自分の将来の可能性を拡げ、職業人生後半をハッピーに
[2014/07/30]
定年退職して再雇用者の立場になると、給与が下がり、単純な仕事につかざるを得ない。自分よりかなり年下の正社員が上司となり、仕事へのモチベーションが下がってしまう。だからといって、悠悠自適の暮らしをしようと思っても、家庭で疎まれる・・・
こうした定年後の生活は、けっして誇大な話ではありません。すでに多くの人がそうした現実に直面し、今後はさらに厳しい状況になる可能性があるそうです。
想像しただけでとても物悲しい気持ちになりますよね。
でも、必ずしも全員がそうなるわけではありません。今まで以上に幸せを感じられる可能性は十分にあります。そのために、できれば早い時期からしかるべき準備をしておきましょう!
先月、シニア世代の実情を教えてくださった日本マンパワーの秋本暢哉さんに、「職業人生の後半をハッピーにする準備」についておうかがいしました。ミドル世代の方もぜひご参照ください。●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
人材開発営業部
ソリューショングループ 専門部長
マネジメントコンサルタント
秋本 暢哉 さん
職業人生の後半をハッピーにできる人
今後、私たちの職業人生は長期化していくことが予想されています。ただ、定年後の職業人生が充実したものになるとは限りません。現在の状況を企業の人事担当者にうかがうと、むしろ、「これまでと同じレールでは走れず、不本意さを感じながらも別のレールを歩かざるを得ない」という現実の方が一般的です。シニア世代に限らず、誰もがそうなる可能性を拭えない時代だと言えるかもしれません。
しかし、「職業人生の後半は暗いものになる」と決めつけるべきではありません。実際、環境の変化を見ながら、後半の職業人生をハッピーに過ごしている人はたくさんいます。早期退職して自分のやりたいことを実現している人もいれば、自分の役割を社内でうまくチェンジしている人もいます。ただ、そうした人たちには、自分の強みを活かせるように道筋をつけて準備してきた人が多いように思います。
経験があるからこそ発揮できる強みがある
職業人生の後半をハッピーに過ごそうと思っても、その対策を会社に頼るだけでは実現しにくいでしょう。なぜなら、その結果が冒頭にお話ししたような、再雇用で不本意な仕事につかざるを得ないという現実となっているのですから。
組織に大きな期待を寄せられないとすれば、ハッピーを実現する主体は自分しかありません。ひとつの方法として挙げられるのは、会社から与えられる仕事を待つのではなく、自分の経験を活かせるような仕事に自らシフトしていくです。できれば、若年層には持ち得ないようなベテランならではの強みがいいでしょう。そうした強みをアピールすれば、スムーズにキャリアチェンジしやすくなりますし、成果も出しやすいからです。
ただ、望むような仕事が所属組織にあるかどうかはわかりません。場合によっては自分の強みを活かすための仕事を自分で創り出す必要があるかもしれません。あるいは、複数の仕事を融合して新しい役割を提案するのもいいでしょう。
たとえばIT業界であれば、プレイヤーとしてシステム開発をするのではなく、顧客の業界に合わせた全体設計のコンサルティング的立場が考えられます。ITそのものに携わるのではなく、ITを活用した新しい提案をする。そうしたことは、長い経験に培われた広い知識があってこそのものではないでしょうか。
キャリアカウンセラーにしても、10年前の日本でほとんど認知されていませんでしたが、ここ数年で急速に注目を集めるようになりました。今や、国が一定規模以上の企業にキャリアカウンセリングの機会を義務づけようとするほどの存在になっています。たとえ現在、所属する会社にキャリアカウンセラーがいなくても、自分がそれを任されるように仕向けることはできないでしょうか。キャリアカウンセラーはビジネス経験が長く、知識の幅や視野の広い人の方が適していますので、まさにシニア世代にしかできない役割を創出できるでしょう。
自分の強みや持ち味を整理してみる
自分の強みを発揮するためには、産業界の動向をウォッチングすることも大切です。
たとえば、プログラム言語のひとつにCOBOL言語というものがあります。現在のシステム開発ではほとんど使われなくなった言語ですが、金融業界などではCOBOL言語のシステムがまだ運用されています。このCOBOL言語によるシステム・メンテナンスへのニーズが、今非常に高いのです。メンテナンスできる人材が高齢化して引退しており人材が不足しているからです。
こうした情報を知っていると知らないとでは、自分の活かし方が大きく異なってきます。会社や業界の動きを予測するのは難しいとは思いますが、もしかすると同業他社においてすでに何らかの動きを示しているかもしれません。そうしたことを知ろうとアンテナを張っておくことが、自分のリスク管理につながるように思います。
また、会社のOB・OGに話を聞くのも効果的だと思います。同じ会社にいた人であれば、業種・職種的にも大いに参考になるでしょう。場合によっては、そうした行動をきっかけに「一緒にやろう」と声をかけられるなど、新しい可能性が拓けてくるかもしれません。
そうした意味で、一度、自分の強みや持ち味を整理してみることをお勧めいたします。みなさんお忙しいとは思いますが、自分自身のことを整理したり、今の仕事・職場とは異なるルートを考えてみたりすることは、将来の可能性を拡げるきっかけになるかもしれません。現在携わっている仕事が将来どのようにつながっていくかを展望する意味でも、非常に意義あることだと思います。