい、体験学習を取り入れた実践的講座です。
その概要を講座担当者にうかがいましたので、組織の変革と成長にご関心のある方はぜひご一読ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
研究開発グループ
黒田 留以 さん
組織内の対立・葛藤から起こる悪循環を断ち切る
業種を問わず、どのような組織にも、人間関係の対立や葛藤があると思います。しかもそれが、単なる個人同士の相性やコミュニケーションの問題だけではなく、部門間・部署間の対立・葛藤であったり、上司と部下、役職者と一般社員との対立・葛藤であったりするケースも見られるのではないでしょうか。
あるいは、「昔はがんばれば成果が上がったけれど、最近はどうも思うように成果が上がらない。組織もうまく機能していないような気がする」「社内の協力態勢やコミュニケーションが不足していて、さまざまな問題が生じてしまう」という状況が生じている会社もあるでしょう。
そうしたケースでは、おそらく悪循環のプロセスが生じていると思われます。たとえば次のようなプロセスです。
(1)成果が芳しくない
→(2)「社内他者の行動に問題があるのでは?」と疑問を持つ
→(3)「社内他者の思考・意識が足りない、間違っている」と判断する
→(4)社内の関係性が悪くなる
→(5)組織としての機能が低下する
→(6)成果が芳しくない
もし、こうした悪循環のプロセスがあるとすれば、どこから変えればいいでしょうか? こうしたテーマについて考え、好循環への変革を実行できる人材を養成しようとするのが、日本マンパワーの「組織開発ファシリテーター養成講座」です。
組織を効果的に機能させるために
今お話ししたような日本企業が直面する問題は、従来の手法ではなかなか解決できません。課題を解決するためには新しい手法が必要とされるということになります。
その手法の一つが、「組織開発」です。組織開発とは、「組織がより効果的に機能するように、ハード・ソフトの両面において変革させていく理論または手法の総称」だと言えるでしょう。組織開発の考え方では、組織内に何か問題が生じた際、個人へのアプローチだけで解決しようとするのではなく、組織やチームへのアプローチによって改善を図ろうとします。また、体制や評価制度など組織設計だけを対象にするのではなく、人の心理や捉え方など組織構成員の内面のプロセスまで掘り下げます。
ピーター・M・センゲのベストセラー『学習する組織』(2011年、英治出版)を読まれると、いくつかの事例が紹介されていますので、よくおわかりいただけるかと思います。
『学習する組織』をベースとしたプログラム
日本マンパワーの「組織開発ファシリテーター養成講座」は、まさに『学習する組織』の考え方をベースとしてプログラム化しました。もっとも、『学習する組織』を解説するだけの講座ではありません。次のようなプログラムについても、それぞれ1日あるいは2日かけてじっくりとワークショップを行います。
◇対話プログラム
ワールドカフェ、A.I.、OST、マスストーリーテリングなど、ホールシステム・アプローチと呼ばれる大勢での対話手法を体験し、理解を深めます。
◇自己変革から組織変容へ
集団や組織の葛藤を乗り越えるために、言葉だけでなく隠れている関係性や人の内面に目を向ける「プロセスワーク」を体験し、変革者に必要な視点を獲得していきます。
◇U理論
変革のプロセスやリーダーのあり方を学び、自分の思い込みやこだわりから脱却するワークを体験します。
◇日本人にとっての真の自律とは
MBTIと呼ばれる国際規格に基づいた性格診断を通して、自己理解や他者との関わりの視野を広げ、考察を深めます。
現象の表層と深層のずれに気づけるか
プログラムだけではイメージしにくいかと思いますので、簡単な例をご紹介いたします。
たとえば、ある会社で企画会議があったとします。それは部長も出席する会議でした。しかし、なかなかいい案が出ません。そうした時、部長が腕組みをしながら、反り返った姿勢で、怒鳴るような声で、次のような言葉を投げつけました。
「もっと自由に発言してくれよ。俺はオープンなんだから」
この部長の一喝でメンバーは萎縮し、意見はますます出なくなりました。
部長は、言葉で「オープン」と言っているにもかかわらず、心理や態度がまったくオープンでないことがわかります。周囲のメンバーもそれを察知し、自由に発言することを止めてしまいます。
このように、「言葉によるメッセージ」と「言葉以外によるメッセージ」が違うことは、往々にしてあります。組織内の対立に関しても、表層と深層にずれが生じている場合があります。
<営業部門と製造部門との対立の事例>
たとえば、営業部門が「納期が遅い、4日間で造ってくれ」と文句を言い、製造部門は「品質を保つためには5日間は必要」と対抗していたとします。「4日だ」「いや5日だ」と両者ケンカ腰です。しかし実は、営業部門は製造期間を短くするのを望んでいるのではなく、「この品質だったら、4日間で造れないと他社に負けてしまう」と、裏に品質に関する問題意識を持っていたのです。ただ、品質を要求するとさらに工期納期が遅くなってしまうと憶測し、「この程度の品質なら、せめてもっと早く造ってくれよ」という思いから出た文句でした。
表面的には納期でもめているように見えながら、本質的には品質の問題だったのです。品質を論点に話し合っていたら、もしかすると解決していた問題かもしれません。
こうしたずれによるトラブルはよくあることです。みなさんも、自分自身が気づいていないだけで、同じようなことをしているかもしれません。それを防ぎ、改善するためには、自分の嫌な内面にも目を向けるとともに、他者のメッセージを見抜く力が必要とされます。
「自己変革から組織変容へ」というプログラムでは、こうした理論を学ぶとともに、ワークを通して自分の内面を振り返ります。
組織の前に、自分を変えて成長する
組織開発を遂行できるような人材になるためには、知識を得るだけでは足りません。自分自身が変革・成長することを求められます。ですから、「組織開発ファシリテーター養成講座」では、受講生が自分自身の固定観念やこだわりを見つめ、それを超えることを重視しています。
自分を見つめることはある意味で苦痛も伴いますが、過去の受講生からは非常に高い評価をいただいています。「自分は本当に変わった」「ほかではできない体験ができた」と、受講後のご自身に満足されているようです。その証拠に、受講された方が別の知り合いを紹介するというケースが多くなっています。
知る人ぞ知る、各分野の第一人者を講師として仰ぎ、自分を高めていただければ幸いです。