ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方vol.35

キャリア支援で人と関わるときの姿勢

[2011/06/29]

 

キャリア1 人事・労務担当やマネジャーの立場にある人から、近年の新入社員・若手社員について、次のような思いを聞くことがあります。
 「おとなしすぎる」
 「自分で考えて行動できる若手が少ない」
 「何を考えているのかよくわからない」
 「とことんマイペース」
 もちろん、ほかにも多くの思いがあることでしょう。特に、キャリア支援や人材教育・育成を担当している方は、本人たちと直接お話しする機会が多いうえ、職務面での課題・目標もあるでしょうから、考えさせられる点が多いのではないでしょうか。
 「人との関わり」の中で「人の変化」を促していくことは、本当に難しいものです。そこで、キャリア支援を日々推進する原恵子さんに、「人と関わるときの姿勢」についてうかがいました。何かのヒントとしていただければ幸いです。


●今回お話をうかがったのは・・・
 原 恵子 さん
 〔主な資格〕CDA、産業カウンセラー、心理相談員、認定MBTIユーザー

Career Seed 代表
日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座(通学コース)」講師
教育出版社、派遣会社を経て独立。現在は、キャリア支援に関わる実践と研究に取り組む。キャリアカウンセラーなどキャリア支援職者に対する専門家教育やスキル向上支援、産業領域を中心としたキャリア開発やコミュニケーション分野の講師として活動。その一方で、筑波大学大学院(人間総合科学研究科)においてキャリア支援職者の職務特性や職業的発達についての研究を継続させている。(※経歴は取材当時のものです)


他人事や被害者意識の原因

 キャリア形成の支援をする人にとっての最終目標の一つは、おそらく、本人の当事者意識を高めること」ではないかと思います。当事者意識を高めることによって、「自ら考え、本人が自他や環境を理解・評価し、自分なりの基準を持ち、行動する」ことに結びついていくのではないでしょうか。そうしたプロセスの中で、自らを動機づけし、自分自身をコントロールしていく感覚が高まり、それは結果として職務満足感や自己効力感(やればできるという感触)の向上にもつながっていくと言えます。
 企業が目指す社員像として最近よく聞かれる「自律型社員」という表現も、「当事者意識の高い社員」という意味合いに近いのではないかと思います。

 その一方で現実には、自分のことであるにもかかわらず「他人事」のようなスタンスの人や、うまくいかない原因を周囲や環境に求める「被害者意識」を持つ人もいます。
では、キャリア支援をする立場から考え、そうした意識になっている人や社員に対して、どのように関わっていけばいいのでしょうか。様々な解はあると思いますが、姿勢として大切なことは、他人事のようなスタンスの原因や被害者意識を持つ原因を本人だけのせいにしない、広い視野で眺めて見る、ということです。


キャリア支援者に求められる“まなざし”

 他人事のようなスタンスの人や被害者意識を持つ人には、本人をそのようにさせた「何か」があるはずです。「何か」とは、事情や背景や理由、環境などの要素を指しています。そして、その「何か」は、本人が望んで作ったものではないケースが多いようです。

キャリア2 ですから、たとえば「あの新人は積極性に欠ける」と感じたら、それを本人だけのせいにして済ませたり、責める気持ちを抱くのではなく、
 ・何か事情があるのだろうか?
 ・どのような理由や背景があるのだろうか?
 ・何か職場環境や風土が影響しているのだろうか?
 ・どのような人間関係なのだろうか?
 ・上司や先輩との関係はどうだろうか?
 ・どのような教育を受けてきたからだろうか?
 ・生活面での悩みでもあるのだろうか?
などと、「何かが本人をそうさせているのではないか」という“まなざし”で考えてみる姿勢が大切になります。

キャリア支援の分野で注目されている「傾聴」や「対話」・「内省」という方法論についても、こうした“まなざし”が根底にあるのではないでしょうか。


「共に成長する」という感覚

キャリア3 他者に対して、こうした“まなざし”を多少なりとも意識することができれば、人との関わり方はずいぶんと変わってくるのではないかと思います。また、人との関わりを通して「共に成長する」という感覚を持てるようになるかもしれません。人に関わり、人が変わっていくプロセスに伴走することは、自分自身にもきっと影響します。たとえば、
・ものの見方や捉え方が柔軟になっていた…
・たくさんの可能性や選択肢を描くようになっていた…
・視野が広がった…
・多様な人とのコミュニケーションを自然にしている自分に気がついた…
・他者との共通点や相違点から自分なりの価値観や判断基準が明確になっていった…
など、様々な形で自分の成長を感じる瞬間が増えていくのではないでしょうか。
 
 もちろん、キャリア支援をする立場だけではなく、職務上の役割や責任も求められる思います。ですから、場合によっては、本人を指導したり叱咤激励したりする必要が生じることもあるでしょう。それを踏まえたうえで、両面のバランスをはかりながら人と関わっていくことが、大切なポイントだと言えるかもしれません。どうか、「共に成長する」ことを楽しんでください。

 みなさんのご活躍の参考になれば幸いです。

 

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