65歳までの雇用延長をどうする?
[2013/04/26]
4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行されました。これにより、移行期間はあるものの、企業には「本人の希望があれば65歳まで雇用する義務」が生じます。社員本人にとっては、「希望すれば65歳まで働き続けられる」ということです。
この動きと連動するように、今、50歳代社員のモチベーションアップや処遇が注目されています。雇用延長が実現すると、たとえば55歳に役職定年となってから退職するまでの期間が10年に延びます。これまで「定年までの数年をぼちぼちと」という働き方が許容されていたとしても、今後はそういうわけにはいかなくなるでしょう。総人件費が増大するため、企業は戦力としての活躍を求めるでしょうし、50歳代社員本人はそれに応えることが求められるからです。
企業と50歳代社員——その双方にとって重要な鍵を握るのが「モチベーション」です。日本マンパワーの海野さんに、モチベーションアップの重要性と支援施策についてうかがいました。ご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
人材開発本社統括部 営業コンサルティンググループ
リーダー(部長)
海野 寿雄 さん
10年間もごまかし続けられない
高年齢者雇用安定法の改正によって、50歳代社員に対する施策に各社が本腰を入れ始めました。それは、法人への営業や日本マンパワー主催の人事・労務担当者向けセミナーを通して、ひしひしと伝わってきます。
従来は、たとえば55歳を役職定年としている会社では、60歳までお互いにごまかしながら働いていたような状況だったと言えます。
役職定年した本人にとっては、責任ある地位から外れたことでモチベーションが下がり、年下の上司の部下になることでさらにやる気がなくなってしまう。「でも、定年まで籍を置いてもらえるなら、ぼちぼちと仕事をしながら置いてもらおう」という感じで、自分の気持ちをごまかしていたように思います。
一方の企業にとっては、今まで役職だった50歳代社員を使いづらく、腫れ物にさわるように5年間をやり過ごしていたのが一般的ではないでしょうか。
しかし、65歳まで雇用延長されると、そういうわけにはいかなくなります。10年間もごまかしの状態を続けるのは難しいからです。
また、少子高齢化によって新入社員も採用しにくい状況で、雇用延長されれば総人件費の増大につながります。ですから企業の立場から見れば、50歳以上の社員を戦力化して成果につながる活躍をしてもらうことが、大きな経営課題となります。
そこで重要になるのが、本人のモチベーションです。本気で働いてもらうためには、高いモチベーションが欠かせません。
モチベーションを高めるための支援サービス
社員のモチベーションを高めることは難しい課題ではありますが、日本マンパワーでは50歳代社員のモチベーションを高めるための支援サービスをご提供しています。
たとえば、50歳代社員向けの「キャリア&ライフプラン研修」。これは、充実した職業人生に向けて仕事と個人生活を合わせたライフプランを考えるとともに、定年まで(定年後)の会社貢献分野と課題を明確にするものです。
また、「ライフ&マネープラン研修」では、定年後も視野に入れた今後の生き方や働き方を考え、それに向けたモチベーションアップと行動促進を図ります。さらに、マネープランの基礎知識を習得することで、将来に対する経済面での不安の払拭を図ります。
40歳代〜50歳代社員向け「キャリアデザイン研修(CDS研修)」では、周囲の環境変化を肯定的に受け止めて、新しい方向性を確立し、モチベーションの維持・向上を図ります。
これらはいずれも集合研修で、企業担当者の反応は非常に大きくなっています。
ただ、私にも経験がありますが、こうした研修を受けた時は前向きな気持ちになりますが、職場に戻ると目の前の業務課題が山積みで、それをこなすのに毎日が忙殺されてしまいます。そして、気がつくとあっという間に数年が経ってしまうのです。
ですから、研修を1回だけして済ませるのではなく、研修後のフォローアップとして個別カウンセリングや上司向け研修など、連動した施策が非常に大切になると思います。
本人が腹落ちしているかどうかが大切
日本マンパワーではほかにも、雇用延長と総人件費との間で生じる問題を解決するための人事制度の見直しや、60歳以上の人に働いてもらうための新しい職場設計、再雇用が決まった人にモチベーションを高めてもらう意識転換研修、再雇用後の職務提供が難しい場合の再就職支援サービスなどをご提供しています。
研修ではなく、本人にも企業にも満足いただけるように、一貫した支援を行っておりますので、50歳代のキャリア支援に関して課題がございましたら、何でもご相談ください。
ちなみに、会社に残るにしても出るにしても、50歳を越えながらもやる気を持って活き活きと働くためには、本人が腹落ちしているかどうかが大きく影響します。腹落ちしないまま、従来のスタンスにこだわり続けていると、どうしても新しい環境に溶け込むことができません。
その意味では、本人にCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格を取得してもらうのも有効かと思います。全員とは言いませんが、カウンセリング理論の勉強を通して、自分の気持ちを整理するきっかけになるのではないでしょうか。また、社内業務に精通した先輩社員がキャリアカウンセリングスキルを活用し、後輩社員を支援する。自らの活躍の場を作るとともに、社内カウンセリング室のような職場設計につなげることも可能です。