時間的にも経済的にも効率よく合格するには
[2012/07/26]
今、育児、介護、パワーハラスメントなどに関連して、企業の雇用環境の整備が求められています。この7月1日からは、平成21年に改正された育児・介護休業法の一部規定が、従業員100人以下の中小企業にも施行されました。具体的には、介護休暇制度や短時間勤務等の措置、所定外労働の免除にかかわるルールを取り決め、就業規則などを改定する必要があります。
こうした業務は社会保険労務士(社労士)に深くかかわります。その影響かどうか定かではありませんが、他の資格と比較して、社労士人気は堅調だと言われます。平成20年以降、受験申込者数は毎年6万人以上。来月行われる今年度試験も約6万6800人と発表されています。
ただ、社労士試験は平均合格率10%未満の難関試験。「2〜3ヵ月勉強すればなんとかなる」というものではありません。独学で勉強する人も少なくありませんが、合格するためにはある程度の時間とお金をかける必要があるようです。
幸い、来年度の試験までには1年以上。時間はたっぷりあります。興味のある方は、今のうちに「時間もお金も効率よく使って合格する策」を練っておきましょう。
●お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアクリエイト部
小山 明彦 さん
標準的な学習期間は8〜10ヵ月
社労士試験に合格するためには、ある程度の法律知識がある人でも最低半年、一般的には8ヵ月〜10ヵ月の学習期間を要します。
しかも近年は、判例や通達を使った「条文の解釈力を問う問題、つまり、条文内容をしっかり理解できているか試される問題」が増えています。ですから、テキストや条文を丸暗記するだけでは合格するのが難しいと言えます。
もちろん、基本的なテキスト学習は何よりも大切なのですが、暗記だけに頼るのではなく、明確に整理して理解することが求められます。そのためには、問題演習に取り組むとともに、法改正のチェック、複数科目にまたがる類似事項の確認、原則規定と例外規定の整理などをする必要があります。つまり、「あやふやな暗記」ではなく、「明確な理解」を学習の主眼に置くことが重要なのです。
こうした試験傾向や学習目標を踏まえた上で、効率的に合格するにはどのような学習スタイルを選べばいいでしょうか? 学習スタイルは、主に「独学」「通信講座」「通学講座」の3つに分けることができます。
独学は意外にお金がかかる
「独学」の場合、教材を選ぶことから始めます。インターネットで検索すれば、非常にたくさんの市販書籍を見つけられるでしょう。
この段階で注意すべきことは、「科目ごとに分冊となっているテキストでないと、合格ラインに達するのは難しい」ということです。全科目が1冊に集約されているテキストでは、どうしても情報量不足になりがちで、細かい例外規定などまでフォローアップできないからです。「最初にひと通りの全体像を把握する」という意味では有効かもしれませんが、本気で合格を目指すなら「科目ごとに分冊になっているもの」を選びましょう。
テキストに限らず、問題集や過去問題集でも同じことが言えます。さらに、横断学習や模擬試験などの教材も必要になってくるでしょう。そうすると、場合によっては合計30冊以上の教材を購入する結果になるかもしれません。数万円の出費を覚悟しておいた方がいいでしょう。
また、独学において最大の障壁となるのは【法改正のチェック】です。なぜなら、たとえば今から学習を開始した場合、今年度試験用として販売している教材がほとんどで、来年度試験用の法改正情報を入手することができないかもしれないからです。そうした事態を防ぐためには、自分で法改正の有無をチェックし、解釈・理解をして、テキストや問題集の該当する箇所を書き換えなければなりません。この作業は相当骨の折れる作業で、現実的にはちょっと難しいと言わざるを得ません。
こうして考えると、独学に適しているのは、以前に本格的に学習して本試験を受験した経験のある人で、なおかつ教材選びと法改正チェックに慣れた人に限られそうです。
通信講座と通学講座、それぞれの特徴
他方、「通信講座」や「通学講座」は、どこの会社・学校の講座であっても、よく練られた教材を用意しているでしょうし、法改正チェックのフォローアップも行き届いていると言えます。
「通信講座」の特徴は、自宅で自分のペースで学習することが可能で、料金が比較的安いことです。料金だけを比較するなら、独学よりも安いかもしれません。また、添削問題がついていれば、学習の進捗度や自分の弱点を確認することができますので、学習を進める上での参考になります。
もし、「独学を始めてみたけれど、意外にお金がかかりそうだし、法改正チェックや学習の進め方に不安が出てきた」という人がいれば、途中から通信講座に切り替えることも効果的です。最初に受講料を支払う場合が多いので、「合格しないと、支払ったお金がもったいない」とモチベーションが高まり、途中で挫折するのを防ぐ一面もあるように思います。
ただ、自分のペースで学習できる反面、スケジュール管理も自分でする必要があります。それが苦手な人にとっては、向かないかもしれません。
その点で、「通学講座」は教室に行きさえすれば勉強するしかありませんので、きちんと通える人には適しているでしょう。また、試験に向けての考え方や重点事項の整理の仕方などについて、講師がリアルタイムで解説してくれますので、メリットは少なくありません。
それだけに、独学や通信講座と比較すると、相当の費用が必要になります。また、仕事の都合などで決められた日時に教室に行くのが難しくなると、途中で頓挫してしまう危険性もはらんでいます。
今からなら初学でもじっくり学べる
みなさんがもし来年度の社労士試験を目指すのであれば、こうしたことを勘案されてはいかがでしょうか。私がお薦めする学習スタイルは「通信講座」か「通学講座」のいずれかで、自分の事情やタイプに合った方をお選びになるのがいいかと思います。
ちなみに、日本マンパワーには通学講座がありませんので、通信講座のみとなります。現在、来年度試験用として、初めて学ぶ人向けに『社会保険労務士受験通信講座』(標準受講期間8ヵ月)、学習経験のある人向けに『社会保険労務士受験対策ハイレベル講座』(標準受講期間10ヵ月)の2講座を用意しています。2講座の異なる点は問題演習の質・量で、後者は前者に比べて、ハイレベル問題集2冊、ハイレベル添削2回が追加されています。これは、近年の難問化傾向に対応して2年前に開発された教材です。
もちろん、『社会保険労務士受験通信講座』をしっかりと学習していただければ合格ラインに達する実力は養成されますが、「より確実に合格を」と望む方には『社会保険労務士受験対策ハイレベル講座』をお薦めします。今からなら1年以上の学習期間を確保できますので、初学の方でもじっくりと学習でき、ハイレベルの学習にも十分対応できるものと思われます。
以上、ご参考にしてください。