2年目のモチベーション低下をフォローアップする
[2015/05/27]
「こんなはずじゃなかった!」
「思い描いていたイメージと違う!」
新入社員として入社してから一定期間経つと、こんな思いにぶつかることがあります。理想と現実との間にギャップが生まれて衝撃を受ける——いわゆるリアリティ・ショックです。誰もが必ず一度は体験するものだと言われます。
『新入社員意識調査2014』(日本マンパワー)を見ると、入社時と入社2年目時の意識傾向の違いがよくわかります。たとえば、仕事への不安がある人のうち、不安の内容が「自分のモチベーション維持」に「あてはまる」と答えた割合は、どのくらいだと思われますか?
実は、新入社員が12.4%であるのに対し、2年目社員は35.6%と、3倍近くになっています。「少しあてはまる」を含めれば、2年目社員の約70%が「自分のモチベーション維持」に不安を抱いているという結果も出ています。
このように、モチベーションの低下してしまった2年目社員に対して、周囲はどのようなフォローアップをすればいいのでしょうか? 日本マンパワーの西村広隆さんに、新入社員育成の見地からお話をうかがいました。ご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
研修事業部
部長
西村 広隆 さん
入社1年でモチベーション維持への不安が増大
リアリティ・ショックは誰もが一度は抱くことです。特に、初めて社会人となった新入社員にとって、そのショックは大きいことでしょう。
1万人以上を対象に調査した日本マンパワーの『新入社員意識調査2014』では、入社直後の1年間で仕事への意識が大きく変化するという結果が出ています。
Q:仕事に対する不安、それは何に対する不安でしょうか?
◇自分のモチベーション維持
新入社員 「あてはまる」12.4%、「少しあてはまる」27.2%
2年目 「あてはまる」35.6%、「少しあてはまる」34.2%
Q:やりたい仕事、もしくは今の仕事について、今どのように感じていますか?
◇自分が成長できる
新入社員 「あてはまる」60.2%、「少しあてはまる」32.4%
2年目 「あてはまる」14.0%、「少しあてはまる」35.0%
◇社会の役に立っている
新入社員 「あてはまる」40.9%、「少しあてはまる」39.1%
2年目 「あてはまる」12.0%、「少しあてはまる」28.5%
◇主体的に取り組める
新入社員 「あてはまる」37.3%、「少しあてはまる」42.1%
2年目 「あてはまる」 9.5%、「少しあてはまる」31.0%
つまり、入社して1年が経つと、モチベーション維持への不安が大きくなり、仕事に対する「成長している感」「役に立っている感」「主体的取り組み感」が低下するという傾向があるのです。
新入社員が一人で悩みを抱え込まないように
こうしたモチベーションの低下や仕事への意識の変化に対して、どのように対策を講じるかは、離職率にも大きく関わってきます。企業各社においても重要な課題になっているのではないでしょうか。
ここで大切なことは、新入社員に多くの人がコミュニケーションをとることです。
けっしてOJTトレーナーに一任すべきではありません。なぜなら、人間関係は複雑なものだからです。もし、新入社員とOJTトレーナーが円滑な人間関係を築けていなかったとしたら、新入社員はOJTトレーナーに本音を話さないでしょう。たとえ人間関係が円滑だったとしても、忙しそうにしているOJTトレーナーに遠慮して話しかけられないことがあるかもしれません。
かと言って、その先輩を飛び越えてマネジャーなどの上司に話すのも、おそらく気が引けることと思われます。そうすると、職場で相談する人が誰もいないという状況が生まれかねません。
2つの効果をもたらすフォロー研修
では、OJTトレーナーのほかに誰がコミュニケーションすべきかという問題ですが、日常的には現場のマネジャーや先輩が主体となります。ちょっとした声掛けだけでも構いません。声を掛けることを面倒だと思う人もいるかもしれませんが、新入社員にとって、それは「自分は見守られている」「自分は大切に扱われている」と確認できるからです。
また、2年目になるちょっと前くらいのタイミングで新入社員フォロー研修を実施すると非常に効果的です。フォローアップ研修とも呼ばれ、以前から取り組まれている会社もあるかと思います。
フォロー研修の内容は目的や状況によってさまざまな組み合わせで構成することが可能ですが、大きく分けると2つの効果があります。
1つは、同期と久しぶりに顔を合わせ、自分を開示して話をすることによって、「もやもやしているのは自分だけじゃないんだ」と安心することです。同じ新入社員の立場の人が集まることで、悩みを共有できたり、前向きな刺激を受けたりすることができます。いわゆるガス抜き効果です。
もう1つは、1年間の自分を振り返ることです。経験を振り返ることで「入社してからどのくらい成長できたのか」を確認できます。自分の成長を確認できれば、自己肯定感も高まり、将来に対して前向きに考えられるきっかけになるでしょう。
また、自分の仕事がどのような役割を果たしているのかを再確認することにもつながります。「つまらない仕事だと思っていたけれど、実は顧客サービスにつながる仕事なんだなあ」などと意味を捉え直すことができれば、仕事への意識を切り替えることが可能になります。
これらの効果に、入社時研修の復習や新たなスキルアップの付与などを追加すれば、次年度以降を見通した育成の足掛かりにもなるでしょう。
人事担当者による面談も重要
併せて、できればフォロー研修に人事担当者による個別面談の時間を設けることをお薦めいたします。なぜなら、新人育成において人事担当者は重要なキーパーソンだからです。
もしかすると人事担当者の中には、「配属されると現場マネジャーの管轄になるので、思うようにコミュニケーションがとりづらい」という事情があるケースがあるかもしれません。しかし、人事担当者が新入社員と対話をしたり行動観察をしたりすることは、人事情報を入手する手段として非常に大切なことです。
また、新入社員にとって人事担当者は直属の上司とは異なる第三者の立場ですから、職場で言いにくい本音も話しやすいという利点もあります。本音に潜んでいる価値観や志向性を把握しておくことは、長期的な観点で重要なことだと思います。
たとえばフォロー研修中に1人15〜30分程度の時間を設けて、仕事や職場についての気持ちを聴くだけでもいいと思います。可能であれば、キャリアカウンセリングをして本人の経験をじっくりと振り返り、仕事への意味づけを自分なりに変えるサポートをする。そうすれば、先ほどお話ししたフォロー研修の2つめの効果も、さらに深められます。
人事担当者による個別面談は、できれば半年に1回、年に1回などと定期的に行われると理想的でしょう。ある会社では、そうした取り組みによって離職率が0に近づいた例もあります。人事担当者の面談には、それほど新入社員に影響を与える力が備わっているのです。組織の成長・発展にも本人のやりがいにもつながるものと思われます。