ちょっと一息

リタイヤ後の進路選択

早くからの蓄積と準備が選択の可能性を広げる

[2013/01/30]


 今年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行されます。これによって、会社などに勤めている人がたとえば60歳定年に達したとしても、希望する人は全員、継続雇用の対象となります。「何歳まで継続雇用されるか」は年金受給開始年にともなって段階的に上がっていき、2025年度からは「誰でも今の会社で65歳まで働ける」ようになります。
 これを受けて一部の企業では、「65歳まで、従業員にいかに活き活きと、モチベーション高く働いてもらうか」の施策が始まっています。キャリア1ただその一方で、「高齢になるにつれて仕事へのモチベーションが下がる」という傾向がささやかれています。特に再雇用の立場になると、役職や給与が下がってしまいますので、モチベーションの維持が難しいと言われています。
 しかし、これからは65歳まで働くのが当たり前の時代。悠悠自適の生活もいいと思いますが、70歳を超えてもビジネスや社会貢献で活躍するのも素敵です。
 そこで、リタイヤ後を視野に入れた“将来への準備”について、50歳代向けキャリア開発研修に詳しい日本マンパワー・黒田留以さんにうかがいました。40歳代・30歳代の方もぜひご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 研究・開発グループ
 黒田 留以 さん


自分のリタイヤ後を自分で決める

 自営やフリーランスの方などは別ですが、会社などの組織に勤めている人はいずれ定年を迎え、退職する日がやって来ます。
 そのリタイヤ後の人生、みなさんは何をやるか決まっていますか?

 特別な事情がない限り、選択肢はたくさんあると思いキャリア2ます。たとえば、独立起業して新しい仕事を始める、ボランティアなど社会貢献活動を行う、好きな趣味に没頭する、自治会などの地域活動を行う等々。「定年後も再雇用制度で働き、その後は悠悠自適」という方もいるでしょうが、具体的にどのような悠悠自適なのでしょうか?

 進学、就職、結婚、出産など、人には自分の人生の方向性を決めるべき機会が何度か訪れます。そのひとつが定年だと思います。人によっては「就職の時以上」の大きなターニングポイントかもしれません。
 いずれにしても、せっかく自分で方向性を決められるチャンスですから、自分に合った最善の選択をしたいものです。少なくとも私自身は、「会社に行かないと何をすればいいかわからない」という状態は避けたいと思っています。そしてできれば、リタイヤ後の人生をそれまで以上に充実した時間にしたいと思います。
 それを実現するためには、なるべく早い段階で準備をしておくことが大切になります。


仕事を通して得られる資源の蓄積を

 リタイヤ後の人生のためになぜ準備が必要か?——それは、何をするにしても資源が必要だからです。
 資源とは、人脈であったり、職業能力であったり、お金であったり、知識であったりします。たとえば独立起業するケースを考えてみると、事業を遂行する職業能力や会社を設立・運営するための資金が必要となり、人脈があれば何かと助けになるでしょう。あるいは趣味に没頭するケースを考えてみると、趣味に費やす資金、働かなくても食べていける生活費が必要になり、同じ趣味を持つ友人や専門的な知識があれば、より楽しめることでしょう。
 こうした資源は一朝一夕に手に入れられるものではありません。やはり、長く働いてきた仕事を通して得られるものが多いのではないでしょうか。

 つまり、リタイヤ後の人生をより充実したものにするためには、仕事を通して得られる資源の蓄積が非常に大切だと言えるのです。


定年後を見据えたキャリアデザイン

 さて、私たちは日々、資源を蓄積できているのでしょうか? そんなことを毎日考えているビジネスパーソンはごく稀だと思います。私自身、仕事に忙殺され、流されるように働いています。
 ただ、私は幸いにして50歳代向けのキャリア開発研修の現場にうかがう機会が多くあって、「定年後を見据えた、今後のキャリアデザイン」を考える研修プログラムに携われる機会があります。その際、さまざまな人の考えに触れて、自分自身の今後についても勉強させてもらっています。

キャリア3 50歳代向けキャリア開発研修を受講される人の中には、すでにリタイヤ後の目標を明確にして着々と具体的な準備をしている人もいます。ただ、そうした方は少数派で、多くは「考えているけれど具体的なプランには至っていない」か、もしくは「リタイヤ後のことはあまり考えていない」のが一般的な傾向です。おそらく、これまでじっくりと考える機会がなかったのだと思います。
 そして受講されたほとんどの人が、「もっと若い時にこの研修を受けておけば良かった」旨の感想をアンケート用紙に書かれます。その背景には「もっと早い時期から定年後の準備のために蓄積しておくべきだった」との後悔があるのではないでしょうか。

 こうして考えてみると、50歳になってからではなく、40歳代や30歳代のころから中長期的な視点で将来を考えてみる機会を、1年に1回でもいいので設けてみるのがいいのかもしれません。考えるのが早ければ早いほど、選択肢が広がるものと思われます。なお、若い方であればあるほど、「65歳まで」とはいわず、70歳、75歳とより長く働くことが求められる可能性も視野に入れておくといいでしょう。
 また、定年が近づいてきてもなお自分の能力を高めていくことができれば、その後の人生にプラスの要素をもたらすように思います。

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