あの時、一歩を踏み出したおかげで今の私がある
[2018/05/30]
「名古屋駅に新しく建設された、話題の高層ビルに行ってみたい」
そうした思いもあり、派遣スタッフ登録のために高層ビルへ出掛けたのが33歳の時。それがきっかけで、その人材サービス会社に契約社員として入社し、3ヵ月後には正社員に登用された林きよみさん。知人からCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)のことを教えてもらい、『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)に通い始めると・・。
衝撃に次ぐ衝撃。まったく知らなかったキャリアの考え方に目から鱗が落ち、自分と比べて、クラスメイトの視点の高さ、視野の広さに気づかされたと言います。
しかし、そのおかげで「物事の捉え方が大きく変わった」という林さん。仕事でもますます活躍し、東海地区のコーディネーター責任者にまでなりました。
本記事は林さんのキャリアストーリー最終話。名古屋で活躍していた林さんに、会社から東京への転勤が打診されます。果たしてどのような道を選ぶのか?
その後の歩みについて、ご本人にインタビューしました。林さんの資格活用はきっと参考になると思います。ぜひご一読ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
人材サービス会社
就職・転職支援行政機関 副統括責任者
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
林 きよみ さん
東京に転勤するか、名古屋に残るか
東京への転勤を受けるかどうかは、いくつかのポイントがありました。
まず一つは、私は総合職として働いていましたので、転勤を断るためにはエリア限定社員に変わらなければならないということです。でも実は、名古屋にいながらにして、すでに東京の本社の仕事をしていたのです。つまり、エリア限定社員になるということは、仕事は同じでも処遇が変わるという意味で、望ましいことではありませんでした。
もう一つは、転勤したら関連会社に出向するという条件でした。その出向先は、大手人材サービス会社3社が共同出資した会社で、派遣契約を管理するシステムを開発・提供しています。私にとって経験のない仕事です。「派遣業務に関してはひと通りのことをやってきたので、新しい別の仕事にも携わってみたいなあ」。そんな興味が非常にわいてきました。
また、東海地区のコーディネーター責任者の立場を後継に譲ることや、腰を痛めて寝たきりになっていた母の介護も終わり、自分で行動ができるようになったことも影響しています。
これらを考え合わせて、東京への転勤を受け入れました。
過去のつながりや経験が役立っている
出向先のシステム会社では、当初、主にシステムを導入する派遣先企業への説明を担当していました。それが半年後には、外部委託しているコールセンターの品質向上プロジェクトに加わり、コールセンター品質に関する国際認定取得に向けた活動を担当することになりました。そのために、私自身も認定者としての資格を取得しました。
国際認定が無事に取れてからは、コールセンターのサービス維持、システム改善のための利用者フィードバック、BCP(事業継続計画)対策のための新規センター立ち上げなどに関わった後、出向を終えました。
その後は現在に至るまで、行政機関からの受託事業として、30歳から50歳代前半までの方を対象とする就職・転職支援の副統括責任者をしています。仕事内容としては、部門のマネジメントと、広報・セミナー企画を担当しています。
こう振り返ってつくづく思うのは、「過去のつながりや経験が役立っている」ということです。
名古屋でNPO活動のボランティアスタッフをしていた時、セミナー運営のお手伝いをさせていただいたのですが、それが今、セミナー運営で非常に役立っています。また、CDAの面接試験対策でビデオ撮影してクラスメイトフィードバックをもらっていてことが、今、就労支援の面接対策やグループディスカッションのトレーニングに役立っています。
一方、「まだまだ勉強しなければいけない」と感じる面もあります。就職・転職支援を利用される人はさまざまな特性・事情をお持ちですので、みなさんに最適の対応をするためには、常に勉強を重ねていくことが不可欠だと考えています。
お酒を飲みながらキャリアを話せる場
仕事以外の面では、東京に来たことによって人とのつながりがさらに広がりました。
年に1回、全国のCDA有志が集まる大会があるのですが、2016年の東京大会で、私は運営委員に応募して活動しました。そうしたら、さまざまなCDAの仲間と知り合いになり、つながりの輪が一気に大きくなりました。同時に、新しい活動の場も自然にできていきました。
たとえば、あるワークショップに参加した時、「いつか、おでんとワインのお店をしてみたい」とお話ししました。以前から、お酒を飲みながらキャリアについて話せる場があればいいなあと思っていたからです。すると、一緒にワークをしていた人から「場所を貸してもらえるところがあるから一緒にやろうよ」という話に展開し、CareerBAR(キャリアバー)という名称でイベントを立ち上げることになりました。今も、CDA仲間3人で年3回ほど不定期で開店しています。このように、ひと言発信したことが実現してしまうところは、CDAのつながりの大きな魅力だと思います。
最近は、口から入るものと出るもの、つまり食べ物と言葉が非常に大事だと確信し、そのキーワードで人と人とをつなぐ場ができたらいいなあと、漠然と考えています。
CDA仲間で「女性の定年後」を考える
また、50歳以上の女性のCDA仲間で集まる定期的な勉強会&飲み会も始めました。基本的なテーマは、「キャリアを支援する自分」と「これからの自分のキャリア」とを考えることです。今では知り合いが知り合いを呼んで、メンバーが20人くらいまでになりました。
最近の主要な話題は「女性の定年後」です。なぜなら、ニュースや書籍、セミナーなどにおいて、定年を意識した50歳以上の生き方・働き方の論点が、ほとんど男性視点のものしかないからです。おそらく、これまでは定年を迎える女性が少なかったからでしょう。しかし、今後はそうした女性が間違いなく増えてきます。ですから、女性の社会的役割の変化も含めて、「女性の定年後」についてもっと掘り下げて考えていければと思います。
このように、『キャリアカウンセラー養成講座』に申し込んだことが転機となり、私の人生は大きく変わりました。もし養成講座に申し込んでいなかったら、おそらく仕事に対する考え方も変わらなかったでしょうし、CDA仲間とのネットワークも築けていません。もしかしたら、今の仕事にも辿り着いておらず、まったく別の道を歩んでいたかもしれません。
一歩踏み出すだけで、人生が変わるきっかけになることもあるのです。そうした一歩によって多くのみなさんとつながることができて、本当にうれしく思います。