「やってみる」ことが自分を育てる
[2007/12/20]
かの有名なディック・ブルーナの絵本を見て、「ミッフィーちゃんの顔ってカンタンに描けそう!」と常々思っていました。ミッフィーちゃんというのはウサギのキャラクターで、輪郭の中に黒い目が2つ、×型の口を1つ描けばできあがりです。でも・・・絵本を見ながら真似しても、私の描いたミッフィーちゃんは全然かわいくありません。どこかバランスが違うのです。みなさんもぜひ一度挑戦してみてください。結構ムズカシイですよ。
このように、「見るのとやるのとでは大違い」ということ、ありますよね。仕事だってそうです。餅は餅屋、馬は馬方。専門のプロの技は、素人が真似したってかないません。私だってがんばれば、いつかはミッフィーちゃんを上手に描けるようになれると思うのですが・・・。その前に、どうやってがんばればプロの技に近づくのかしら?
その答えこそ、「見るのとやるのとでは大違い」という言葉にヒントがあるそうです。
(肩書き・氏名)
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー 人材開発営業本部 東京営業部 第3課
黒田 留以 さん
− 『期待されている役割』が人を成長させる −
「私が教育・研修関係の会社で働いてきて痛感するのは、人を最も育てるのは『期待されている役割』だということです。もちろん、研修や通信講座などの勉強によって成長することもたくさんあります。自主的な勉強は自分を高めるために欠かせないことです。ただ、そうした勉強以上に大切なのは、『勉強しなければならない環境』だと思うのです。
たとえば、今度の4月から課長に昇進する人を対象にマネジメント研修を行うとしましょう。そこで問題となるのは、4月より前(昇進する前)に研修を行うのがいいのか、4月以降(昇進した後)に研修を行うのがいいのか、ということです。2回行えるのであればそれに越したことはありませんが、研修を受ける人にとって『腑に落ちる』のは、おそらく後者でしょう。実際に課長職に就いてみて初めて、いかに管理職の仕事が難しいかがわかり、勉強の必要性を自ら感じるからです。
管理職ばかりではありません。役職のない一般の社会人であっても、責任のある仕事を任されることによってモチベーションが上がり、『あの人は急に仕事ができるようになった』と周囲から認められることは少なくありません。『期待されている役割』によって人が成長する典型的なケースと言えます。もし、みなさんにそうしたチャンスが訪れたら、尻込みなどしないで、ぜひ役割を担ってみてください」
− 経験によって初めて
課題が見つかることも −
「また、みなさんが自分を変えたい、自分を高めたいと少しでも考えているのであれば、ぜひ『やってみる』ことをお勧めいたします。その内容は人それぞれだと思いますが、どんなことであっても百の勉強より一の経験の方が優ることがあるからです。
たとえば部下や後輩のコーチング。望ましいコーチングをするためには、対話によって相互の信頼関係を築き、部下・後輩の目標設定をサポートするなど、いくつかの理論があります。しかし、理論を勉強したからといって、必ずしも望ましいコーチングができるわけではありません。『聞くのとやるのとでは大違い』だからです。
実際にコーチングをしてみて初めて課題が見つかり、その課題を解決するために理論を勉強する。そして、もう一度実践する。そうした反復が能力を育てるのです。
資格試験でも同じことが言えます。単にテキストを読み進めるだけでなく、問題集や模擬試験を行って自分の弱点を知ることによって、それまで以上にテキストの内容を理解することが可能になります」
− プレッシャーは自分を高める
"サポーター" −
「どんなことであっても、新しくチャレンジすることはうまくできないかもしれません。いや、おそらく最初からうまくいくことは稀でしょう。ただ、自分が当事者となって『やってみた』人は、傍から見ただけではわからない『新しい気づき』と出会えるはずです。それだけでも大きな前進だと言えます。
そして、その気づきを解決・活用することができれば、今度はそれが本物の能力として自分に身につきます。ですから、みなさんが何かを身につけたいと思ったら、『まずはやってみる』ことをお勧めします。できればそこに、『やらなければならない環境』があればベストです。プレッシャーは大きくなると思いますが、そのプレッシャーは、きっとみなさんを大きく育てるサポーターとなるはずです」