ちょっと一息

フロー理論で職場を活性化

職場が最も生産性高く、幸福感に満ちた状態になるには

[2015/02/27]

フロー1

 「電車内で本を夢中になって読んでいて乗り過ごした」
 「スポーツやゲームに夢中で、気がついたら日が暮れていた」
 こうした体験はありませんか? 「何回もある」という人もいそうですね。そのように、何かの活動に集中して時間が経つのを忘れるほどのめり込んでいる精神状態のことを、ポジティブ心理学の専門用語で【フロー】と言います。
 フローは、人にとって最も生産性が高い状態で、なおかつ幸福感に満ちた状態だと言われます。もし、職場がフローで満ちあふれていたら・・・とてもすばらしい職場ですよね。
 では、どのようにすればフローを起こすことができるのでしょうか? 先月の本コーナーでストレスサーフィン術を教えてくださった、人財開発・組織開発コンサルタント、立教大学経営学部兼任講師の太田哲二先生にうかがいました。ぜひご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 人財開発・組織開発コンサルタント
 立教大学経営学部兼任講師
 社団法人ポジティブイノベーションセンター理事
 太田 哲二 さん

大学卒業後、4社の大手製薬会社に勤務。この間、医薬の営業、学術、マーケティング、研修の仕事を歴任。人材開発部門では教育研修部長としてコーポレートユニバーシティやコーポレートビジネススクール、管理職の研修を担当。また、主に管理職を対象としたリーダーシップやコーチング、ファシリテーションなどの社内研修講師を務める。産業カウンセラーやEQプロファイラー、MBTI認定ユーザーなどの資格を持つ。得意分野は、ポジティブ心理学、EQ(こころの知能指数)やセルフモチベーション、「7つの習慣」といったマインド系のコミュニケーションスキル。漢方修士や鍼灸師の資格を持ち東洋医学にも造詣が深い。


時間を忘れるほど集中している時

 ポジティブ心理学は、人が最大限に力を発揮するための科学的な学問で、普通の人がもっとやりがいを感じ、もっと生きがいを感じ、本当に幸せに生き、繁栄するための科学です。ポジティブ心理学にはさまざまな要素がありますが、そのうちのひとつにフロー(Flow)という理論があります。フローとは、何かの活動に集中して時間が経つのを忘れるほどのめり込んでいる精神状態を指します。
 たとえば、電車に乗っている時、夢中になって本を読んでいて乗り過ごした。あるいは、スポーツやゲームなどを夢中にしていて、気がついたら日が暮れていた。そのような時は、ある活動を最優先していて本当に集中し、楽しく充実感に満ちあふれています。そうした精神状態こそがフローです。
 フロー理論は、1970年代に当時シカゴ大学の教授だった心理学者、ミハイ・チクセントミハイ博士(現カリフォルニア州クレアモント大学院大学教授)が提唱しました。フローとは「流れる」という意味です。博士が何人もの人に「幸せな時ってどんな時でしたか?」とインタビューし、多くの人が「流れているようでした」と表現したことから、「フロー(Flow)」と名付けられました。心的エネルギーが滞りなく流れている状態です。


生産性を高め、幸福感をもたらす

 フローになると、人は最も生産性が高くなり、幸福感に満ちあふれ、驚くほど短時間に上達したり、成果が上がったりします。ビジネスシーンにあてはめれば、一人ひとりが充実感や幸福感を抱きながら仕事に取り組み、高い成果をあげながら成長している状態だと言えます。しかも、フローは仕事において生じやすいものです。組織の活性化に非常に有効な理論であることがわかります。
 実際、私が勉強会などで訪れる、ある人財開発コンサルタント会社では、いつも活気がありエネルギーにあふれています。そして、「昨日も徹夜をしてしまった」と言いながら、みんなニコニコしていて、とても楽しそうです。みんなで新しいプロジェクトの企画を話しているうちに終電車がなくなってしまったようです。仕事に没頭して時間が経つのを忘れてしまう、まさにフローな組織を実現している会社と言えるでしょう。


フロー2

フローを起こすための6条件

 それでは、どのようにすればフローを起こすことができるのでしょうか? チクセントミハイ博士は6つの条件を挙げています。
 【フローを起こす条件】
  (1) 明確なゴールや目標があること
  (2) その目標は能力に比べてチャレンジが必要なこと
  (3) 目標達成に本質的な価値や意味があること
  (4) 状況を自分たちでコントロールでき工夫の余地があること
  (5) 自分たちの本来持っている強みを活かことができること
  (6) フィードバックができること

 このうち、(2)のチャレンジに注目してみましょう。
 フローを起こすには、ゴールに向かうチャレンジが非常に重要です。チャレンジがなく、いつもぬるま湯に浸かっているような状態では、フローは起こらないと言われています。仕事であれば、自分の能力に挑戦するようなタスクが必要になります。
 たとえば、毎日のタスクが自分の能力で簡単にできるものばかりだったらどうでしょうか? それではチャレンジが生まれませんので、すぐ飽きてしまって仕事が退屈なものになってしまいます。
 では逆に、自分の能力よりも非常に高いレベルのチャレンジだったらどうでしょうか? チャレンジレベルがあまりに高いと不安ストレスを感じ、うまくいきません。
 フローが起こりやすいのは、持っている能力よりも少し高いレベルにチャレンジする時です。しかも、自分の得意な能力、いわゆる強みを活かしてチャレンジする時、人は工夫し知恵を絞ることで成長していきます。


フロー3

仕事にポジティブな意味を見い出す

 また、仕事への意味づも重要です。「この仕事は何のためにやるのか?」ということにポジティブな意味を見い出すことができれば、人は主体的に働きます。そのためには、言葉を換え、仕事の意味づけを変えることが有効です。
 たとえば、苦情処理係という業務があります。「苦情処理」という言葉はネガティブに感じますので、スタッフは、ともするとやりがいを感じられないかもしれません。でも、上長が「私たちの部署はお客様のニーズをいち早く聞ける部署なんだ。だから、苦情処理ではなく、情報の宝庫センターだ」と言って、部署の名称を変更したらどうでしょうか。そこで働くスタッフにとって仕事への意味づけが変わり、やりがいにつながりやすくなります。
仕事に対する目的や意味を再度見直し建設的な言葉で言い換えることによって得られる効果は、ポジティブ心理学の実験でも実証されています。

 組織を活性化させようとする立場にある人、部下を育成する立場にある人は、フロー理論を実践して、生産性が高く、一人ひとりが活き活きと働くフローな組織・職場に変革してはいかがでしょうか。

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