ちょっと一息

ソーシャルメディアに潜むリスク

WEB炎上事件による被害を防ぐために

[2014/03/26]

従業員 「従業員がSNSに書き込んだことが原因で会社が謝罪」
 「アルバイトがふざけて撮影した写真が原因で店舗閉鎖」

 こうした類の事件が2011年から急増しています。そして今でも、事件に関連する社名・著名人名などで検索すると、しっかりと過去情報を知ることができます。つまり、一度WEB上でトラブルが話題になってしまうと、その記録を消し去るのは不可能に近いということです。
 みなさんはこうした事件を聞いて、どう思われますか? 他人事だと思いますか?
 けっして他人事ではありません。一人のちょっとしたつぶやきが、組織を揺るがす大事件にまで発展する可能性があるのです。みなさんもおそらく、WEBの炎上事件について知れば知るほど、恐怖心がわいてくるでしょう。

 もし、そうした恐怖心をあまり抱いていない方は、ぜひ本記事を読まれるといいかと思います。WEBの炎上事件に詳しい株式会社エルテスの栗山知之さんに、ソーシャルメディアをめぐるリスクと対策についてうかがいました。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社エルテス
 リスク予防事業部 コンサルティンググループ
 サブマネージャー
 栗山 知之 さん

株式会社エルテスは、2007年よりWEB上の誹謗中傷対策および風評被害対策を開始。その後、炎上事件の急増を背景に、コンサルティング、ソーシャルメディアポリシーやガイドライン等の策定、リスク予防のための従業員研修、リスクモニタリングなどのサービスを展開。現在、WEB上のさまざまなメディアに起因する企業リスクを回避・低減するための「WEBリスクマネジメント」をトータルに提供している。栗山知之さんは、日本マンパワーの通信講座『無視できない新時代のビジネスマナー』の第6章「メディアに関するマナー」の執筆者でもある。


炎上事件のパターンと過去事例

不特定多数 ソーシャルメディアとは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電子掲示板、ブログサイトなど、WEB技術の発展によって生まれたメディアの総称です。具体的なサービスとしては、「Twitter」「Facebook」「YouTube」「2ちゃんねる」「アメブロ」などがあります。
 こうしたソーシャルメディアで最近目立つのが、炎上事件です。炎上とは、「特定の事象に対して、不特定多数のネットユーザーの非難、批判、誹謗、中傷などの記事・コメントが殺到する現象」のことです。
 WEBでの炎上事件は、2011年に急増し、以降も右肩上がりで増え続けています。

 炎上事件を無視できない理由は、個人や組織の現実に大きな影響を及ぼことがあるからです。炎上の主なパターンは次の4パターンに分類できます。
 (1)企業の公式アカウントによる投稿
 (2)従業員による顧客情報の投稿
 (3)従業員による投稿画像への写り込み
 (4)第三者によるクレーム投稿

 このうち、(2)と(3)の実例をご紹介しましょう。

(2)従業員による顧客情報の投稿
 大手コンビニチェーンでアルバイトをしている大学生が、次のような文面とともに有名サッカー選手の画像投稿しました。
 「私のバイト先に○○選手がご来店しました。(中略)○○選手またのご来店お待ちしておりまーす!w」
 この投稿が電子掲示板などを筆頭に炎上に至りました。

(3)従業員による投稿画像への写り込み
 SNSで「朝出勤するとこんなのがひっかかっていた」とのコメントとともに、ネズミの死骸の写真が投稿されました。その写真の横に大手宅配ピザチェーンで利用されているピザの箱が写り込んでいたため、企業が特定。衛生管理がずさんすぎると、炎上に至りました。


被害の程度〜破産・自殺の可能性も

 炎上事件による被害の程度は、正確に捉えることが困難です。炎上事件による被害なのか、あるいは別の理由によるものなのかを切り分けることが難しいからです。ただ、炎上事件の後に破産自殺に至った例も見られます。
 たとえば、ある蕎麦屋さんで、アルバイトの大学生が食器洗浄機に自分の身体を入れている写真を投稿しました。それが炎上事件を引き起こし、ほどなくして店舗は閉店。最終的に3000万円以上の負債を抱えて破産となりました。

 この事例を含め、炎上事件が破産などに関連していると断定することはできませんが、少なくとも、大きな影響を及ぼしたであろうことは想像できます。
 みなさんの会社でも炎上事件をきっかけとして、ブランド価値の低下情報漏洩、場合によってはクレーム電話不買運動につながらないとも限りません。実際、「○○製薬の薬は買うな!」というビラがまかれて新聞報道された例もあります。


トンネル炎上プロセスを知れば他人事ではいられない

 炎上事件はけっして他人事ではありません。それは、炎上のプロセスを知れば納得できるでしょう。

【炎上に至るプロセス】
 (1)失言や失態が探索される
 (2)情報が複製され、話題が形成される
 (3)コメントが殺到するなどして炎上が表面化する
 (4)メールやファクリシミリでの批判のほか、電話で突撃取材されるケースもある
 (5)不買ビラまき、直接訪問、街頭デモなど実社会に被害が発展する

 ネットユーザーの中には、失言・失態のような問題投稿を自主的に探している人もいますし、問題投稿を自動検索できる専用ツールも存在します。つまり、「知人だけに知らせるつもりで気軽に書き込んだ投稿」であっても、見つけ出されてしまうのです。
 さらにそれを、「こんなことをつぶやいている人がいるよ」などと電子掲示板に書き込まれると瞬く間に拡散して、投稿者の過去投稿や友人関係、所属組織などが明らかなってしまいます。複数のネットユーザーが作業を分担するため、たとえ身分を隠したアカウントであっても、個人を特定することはそれほど難しいことではありません

 しかも、一度でも炎上した事件はさまざまなWEBにコピーされて公開されてしまいます。ですから、インターネットから完全に消し去ることはほぼ不可能です。たとえば、ある企業で働く従業員が不用意につぶやいて炎上事件に発展すると、その後はずっと、社名などで検索すればいつまでもネガティブ情報が現れるということです。


炎上事件を起こさないためには

 こうした炎上事件の火種をまくのは、先にお話しした通り、企業の公式アカウントの担当者か、従業員か、第三者です。第三者を除けば内部関係者です。それでも火種をまいてしまう背景には、
 ソーシャルメディアに潜むリスクを軽視している
 ソーシャルメディアの機能・設定操作を十分に理解していない

 「知人だけに伝えるつもりだったのに、知らないうちに炎上事件に発展した」ということは、よくあるケースであるとともに、誰にでも発生し得ことです。
 こうしたトラブルを引き起こさないためには、「自分も気をつけなければ」と考え、学習することが大切です。企業の担当者であれは、従業員教育をすることが大切です。企業の立場で考えれば、従業員教育によってソーシャルメディアリスクを完全ゼロにすることはできませんが、リスクをゼロに近づけることは可能です。
 具体的な対策としては、社内ルール作り、委員会等の設置、研修の実施、ネガティブ情報のモニタリングなどが挙げられます。なかでも、社内ルール作りと研修の実施は比較的取り組みやすく、効果も大きいため、ぜひお勧めいたします。

 日本マンパワーの通信講座『無視できない新時代のビジネスマナー』を従業員の方に受講していただくだけでも、ソーシャルメディアの怖さと機能・設定操作を学ことができますので、リスクはかなり低減されることと思われます。ぜひご活用ください。

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