ちょっと一息

キャリアの探し方・作り方 vol.14

採用面接を成功に導く自己アピール術

[2008/02/28]

 自己アピール術といっても、「がんばります。やる気があります!」と目に炎を燃やし、気合を見せる方法のことではありません。どんなに激しく熱い気合を見せても、それだけで採用面接をクリアできるほど、就職・転職は甘くありませんから。
 人材採用面接時の自己アピールとして大切なことは、面接官が聞きたい『答え』についてアピールすることです。自分がアピールしたいことだけを訴えても、自己満足に終わってしまいがち。面接は人と人との対話であり、面接官に試験される場なのですから、面接官の求める『答え』とマッチングしたアピールで、志望企業への入社をめざしましょう。
 それでは、面接官の『答え』とは何でしょうか? 一般的には、「意欲」「資質」「適応性」だと言われます。このうち、「意欲」については先月のキャリ達でご紹介しました。そこで今月は、「資質」について詳しく掘り下げます。

 アドバイスしてもらったのは、面接官としての経験が長く、キャリアカウンセラーでもある田中稔哉さん。自分のスキルや経験を最大限に有効活用する方法を教えていただきました。特に、転職を考えている人には参考になると思います。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアセンター支援推進部 企画課
 田中 稔哉 さん



− 自分のスキルの根拠を示す −
 「転職などでみなさんが中途採用の面接を受けると、必ず『以前に勤めていた会社では、どのような仕事をしていましたか?』と聞かれるはずです。面接官は、なぜそのような質問をするのでしょうか? それは、応募者の資質、いわゆるスキルを推し量るためです
 そうした質問に対して多くの応募者は、作業内容を説明したり、仕事の成果を言い飾ったりします。たとえば、『こんな重要な仕事を全うしました』『このような素晴らしい営業成績を上げました』などのように。ただ、そうした回答だけでは、面接官がスキルを推し量る情報として不足しています。また、面接官は面接のプロです。応募者の言い飾った言葉を鵜呑みにはしません。スキルが高いか低いかの評価にあたっては、必ずその根拠を見い出そうとします。
 みなさんが面接管に対して効果的に自己アピールするためには、その根拠を示せるか否かが大きなキーポイントとなるのです。
 面接官が見い出そうする根拠とは、仕事の成果だけではなく、その成果を得るに至った過程です。ですから、どのような動機・プロセスによって仕事を行い、どのような障害を乗り越えてきたかをしっかりと説明しましょう」



− 「スキルを再現できる」と納得してもらう −
 「さらに、スキルが高いことを証明できたとしても、それだけで採用に直結するわけではありません。会社が異なれば、必要とされるスキルも異なるからです。
 その意味で、面接官が本当に知りたいことは、応募者が強みとして訴えているスキルが『自社で再現できるかどうか?』です。実は、応募者が以前の会社で発揮したスキルを説明している時、面接官は『そのスキルをわが社に当てはめると、どの職場でどのように発揮できるだろうか?』とイメージしながら聞いています。
 ですから、面接官の抱くイメージが膨らむように、次のような内容をストーリーにすることが望まれます。

  【動 機】なぜその仕事に関わったのか。
  【プロセス】取り組み始めてからの経緯。また、仕事の内容。
  【障 害】トラブルや苦難などの具体的経験。
  【人 脈】プロセスや障害の過程で出会った人。
  【スキル】仕事を成し遂げるために、どのようなスキル(経験や資格など)を使ったか。
  【成 果】どのような成果を上げ、会社にどう貢献したか。
  【習 得】仕事を通じて、自分が身につけたこと。

 こうしたことを説明し、その上で、
  『この経験が普段の生活や仕事にどのように活かされているか』
  『この仕事を経験することによって、このようなことに気づいた』
  『今の自分なら、このような方法で対処できるようになった』
などについてまで説明することができれば、面接官はあなたの言葉を信用してくれるでしょう。そして、『この応募者のスキルであれば、自社でも再現できる』と判断してくれる可能性が高くなるはずです」



− 苦手・嫌いを克服して成長した経験を話す −
 「仕事以外の話題でのアピールポイントは、自分が成長した経験です。それを効果的に示すには、『やりたいことをやって成長した例』よりも『気の進まないことや苦手なことをやって成長した例』の方がベターでしょう。
 たとえば、『数学が非常に苦手で嫌いだったのですが、サークルの会計係を任されたことをきっかけにソロバンを習い始めたら、苦手意識がなくなり、数学に関心がわいてきました』などの例です。
 なぜこうした例がベターかというと、入社してから壁にぶつかったり不満が生じたりした時でも、『自分で対応して乗り越えてくれるだろう』という安心感を面接官に抱かせるからです。何か苦難が生じた際に、前向きに進んでいく社員なのか、それともストップしてしまう社員なのかは、会社にとって非常に重要なことなのです。
 その理由を、総合商社の例で説明しましょう。総合商社はさまざまな商品を扱っています。当然、社員は自分の興味ある商品だけを扱うわけにはいきません。高校の化学が嫌いだった人が化学製品を扱わなければならないケースもあるでしょう。そうした時、『化学は苦手ですから商品知識がわかりません』では仕事になりません。『化学は嫌いだから部署を変えてください』も通用しません。努力して適応すべきです。
 面接官は、将来の幹部として期待する社員には適応力を求めます。そして、そうした人材の方が『スキルを自社で再現できる可能性が高い』と判断されやすいのです」





− 面接官が理解しやすいように配慮する −

 「なお、面接時のアピールや説明にあたっては、『面接官は別の時代・別の世界を生きてきた人である』ということを認識してください。つまり、共通の認識や常識を持っていないことを前提に『相手が理解しやすいように話す』ということです。
 往々にして、若い応募者の話は言葉足らずのケースが見受けられます。友だちや同僚であれば言葉足らずでも理解してくれるかもしれませんが、面接官は初めて会う人です。最近の略語を知らないかもしれませんし、業界用語を知らないかもしれません。もし、『面接官は人を見抜くのが仕事なのだから、言葉が足りなくても理解してほしい』と思っている人がいたら、その考えは甘いとしか言わざるを得ません。面接という場は自分を説明するための場なのですから、わかりやすく話せるよう準備して臨みましょう。そのためには、日頃から異世代・異業種の人と話す機会を設けると役に立つかと思われます。

 みなさんの就職・転職が成功することをお祈りしています」

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