ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 vol.35

キャリア相談室で若手MRを支援するために早期退職を決断

[2019/02/28]

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 大手外資系製薬会社でMR(医薬情報担当者)として活躍。38歳でマネジャーに昇進し、社内でも有数の営業成績を収め、所長や営業部長も務められた村尾光英さん。そんな営業畑で働いてきた村尾さんが、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格を目指したのには、いくつかのきっかけがあります。がんの発見、ライフプランセミナーの受講、採用面接官の担当、CDA合格者との出会い、キャリア相談室への相談・・。「若手MRの苦労や悩みに応えたい」という思いも、ずっと抱いていたようです。

 本記事は、村尾さんのキャリアストーリー第2弾です。56歳の時、「このまま営業の道を歩もう」と考えていた村尾さんは、キャリア相談室で働くことにも関心が出てきました。そして、名古屋で営業部長を務めながら、日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)を受講します。
 果たしてその後、何をどのように考え、どのような活動に変化していくのでしょうか? ぜひご一読ください。

●今回お話を聞いたのは・・・
 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
 2級キャリア・コンサルティング技能士
 産業カウンセラー
 村尾 光英 さん


仲間と楽しく学習し、CDAに合格

 『キャリアカウンセラー養成講座』を受講したのは2013年です。当時はまだキャリアコンサルタントが国家資格化されていなかったので、CDAを目指しての受講ですスクーリングは、とても充実した時間でした。インストラクターの先生もクラスの仲間もいい人ばかりで、楽しく学習することができました。日本マンパワーの養成講座はクラスを振り替えて受講することができるので、あえて異なるクラスで受講して多くの仲間と知り合えたのも、私にとっては喜びでした。
 そうして、2014年に無事合格。CDAの資格を得ることができました。

 ただ、資格を取ったからといって、すぐにキャリア相談室で働き始められたわけではありません。その頃は本社にデスクを置き、ある部署の西日本統括をする責任者として、業務に専念していました。また、キャリア相談室は、正社員が働いているのではなく、会社を退職したOBが業務委託の形で請け負う制度になっていたのです。
 そうした中、社内で早期退職の公募がありました。早期退職すれば、退職金に上乗せがあります。早期退職してキャリア相談室の仕事ができればいいなあ」と、勝手に皮算用していました。


資格活用vol35-②

たとえ早期退職に応募しても・・

 ところが、自分の思いどおりに事は運びませんでした。人事部長は別の考を持っていたのです。
 「早期退職とキャリア相談室の業務委託は、まったくの別件である。キャリア相談室に行くことを、退職する前に約束することはできない。それでは公平性を保つことができない。そのため、キャリア相談室の業務委託の条件については、君が退職した後でないと情報を公開できないし、交渉も受け付けられない」
 つまり、私にとっては「キャリア相談室で働くといくらもらえるのか」「果たして本当にキャリア相談室で働けるのか」などがまったくわからない状態で、「早期退職するかどうか」を決めなければならなかったのです。
 難しい選択でしたが、2015年の1月、早期退職に応募しました。しかし、職を失うわけにはいきませんでしたので、転職することも視野に入れました。幸い、ある製薬会社から部長職の内定をいただきましたが、キャリア相談室の結論が出るまで、内定の返事を待ってもらっていました。


想像以上に低い金額を提示されて

 人事部長からキャリア相談室の業務委託条件を聞くことができたのは、早期退職応募から1ヵ月半後です。しかし、その内容は想像していた以上に低いものでした。退職前の給料の半分以下です。人事部長を前に、驚きと怒りが混じり合ってしまいました。
 「そんなに安いんじゃあ、やっていけません。もういいです。ほかの会社に転職します」
 そう啖呵をきって、部屋を飛び出しました。ところが、飛び出した途端ものすごく落ち込んでしまいました。家に帰り、2時間ほどじっと考え込んでいたように記憶しています。
 その姿を見た妻が何かを感じ取ったようです。平常心を保てなかったので内容はよく覚えていませんが、いろいろと話を聴いてくれました。そしてこう言われました。
 「あなた、結局はキャリア相談をやりたいんじゃないの?」
 確かにそうでした。キャリア相談をやりたいという自分の本心に気づきました。妻に気づかせてもらいました。
 「だったら、会社に連絡して謝ればいいでしょ」
 それも、妻の言うとおりでした。すぐに会社に電話を入れてアポイントをとり、人事部長にすみませんでした。やっぱりやります!」と頭を下げてお願いしました。


資格活用vol35-③

セミナー・ワークショップで社内認知度アップ

 同年の5月から、私は晴れてキャリア相談室で働くことになりました。キャリア相談室はそれまで1人の先輩OBが担っていたのですが、私が入ったことで2人になり、部署名もキャリアデザインセンターに改称しました。
 ちなみに、この先輩こそ、私にCDAの資格取得を勧めてくれた人です。彼は、元々開発部の部長だった方で、MR活動について詳しくご存知ではありませんでした。ですから私に対しては、MRがキャリア相談を気軽に受けることができる体制づくりを期待されていました。
 もちろん私もそのつもりでしたので、まずはMRのみならず本社や工場を含めキャリアデザインセンターの認知度を上げることを考えました。そのため、キャリアセミナーやキャリア自律を目的としたワークショップを全国各地で地道に実施しました。まず、キャリアデザインセンターのセミナー等は有意義だという評価を得るとともに、守秘義務の遵守を徹底していることを伝えました。また、社員全員に配信していた「キャリアデザインセンターからの手紙」も頻度を上げて配信し、キャリアを考えてもらうきっかけづくりにも努力しました。その甲斐があり、営業部・本社を問わず、面識のなかった組織長などからも問い合わせが来るようになりました。セミナーやワークショップの依頼や相談は徐々に増えて行き、同時に個人からのキャリア面談の依頼も増えていったのです。
 また、キャリアデザインセンターは東京の本社に設置されています。ですから、もし地方で働くMRが相談しようと思ったら、自分で交通費を出して上京しなければなりません。普通に考えれば、そこまでして相談しようと思う人はほとんどいないでしょう。ですから私は、こちらから地方に出向ことを全国に周知しました。また、2回目の面談からは対面に加え、よりタイムリーに面談できるようスカイプも活用していきました。
 このように、セミナーなどで信用を得て、地方のMRも気軽にキャリア相談できる体制をつくり上げ面談数を増やすことに成功しました。本社にいて申し込みを待っているだけではキャリア相談は増えません。工夫と行動力は必須だと思います。
 おかげさまで、面談件数は年々増加し、当初は年間60件くらいだったのが、2016年には約110件、2017年・2018年も約120件に伸びました。
 企業でのキャリア相談は、資格を得るこが1歩目、職を得るこが2歩目、面談体制の構築と社員から信用されることが3歩目だと思います。
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★長年勤めていた会社のキャリアデザインセンターで第2の道をスタートさせた村尾光英さん。この後、貪欲に学び直し、4歩目、5歩目に進んでいきます。その内容は・・来月の当コーナーでご紹介いたします。ご期待ください。
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