「あ!これがキャリアカウンセリングなんだ」研修に参加して
[2015/06/30]
人とのかかわりや対人支援において、キャリアカウンセリングが注目されています。
キャリアカウンセリングを受けることによって、クライエント(相談者)は、自分の経験を客観的に眺めることができ、その経験の中に自分の大切にしているものを見つけ、経験に自分なりの新しい意味づけをして、将来に向けて前向きな姿勢になることができる、と言われます。
また一方で、キャリアカウンセラーが異なるとキャリアカウンセリングの内容が変わってくる、とも言われます。たとえ同じクライエントによる同じ相談内容であっても、キャリアカウンセラーの心がけによって、2人の話の方向性が大きく異なってくるようなのです。
これら2つの現象について、なんとなくイメージできますでしょうか? 抽象的な表現ですからわかりにくいかもしれませんね。
日本キャリア開発協会では、2つの現象がなぜ生じるのかを実感・学習できる1日研修を行っています。以前、本コーナー「ハッピーキャリアの作り方 vol.79」でご紹介した『あ!これがキャリアカウンセリングなんだ』という研修です。
この研修では、
キャリアカウンセリングとはどのようなものか?
キャリアカウンセリングの本質は何か?
キャリアカウンセラーは何を目指し、何を意図すればいいのか?
などについてワークを行いながら学ぶことができます。果たしてどのような研修なのでしょうか? 本研修を受講したキャリアカウンセラーに概要と感想をおうかがいしました。ご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
キャリアカウンセラー(CDA)
水谷 一生 さん
レクチャーで「キャリアカウンセリングの基本」を学ぶ
私が受講したのは5月30日、土曜日の10時から18時までです。受講者は全員で18人。教室内の座席は、6人×3グループに分けられていました。私のグループは、男性2人・女性4人、CDAの資格を持っている人とそうでない人との比率は半々でした。
当日のメイン講師は、日本マンパワーの「キャリアカウンセラー養成講座」通学コースでも教鞭をとられている堀上晶子先生。ほかに、各グループでのワーク時に参加してくださる2人の先生も控えていました。
●10:00〜11:40 レクチャー「キャリアカウンセリングとは」
JCDAスタッフによるオリエンテーション、講師3人のあいさつ、グループ内での相互自己紹介の後、座学によるレクチャーが始まりました。
最初の学習テーマは「キャリアカウンセリングとは何か」。キャリアカウンセリングの目的について、10分ほどお話がありました。
次に「カウンセリングの基本とは何か」のレクチャー。以前、資格取得に向けて学習した内容ですが、改めてレクチャーを聞くと整理されて頭に入ってきます。なかでも、「キャリアカウンセリングは事柄に焦点をあてるべきか、それとも人に焦点をあてるべきか」のお話は、改めて自分を戒めるものとなりました。
普段、職場での話はほとんど、事柄に焦点があたっています。「あのプロジェクト、進捗状況はどう?」とか「その案件は調達に問題ありまして、今調整中です」等々。多くのビジネスパーソンには、事柄に焦点をあてる習慣がついてしまっているようです。
でも、キャリアカウンセリングでは人に焦点をあてます。ここではその説明を省略しますが、簡単に言えば、人は誰しも事柄を主観的に捉えるため、その主観、つまり「人」に焦点をあてなければキャリアカウンセリングの目的を果たすことができないということです。
その後、「自己概念について」「経験について」「経験代謝サイクル」「経験の再現」「キャリアカウンセリングの心がけ」などについて、みっちりとレクチャーを受けました。私は特に、「経験の再現」について具体例を含めて説明してもらえたのが、大きな収穫でした。
【レクチャーを受けての感想】
「大事なポイントだけを説明されるので、キャリアカウンセリングの基本を捉えやすいなあ」と感じました。ただ、内容は非常に密度が高く、レクチャーを聞きながら頭をフル回転させていました。キャリアカウンセリングの学習を始めて約1年、CDA資格を取得して数ヵ月に満たない私にとっては、とてもいい復習になりました。
ケース検討を通して、目指すべき「心がけ」を学ぶ
休憩をはさんで、次のプログラムは【ケース検討】。実際に行われたキャリアカウンセリングの録音を複数種類聞いて、どのようなキャリアカウンセリングが望ましいかを学習するプログラムです。
●11:50〜14:45 ケース検討
キャリアカウンセラーの心がけが異なると、キャリアカウンセリングの方向性が大きく異なると言われます。それを目の前にありありと突きつけられたように感じたのが、このケース検討の時間です。
私が最も驚いたのは、1人のクライエントが同じ内容の相談をしているのに、相談を受けるキャリアカウンセラーが違うだけで、話の内容がまったく異なる方向に進んでいくという事実です。
わずか10分足らずのキャリアカウンセリングなのに、なぜ異なる方向に進んでしまうのか? それをグループで話し合いました。いろいろな意見が出ましたが、一言でまとめるならば、やはり「心がけが違う」としか言いようがありません。
キャリアカウンセラーが「何に焦点をあてるのか」「何に関心を抱くのか」「クライエントのどの言葉に反応するのか」「何に共感するのか」「どのように問いかけるのか」等々は、キャリアカウンセラーの心がけによって天と地ほど離れていくことがよくわかりました。
同時に、「キャリアカウンセリングの技法は何のためにあるのか?」「キャリアカウンセラーは何をしようとすべきなのか?」を考えさせられるプログラムでした。
なお、資格を持っていらっしゃらない人でも十分に理解・実感できる内容でした。グループディスカッションでも、有資格者とほとんど同じような意見が出されましたので、初学者でも心配することはないと思います。
【ケース検討をしての感想】
ケースの音声を聞くだけではなく、逐語録(録音をテキスト化したもの)も配付されたため、非常にわかりやすいと感じました。
また、このケース検討をしながら、「じゃあ、自分の心がけはどうなのだろう?」と振り返ることができたのも良かったです。もっとも、この時点では「たぶん、私の心がけは正しいだろう」と思っていたのですが・・この後のプログラムでその自信が覆されることになります・・。
自分の未熟さを確認できた、ロールプレイの実践
●15:15〜18:00 ロールプレイとフィードバック
研修もいよいよ終盤。15時過ぎからは、グループごとに分かれてロールプレイと個別フィードバックをしました。キャリアカウンセリングの実践です。グループメンバー全員が順番にキャリアカウンセラー役とクライエント役を1回ずつやる段取りで、どちらの役もしていない時はオブザーバー役をします。つまり、自分がキャリアカウンセリング役をする時は、オブザーバー4人+先生に見守られているということです。
私は、資格試験時にキャリアカウンセラー役をして以来、ほとんど実践学習をしてきませんでした。そのせいか、望ましいとは言い難い出来でした。
まず、クライエントの経験の中の気持ちをていねいに聴けませんでした。どうしても、私が言いたいことが先行してしまう。そのせいだと思いますが、クライエント役の人から「表面的なことしか聞かれませんでした」と指摘された時は、軽いショックを受けました。先生からは、「自分の考えを押しつけぎみ」「もっとゆっくりとクライエントの経験を聴くといい」などのアドバイスをいただきました。
【ロールプレイをしての感想】
自分ではレクチャーやケース検討を理解していたつもりですが、頭で理解したことを実践する難しさを痛感しました。先生のアドバイスは的確で「さすがプロフェッショナルだなあ」と、その眼力とわかりやすい説明に感服しました。
また、恒常的に実践学習をしていないと、能力向上どころか能力維持でもできないことを、身をもって知らされました。
【1日を通しての感想】
ロールプレイは本当に勉強になりました。なかでも良かったのは、ほかの5人のキャリアカウンセリングを聴けたことです。人によってスタイルや進め方がまったく違っていて、自分を振り返るきっかけになりました。なかにはすごく上手な人もいて、非常に参考になりました。
いろいろな情報交換もできました。特に、資格を持っていない人は、有資格者にいろいろなヒアリングをしていたようです。
また、「言いたいことが言える」「聞きたいことを直接先生に質問できる」ことも、この研修のすばらしい点だと思います。実は私は、レクチャーで納得できないことがあったのですが、自分が納得できないことに対して意見し、ほかの人の意見を聴ける機会をいただけました。みなさん、貴重な時間を割いていただきありがとうございました。こうして、初めて会う人がお互いに親身になって話し合える場は、キャリアカウンセリングを介した集まりならではだと思います。
自分のレベルが未熟であることを再認識し、改めてキャリアカウンセリングのあるべき方向性を確認できた1日でした。「資格はないけれど、キャリアカウンセリングの本質に触れてみたい人」「資格を持っているけれど、キャリアカウンセリングを実践する機会が少ない人」にはお薦めの研修です。
★「あ!これがキャリアカウンセリングなんだ」の詳細はコチラ
https://www.j-cda.jp/newsform/schedule1_detail.php?id=187#nittei
【先着順】2015年7月20日(月・祝)東京開催のお申し込みはコチラ
https://www.j-cda.jp/seminar/seminar_detail.php?id=939
【先着順】2015年8月2日(日)東京開催のお申し込みはコチラ
https://www.j-cda.jp/seminar/seminar_detail.php?id=940