ちょっと一息

CDAの資格活用vol.5

退職者と本音で語らい、良好な関係を継続

[2010/10/27]

CDA活用1 みなさんは退職をした経験がありますか?
 「ある」と答えた人は、今、以前勤めていた会社にどのような感情を持っていますか?
 「今思えば、いい会社だったと思う」という人もいるでしょうし、「二度と敷居をまたぎたくない」と思っている人もいるでしょう。会社の方針と考え方が合わなかった人、人間関係の悪化が原因で退職した人などは、後者かもしれませんね。
 一方、会社側から退職者を見た場合、どうでしょうか? 円満退社であれば、その後の取引先として、あるいは顧客として付き合いを続けることができるかもしれません。少なくとも、「自社を嫌っている人」が減り、「自社に親近感を持ってくれる人」が増えます。でも、退職者は何らかの不満や不都合があって退職するケースがほとんどですから、その実現には難しい面があるのも事実です。
 でも、IT企業の人事部で働く幅口明男さんは、CDAの手法を活かして退職者と面談し、良好な関係を築く糸口を見つけられたと言います。今月はその内容をご紹介します。


●今回お話を聞いたのは・・・
 IT企業勤務
 人事部で人事労務全般を担当
 2005年CDA資格取得
 幅口 明男 さん


早期離職防止を目的に退職分析

CDA活用2 数年前の弊社は入社3〜5年目の離職率が高く、人事戦略の課題となっていました。そんなある時、私は経営層から退職分析を命じられました。どのような理由で退職するのかを分析し、早期離職を防止する手立てにつなげるためです。
 そこで私は、過去の書類に目を通し始めました。しかし残念ながら、ほとんどの書類が役に立ちませんでした。なぜなら、退職理由の欄に建前しか書かれていなかったからです。建前の退職理由では、分析しても意味がありません。
 それから私は、本音の退職理由を知るために“退職者面談”を実施することにしました。「辞めたい」と希望する社員が生じたら、時間を割いてもらい、2人で話をする機会をいただいたのです。
 もっとも、面談を行ったからと言って、退職希望者が本音を話してくれるわけではありません。建前を話す人がほとんどです。しかも、会社や仕事に不満を抱いているケースが多いため、私が聞きたいことをスムーズに話してくれるわけでもありません。
 そうした状況を打開できたのは、私自身がコミュニケーションのとり方を学んだことによります。


傾聴技法と2つのツール

 人は、胸に溜まった感情をすべて吐き出さないと、次の話題に移れない。
 このことは、退職者面談で私が学ばせてもらってわかったことです。つまり、私が退職理由を聞く前に、“退職希望者が胸に溜めている感情”をすべて受け止める必要があるということです。
 ですから、退職者面談ではまず、相手の感情を受け入れることに専心しました。たとえば怒っている社員の場合は、その怒りの内容をすべて受容したのです。また、話を聞く場合は、信頼をベースとして心と耳との両方で聴く“傾聴”を心掛けました。面談自体の位置づけも“相手の言いたいことを聴かせてもらう場”と捉えました。こうしたことは、CDAの資格取得に向けての学習をしなければ、実行できなかったと思います。

CDA活用3 感情を受容した後は、2つのツール(これらもCDAの学習を通して知ったもの)を使って語らいました。
 ひとつはカードソートで、カードを使ってその人の仕事の価値観を確認してもらいました。
 もうひとつは「ライフラインチャート」と呼ばれる、縦軸に満足度(充実度)、横軸に過去の年齢(時間軸)をとった曲線グラフです。このグラフを、退職希望者の入社から現在に至るまでについて、一緒に描くのです。
 「あの時はこんな仕事をしていたなあ」
 「その時、どんな気持ちでしたか?」
 「忙しかったけれど、結構充実していたなあ」
という具合に、2人で話をしながらホワイトボードに曲線を描いていきます。そうすると、最初はシナリオの棒読みのようだった口調が、次第に体温を感じられる口調に変わってくることが少なくありません。退職希望者が本音で話し始めるのです。
 そして、面談を終えた多くの社員が、「さっぱりした」「あの時のことは自分の宝だ」「この会社で得た経験は貴重な財産だ」と感想を言ってくれました。


自社のファンを増やす副次効果

CDA活用4 結局、2年間で約50人と面談を行い、「この会社にいても自分のキャリアを形成できない」「仕事に意義を見い出せない」「やらされ感がある」など、本音の退職理由を知ることができました。また、上司との関係が影響していることもわかりました。
 これらへの対策としては、若手社員への研修、上司への研修を実施し、離職率の改善を得られました。

 また、退職者面談の副次効果として挙げられるのは、「自社のファン」が増えたことです。弊社と良好な関係を保ったまま退職された人は、将来の取引先になる可能性もありますし、将来の顧客になる可能性もあります。一緒にプロジェクトを組むことも考えられます。
 退職されること自体は非常に残念ではありますが、転職先で活躍されていることを聞くとうれしい気持ちになります。CDAの勉強をして本当に良かったと思います。

  • 講座コンシェルジュ

    おすすめの講座・資格をご紹介

  • 講座を選ぶ

    キャリア形成にお役立てください

  • キャリアを考える

    キャリアビジョンを創る