ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 vol.58

新入社員のモチベーションを上げるか、下げてしまうか

[2013/06/26]


キャリア1 新入社員は、どのような価値観を抱いていて、どのような不安を感じているのでしょうか? そして、1年経ったらそれがどのように変化するのでしょうか? 仕事へのモチベーションは上がるのでしょうか、それとも下がってしまうのでしょうか?
 そうした新入社員・2年目社員の実態を探るべく、日本マンパワーでは「新入社員意識調査」(2013年3〜5月調査)および「2年目社員意識調査」(同3〜4月調査)を実施しました。
 新入社員意識調査については、同様のものが他社でも見られますが、日本マンパワーの調査は全回答数が1万101人と多いのが特徴です。また、2年目社員との比較は、非常に貴重な調査として注目されます。しかも、これら2つの調査の結果によって、「リアリティショックの中身」や「キャリアビジョンの有無による仕事への影響」が明らかになってきました。
 本記事では、その一部をプロジェクトスタッフの解説付きでご紹介いたします。


●今回お話を聞いたのは・・・

 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 研究開発グループ
 黒田 留以 さん

 株式会社日本マンパワー
 マーケティング戦略室 商品戦略・プロモーショングループ
 和泉 浩宣 さん


1年間働くと仕事への価値観が変わる

 「働くうえで最も大事にしたい価値観」について、新入社員の第1位は「人の役に立てること」(28.0%)でした。しかし、2年目社員では同項目が14.5%と半減し、代わりに「自分の能力を発揮すること」(16.9%)が第1位となりました。


◆働くうえで最も大事な価値観は何ですか
データ1

黒田 回答項目としている14の価値観は、米国のキャリア理論家であるドナルド・E・スーパーの提唱によるものです。「人の役に立てること」は2010年以降毎年1位で、今年だけが特別というわけではありません。「人の役に立てること」以外の項目でも、同様に毎年似たような結果となっているのですが、新入社員と2年目社員の結果を比較するとこのグラフのように大きな差異が見られるのです。1年間働くと仕事への価値観が大きく変わることに注目すべきかと思います。
和泉 新入社員の場合、実務を行う前の調査ですから、ある意味でイメージが先行していると思われます。しかし2年目になると、自分に与えられた役割や仕事によって、見えてくるものが現実的になります。やりがいも変わってくるのだと推測できます。
黒田 長い仕事人生の中で、仕事に対する考え方が最も大きく変わる時期は、多くの人の場合、最初の1年間なのではないでしょうか?ですから、社会人1年目のあり方を重視するのは非常に重要なのだと考えられます。


「モチベーション」と「会社の将来性」に不安

 新入社員にとって仕事への不安は大きく、「かなりある」が44.7%、「少しある」が44.5%で、合計89.2%でした。それが2年目になると、13.8ポイント減少しました。
 一方、不安の中身に注目すると、2年目社員のほうで「自分のモチベーション維持」と「会社の将来性」に対する不安が多くなっています。初めて働いてみて入社前の期待と現実とのギャップで生まれた、リアリティショックを如実に表していると言えます。


◆仕事に不安がある人は、何に対する不安ですか
データ2

和泉 新入社員はリアリティショックを受けるとよく言われますが、何にショックを受けるのかの調査は見かけられませんでした。今回の調査でそれが明らかになりました。仕事や職場、会社への理解が深まった結果、入社前にはなかった新たな不安が生じてきたと言えます。
黒田 「仕事に関する意識調査」という別のアンケートでは、「仕事の悩みや不安を誰に相談していますか?」の質問に、20代就労者は「同僚」(37.0%)、「身近な先輩」(24.4%)、「上司」(11.0%)と答えています。また、「仕事の悩み・不安が解消しないとどのような影響があると思いますか?」という質問には、やる気・モチベーションが下がる」(74.8%)、「仕事のクオリティや質が下がる」(56.7%)、「仕事を辞めたくなキャリア2る」(54.3%)と答えています。つまり、若手社員が抱く悩みや不安を、組織や周囲は放っておくべきではないということです。
和泉 「不安や悩みを直属の上司に打ち明けにくい」という実態も映し出されています。ですから、同僚との横のつながり、あるいは利害関係のない先輩との斜めのつながりが大切になってきます。特に入社1年目は「戦力として伸びるか、モチベーションが下がって折れるか」が顕著に表れやすい時期ですので、サポートする施策・制度が必要だと思います。


実現性のあるキャリアビジョンがカギ

 新入社員の「キャリアビジョンの有無」と「仕事への期待」の関係を分析すると、「自分が理想とする5年後の自分像がある」と答えた新入社員は、「ない」と答えた新入社員に比べて、仕事への期待が高いという結果が出ています。
 また、「5年後の自分像がある」と答えた新入社員のうち、「実現可能性が高い」と答えた新入社員では、さらに仕事への期待が高くなっています


◆キャリアビジョンの有無と仕事への期待
データ3

黒田 5年後の自分の理想像、いわゆるキャリアビジョンについては、過去3回の調査でも同じ質問をしていますが、傾向はまったく同じです。仕事への期待が高い人材を求めるならば、キャリアビジョンがあり、しかもその実現可能性が高い人材の方が望ましいということがわかります。


キャリアビジョンの有無が与える仕事への影響

 入社2年目社員のキャリアビジョンの有無が与える影響という面では、「仕事へのモチベーション」「仕事へのやりがい」「仕事への主体性」「仕事を通じての成長可能性」すべてに関して、「キャリアビジョンがある」社員のほうが高いということが明らかになりました。


◆自分が理想とする5年後の自分像はありますか
データ4

黒田 「自分が理想とする5年後の自分像はありますか?」という質問に対して「ある」と答えた方は、新入社員よりも2年目社員のほうが少なくなっています。ただ、新入社員が入社時に持っているキャリアビジョンは志望動機のようなものに近いとも推測されるため、単純比較はできません。
和泉 おそらく2年目社員は、1年間働く中で、現実に即したキャリアビジョンになるよう考え直していると思われます。質が変わっているはずです。
黒田 考え直したキャリアビジョンであっても、入社時と同様、ビジョンを持っているほうが仕事に対して前向きな姿勢であることがわかります。
和泉 むしろ、働きながらキャリアビジョンを考え直していくことが大切です。
黒田 キャリアビジョンの有無によって、2年目社員の「モチベーション」「やりがい」「主体性」「成長可能性」に10〜30ポイントという大きな差が出ていることは、新しい発見です。
和泉 この結果から、入社時の集合研修だけではなく、新入社員のキャリア相談や心理的なケアなどを行う支援の仕組みが必要だと考えられます。

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