今日の経験をキャリアに活かす「こだわり方」
[2008/05/31]
望ましいキャリアを形成するためには、毎日の経験を大切に積み上げていく必要があります。そのためには、時間の流れゆくまま「今日」という日を終わらせてしまってはいけないようです。
それでは、どのような1日を過ごせばいいのでしょうか? 仕事に就いている人にとっては、毎日が慌しく過ぎていき、そんなことをゆっくり考える暇がないかもしれませんね。だったらなおさら、ほんの少しキャリ達にお付き合いください。
先月もアドバイスしていただいたハッピーコーディネーター・大原さんによると、そのキーワードは「こだわり」のようです。
いったい何にこだわればいいのでしょう? 自分にこだわる? 目標にこだわる?
いえいえ、自分や目標にこだわりすぎると、逆にキャリア作りを阻害することにつながるようですよ。
ハッピーキャリアを作るための「こだわり方」、お教えいたします。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリア形成事業推進本部 キャリアドック部
部長(CDA)
大原 良夫 さん
※肩書きは取材当時のものです。
−テーマにこだわって日々学習する−
「“ハッピー”の概念は人によって異なりますが、キャリア形成における“ハッピー”とは、自分が思い描く理想に近づくことだと思います。いわば、自分らしく生き生きと働くことです。この『自分らしく』ということが、『こだわり』と大きな関係があるのです。いやむしろ、こだわりがなければ、自分らしいキャリアを作るのは難しいと言えるでしょう。
ここで言う『こだわり』とは、目標とかビジョンなど大げさな志を指しているわけではありません。別の表現で言うと、自分が関心を持っているテーマのことを意味します。たとえば、“食”とか“ファッション”でもいいでしょう。
もし“食”にこだわっている人が、今日よりも明日を幸せに暮らせるキャリアを築こうとした場合、次のような行動を起こすのではないでしょうか。
・テレビの料理番組を熱心に視る
・外食先でおいしい料理を見つけたら、自分でも作ってみる
・食に詳しい人と出会ったら、いろいろと質問する
つまり、情報入手のアンテナが高くなり、学習意欲が旺盛になるのです。このように周囲の環境を活用して日々学ぶことは、キャリア形成につながり、ひいては『自分が思い描く自分』への階段を上ることにつながるでしょう」
−こだわり方を間違えると妨げになることも−
「しかし、こだわり方によっては、キャリア形成の妨げになることもあります。自分や目標、職務にこだわりすぎる場合です。
たとえば、『この仕事は自分に合わないから辞めてしまおう』と、すぐに退職してしまう例。この場合の誤りは、自分を変えようとする姿勢がないことです。キャリア形成とは、自分を理想像に変革させていくことですから、“今の自分”だけにこだわって『合う・合わない』を考えるべきではありません。そうではなく、“自分の関心事”にこだわって、仕事の経験から学んでみてはいかがでしょうか。
また、目標・職務にこだわりすぎる例は、『絶対、三ツ星シェフになる!』というような場合。大きな目標を持つこと自体は非常に望ましいことなのですが、目標や職務そのものにこだわりすぎてしまうと、環境の変化についていけなくなります。人は環境とともに成長していくものですから、それらにこだわるよりもテーマ(たとえば“食”)にこだわる方がいいでしょう。そうすれば、もしかするとシェフよりも料理研究家の方が向いていることに気づき、より自分らしい将来が拓けるかもしれません。
大切なことは、こだわりをきっかけとして学習のプロセスを積んでいくことです。けっして、こだわりに縛られることではないのです」
−「こだわり」はいずれ「ビジョン」になる−
「こだわりをさらに有効活用するためには、経験を振り返ることをお勧めします。毎日、5分でも10分でも構いません。今日1日の人生から何を学んだかを考えてみましょう。青臭いことのように感じるかもしれませんが、振り返ったことを自分のこだわりと関連づけて考えることは、将来の自分にきっとプラスになります。
こだわりを持って周囲の環境にアンテナを立てる。環境に応じて日々の経験から学ぶ。経験から学んだことをしっかりと意識していく。そうすることで、自己のキャリアは成長し、こだわりはいつしか素敵なビジョンになるはずです」