ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方vol.54

セカンドランナーの女性が活き活きと働くために

[2013/02/28]


 「ずっと仕事を続けたいけれど、仕事ばかりじゃ嫌。家庭も大切にしたい」
 「できれば退職はしたくない。でも、出産も育児もしたい」
 「今の会社で長く働きたいけれど、管理職にはなりたくない」
 ビジネスシーンで女性が活躍するのは当たり前の時代になりました。ただ、こうした悩みやジレンマを抱く女性は多いのではないでしょうか。女性1
 その一方で、女性にリーダーシップをとってほしいと期待を寄せる会社・団体が多くなっています。しかし残念ながら、必ずしもうまくいっているとは限らないようです。たとえば、次のような嘆きの声もよく聞かれます。
 「ウチでは女性の活躍を推進しているし、管理職の女性比率も上げたいと思っている。そのために研修も実施している。でも、リーダーや管理職になってがんばりたいっていう女性社員がなかなかいないんだよね」
 どうやら、女性本人と組織との間に見えないギャップがあるようです。
 こうしたギャップを埋め、双方のプラスになるような方法はないかと考えて開発されたのが、『女性向けキャリア開発研修 For−W』です。同研修の開発を担ったプロジェクトメンバー3人に、女性特有の考え方や取り巻く環境、開発秘話などを、座談会形式でうかがいました。今号からシリーズでご紹介いたします。


●座談会出席者
 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 研究開発グループ
 小出 真由美 さん

 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 ソリューショングループ
 木下 幸代 さん

 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 事業推進グループ
 嶋 美乃 さん


女性が仕事とプライベートを切り離すのは難しい

——そもそも、なぜ女性向けのキャリア開発研修を企画されたのでしょうか?
木下 日本マンパワーには従来から、個人の強みを明確にして将来ビジョンを描くことで、仕事へのモチベーションを高めるための研修メニューがあります。これは男女の差異を区別することなく、多くの場合は男女一緒に研修を受けます。
 ただ、研修の中でグループディスカッションをしたりペアで話したりすると、どうしても男女間に温度差が生じてしまいます。女性が自分の想いを語っても、男性には共感が得られない。それに女性が違和感を抱き、「本音で語れなかった」とか、「会社の研修だから仕方ない、とその場だけで終わってしまうような、見せかけのビジョンになったような気がする」などの声を耳にすることがあったのです。そこで、「女性だけを対象にした、本音で語れる腹落ちした研修が必要だね」という話になりました。

——たしかに、女性と男性とでは意識や環境の差があるかもしれませんね。
小出 近年は、イクメンという言葉が出てきたように、育児をする男性も増えてきました。でも、男性は出産できませんし、母乳をあげることもできません。昔の日本に比べれば男女平等に近づきつつあるのでしょうが、現実的にはどうしても女性に負担がかかりがちです。
 一方で、たとえば「出産したら子どもがかわいくて、職場復帰する気持ちが薄れてしまう」「出産後に職場復帰しても、仕事は時短制度を使ってソコソコに抑えて、家庭中心の生活をしたい」と思う女性も少なくないと思います。
木下 私自身も子育てをしてから職場復帰した1人ですが、子どもの具合が悪くなったりすると、遅刻や早退をせざるを得ないということがありました。そんな時は職場のみなさんに申し訳ないという気持ちになりますし、周りの目が非常に気になりました。ただ、「私が仕事やプライベートでどうなりたいか」のビジョンがはっきりした時、「周りの目を気にしてもしようがないな」と思えるようになりました。
女性2小出 「女性にも次世代のリーダーとして活躍してほしい」と期待している会社はたくさんあります。でも、女性本人が仕事とプライベートとを併せた将来イメージを持てていない面が見受けられます。ですから、必要以上に人間関係に意識が向いてしまったり、その時その時のライフイベントだけを優先してしまったりするのだと思います。もちろん、出産休暇や育児休暇などで家庭に重心を置く時期も必要です。ただ、それだけで仕事を諦めるのは本当にもったいないことです。女性にもひと花もふた花も咲かせてもらいたいと思うのです。

——第一線で活躍されている女性も多いように思いますが。
小出 おっしゃる通りです。すでに管理職の立場で活躍なさっている女性トップランナーは、もちろんいます。ただ、私たちが新しい研修で対象としているのは、それに続くセカンドランナーの女性です。セカンドランナーとは私たちが名付けたもので、将来のリーダー候補・管理職候補として今後の活躍が期待される人材を指しています。
 でも、セカンドランナーの実態は違っています。厚生労働省のデータや弊社独自の調査で、「リーダーや管理職になるのに消極的」「仕事にやりがいを感じているけれども、将来の自分に迷っている、または具体的に将来を考えられていない」「仕事ばかりの人生ではなく、結婚や出産などのライフも満たすことを理想としている」ような女性が多いことがわかりました。
小出 すごく優秀なセカンドランナーでも、トップランナーを見た時、「私はあんな風になれないな」「ほかにもやりたいことがあるので、そこまで仕事をしたくないな」と思うケースが多いのです。そんなセカンドランナーの想いや背景を無視して、組織が「管理職になってほしい」「仕事へのモチベーションを上げてほしい」と要求しても、本人たちの心には届きませんよね。
木下 ですから、キャリアとライフを両方一緒に考える女性だけの研修を開発しようと企画したのです。「キャリアもライフも両方充実させようよ」と。こうした研修はおそらく日本で初めてだと思います。


私たちにとって働く意味って何だろう

——研修開発にあたって、プロジェクトはどのように展開されたのでしょうか?
 私たちと今産休中の女性社員の4人で、何カ月にもわたってミーティングしました。ひとつひとつのテーマについて、何時間も「ああでもない、こうでもない」と話し合ったのです。最初に話したテーマは「私たちにとって働く女性3意味って何だろう?」ということです。
木下 そうしたら、全員が違っていました。
 私は「社会人としての責任」や「義務」のような内容。楽しく働きながらも、そういう意識がベースにあるという話をしました。
木下 私は子どもの存在が大きくて、「子どもを育てるため」「子どもに働く楽しさを伝えたい」「未来の子どものために今の仕事を残したい」などのことを話しました。
小出 私の場合は、「社会とずっと関わっていきたい」とか「やりたいことができる」とかもちろん「生活するため」ということもあります(笑)。もうひとりの産休中のメンバーは、「社会をよりよくするため」というような非常に視座の高い目標がありました。
 転職や家庭の事情など、みんなのバックボーンが違いますし年齢も違いますから、仕事への価値観もバラバラでした。同じ会社で働いている4人だけでもこんなに違うのだから、もっといろいろな女性がいるんだろうなということが改めてわかりました。同じように仕事をしながらも、そこにぶら下がっている気持ちや持っている経験・事情が、みんな違うのです。
小出 その後、「女性の特有の感情にはどんなものがあるのだろう?」とか、「どういうことで仕事や会社が嫌になっちゃうのだろう?」など、女性を取り巻くテーマで何度も話し合いました。
木下 それで出た結論が、「ぶれない自分」が大事だということです。

——「ぶれない自分」とは、自分の根幹のようなものでしょうか?
小出 はい、「自分はこうだ」というものです。それは将来ビジョンかもしれませんし、モチベーションの源泉かもしれません。その「ぶれない自分」がないと、何か問題が生じたり、周辺環境が変化した時に気持ちがぐらついて、「もう無理だ」「できない」「辞めちゃおう」などの感情が表れるのだと思います。
木下 周囲の目を気にする分、妬みや嫉みなど、マイナスな感情などを内に秘めてしまうことも多く、人間関係女性4にも敏感なので、「ぶれない自分」がないと揺れ動きやすいのです。たとえば「年上の先輩を差し置いて自分が管理職に就いたら、みんなにどう思われるかな」という感情が働く女性も多いと思います。その点は、男性と大きく異なる点だと思います。
 私も「管理職になりたくない」と思っていますが、その理由は「誰かの上に立つタイプではないし、その度量もない」と自分を捉えているからです。上に立つ人のサポートをする方が、自分の能力を発揮できると思っています。
小出 嶋さんはまさしくセカンドランナーなんです。だから、プロジェクトの話し合いでは「嶋さんはどう思う?」って何度も質問しました。
 私に響かない研修だと、ほかの人にも響かないでしょうから(笑)。
木下 最終的には、セカンドランナーの女性に共感いただき、「ぶれない自分」を作っていけるような研修プログラムになったと思います。

★座談会の続きは来月以降の同シリーズでご紹介いたします。

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